お散歩の時は除草剤、殺虫剤に要注意!

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草木が生い茂る時期は薬剤散布に要注意

花の匂いを嗅ぐ犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

以前ブログで、お散歩の時には除草剤の中毒に気をつけてくださいというお話をしました。草木が青々と生い茂る時期は除草剤や殺虫剤散布の時期です。知らずに薬剤を散布した後をお散歩し、万が一ワンちゃんが薬剤を舐めてしまって中毒症状が出た時にも慌てずに済むよう、再度注意喚起として除草剤、そして今回は殺虫剤についてもお話をしたいと思います。

 

前回のブログは下記からお読みいただけます。
犬のお散歩要注意 除草剤の中毒 へのリンク

 

除草剤による中毒

畑の脇道を散歩

 

除草剤には、即効性がありすぐに効力が衰える薬剤もありますが、長く効力を維持したまま土壌に残留するようなタイプの薬剤もあります。そのため、薬剤を撒いた直後だけではなく、今まで生い茂っていた草むらがきれいになった場所にも、しばらくは近寄らない方が良いでしょう。

 

過去、犬の除草剤中毒として問題になっていたのは、主に有機ヒ素系の除草剤でした。しかし現在、国内では有機ヒ素系の除草剤は使用されていません。

 

一般社団法人日本中毒学会の2003〜2012年の調査データでは、国内における犬の除草剤中毒の1位がグリホサート、2位がパラコートとなっています。

 

<グリホサートによる中毒の紹介>

グリホサート系の薬剤は、非農耕地用の除草剤としてたくさんの製品が販売されています。非農耕地用とは、宅地や駐車場、公園、運動場、道路、鉄道などの、人が植えた植物がない場所に使用するための薬剤です。つまり、ワンちゃんがよくお散歩をするような場所で散布される除草剤ということです。誤飲(経口摂取)だけでなく、皮膚や目から吸収される場合もありますので、注意が必要です。

 

この除草剤は。粘膜刺激作用や消化管刺激作用があり、摂取量が少量の場合でも、下痢、嘔吐、咽頭部の炎症などの消化器系症状が現れます。多量に摂取してしまうと、循環器系、呼吸器系、消化器系、泌尿器系といった広範囲に症状が出て、ショック状態に陥って死亡してしまう場合もあります。

 

<パラコートによる中毒の紹介>

パラコートは、掛かった葉や茎だけを枯らし、木や根は枯らさないという特徴があるため、水田の畦畔や斜面の法面(のりめん)を保持する際に需要がある農薬です。非常に毒性が強く、自殺や他殺事件を数多く引き起こして問題になり、現在はパラコート原体での生産は中止され、パラコートにジクワットを混ぜた混合剤が販売されており、水田の他、野菜畑や果樹園などで使用されています。

 

消化管や皮膚、気道から体内に吸収されて中毒症状を引き起こします。そのため、誤飲だけでなく皮膚や気道を介して体内に取り込まれる可能性にも注意を払う必要がありあります。体内に取り込まれると細胞に蓄積し、細胞内タンパク質やDNAなどの生命活動に必要不可欠な部分に著しい障害を与えてしまいます。少量の場合は嘔吐、全身倦怠感などが生じます。中等量の場合は嘔吐から始まって、時間が経つにつれ下痢、腹痛、口内のただれや潰瘍形成といった症状が生じます。腎機能障害や肝機能障害が進行して、肺線維症から死に至ることもあります。

 

殺虫剤による中毒

土手の散歩

 

実は、犬の中毒症状の中では除草剤中毒よりも多いのが殺虫剤中毒です。除草剤の場合は、光合成の阻害や植物ホルモンの錯乱など、植物が生命を維持するための機能を阻害するわけですが、殺虫剤は動物の生命維持機能を狙って阻害するため、その効果が直接的に犬に影響するからです。

 

殺虫剤の主な有効成分はピレスロイド系、有機リン系、カーバメート系などです。この内、もっとも危険度が高いのは神経毒性を持つ有機リン系ですが、カーバメート系も有機リン系と同じようにコリンエステラーゼ阻害により神経を過剰に興奮、麻痺させるため危険です。コリンエステラーゼとは、肝臓で作られる酵素の一つです。

