ノミ・ダニの薬 食べる?垂らす?

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ノミやマダニの予防も大切です

耳を掻く猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

前回は、横須賀地区でのフィラリア予防が始まる時期ということで、フィラリアの予防薬に関してお話をしました。今回は、外部寄生虫のノミ・ダニの予防薬に関してお話をしたいと思います。

 

すでにこちらのブログで、犬や猫に寄生するノミやダニに関する基本的なお話をしていますので、細かいことはそちらのブログをお読みいただきたいと思います。
犬や猫に寄生するノミやダニ その種類と予防薬へのリンク

 

今回のお話を始める前に前回ブログの要点を簡単にまとめると、下記になります。

・ノミをみつけても爪や指で潰してはいけません
ノミの体内にあった大量の卵が散乱したり、ノミに寄生していた瓜実条虫が飼い主様に感染してしまったりという危険があります。

・ダニをみつけても無理やり取ろうとしてはいけません
ダニの体が取れても、口の部分だけが犬や猫の体内に残ってしまって炎症を起こしたり、ダニの血液が犬や猫の体内に逆流して感染症を起こしたりする危険があります。

・ノミやダニは100%駆除することが大切です
例えばノミの場合、1匹いると2週間後は50匹に増えます。したがって、寄生してしまった寄生虫は、100%駆除することが肝心です。薬効が高く効果が長期間維持される薬を継続的に使用することが大切です。

 

そこで今回は、現在当院で取り扱っているノミやダニの薬についてご紹介します。

 

ノミ・ダニ予防薬(