 

<有機リン系およびカーバメート系による中毒の紹介>

消化管や皮膚、眼球などから吸収されます。コリンエステラーゼを阻害し、神経シナプスのアセチルコリン濃度を上昇させることで毒性を発現します。有機リン中毒の場合は不可逆的なコリンエステラーゼ阻害作用で、血液脳関門といって血液と脳の組織液との間の物質交換を制限する機構を通過してしまい、脳にも作用してしまいます。しかしカーバメート剤の場合は可逆的な阻害で血液脳関門を通過しないため、一般的に有機リン剤の方が重症化する傾向にあります。

 

特徴的な症状は、縮瞳(瞳孔が収縮した状態になること)と流涎(よだれを垂れ流すこと)です。他には、嘔吐、下痢、呼吸困難、頻尿、筋肉の振戦(ふるえ)、麻痺、沈鬱や痙攣などの神経症状も見られます。有機リン剤の場合は着色されているため、嘔吐物や便の色が緑色や青色を呈するのも見分ける目安になります。これらの殺虫剤による中毒の場合は、草むらなどで犬を放した後に痙攣を起こしたといった主訴が多いので、薬剤散布時期には草むらに放さないようにすることが大切です。

 

<ピレスロイド系の殺虫剤について>

ピレスロイド系の殺虫剤は、現在発売されている殺虫剤の90%を占めていると言われています。ピレスロイド系は選択毒性があり、人にも犬や猫にもほとんど無害です。哺乳類は昆虫に比べて神経系が複雑なため、ピレスロイドを吸い込んでも中枢神経に届く前に体内で分解し排泄できるからです。それでも過剰に吸い込んだり誤飲したりしてしまうと、犬にも毒性を発揮する場合があります。ご家庭で使用している殺虫剤がピレスロイド系だからといっても、決して安心してしまわずに、基本的な用心は怠らないようにしましょう。

 

愛犬が除草剤や殺虫剤を口にしてしまった時の対処

診察中の犬

 

薬剤の誤飲等による中毒の場合、突然症状が現れます。飼い主様は驚いてしまい、どうして良いかわからなくなるのは当然だと思います。しかし、まずは落ち着いて状況を把握し、きちんと整理してください。「何を、どれくらい、どうやって」摂取したのかと、症状が現れた前後の様子と経過を、メモなどに簡単にまとめましょう。飼い主様ご自身が落ち着くことにも、そして動物病院で説明する時に役立ちます。特にご自宅にある除草剤、殺虫剤を誤飲した場合は、成分が正確にわかるので容器ごと病院に持参しましょう。

 

状況を把握したら、電話で良いのでかかりつけの獣医師に相談してください。メモに従って状況を説明し、愛犬の症状を説明すると、獣医師からどうするべきかという指示が出されますので、それに従いましょう。

 

特に除草剤の場合は、痙攣を起こすなどの神経症状が出ていなければ、対処する時間が十分にある場合が多いです。とにかく落ち着いて、獣医師に相談することが大切です。

 

ただし、殺鼠剤など直接動物を殺傷することが目的の薬剤の場合は緊急度が高いです。可能性が高い場合は迅速に動物病院で診てもらえるようにしてください。

 

除草剤、殺虫剤に関するまとめ

公園の散歩

 

ポイント

・草が生い茂る時期は薬剤散布の時期なので散歩コースに注意が必要です。

・口から摂取するだけではなく、目や皮膚から摂取する場合もあります。帰宅したら足先や体をきれいに拭くことを習慣化しましょう。

・ご自宅の除草剤、殺虫剤を誤飲した場合は薬剤の成分が重要です。分かる範囲で「何を、どのくらい、どうやって」摂取したかを獣医師に伝えてください。現物がある場合は容器ごと持参しましょう。

・除草剤よりも殺虫剤や殺鼠剤のような動物の殺傷を目的とした薬剤の方が、より緊急度が高いです。

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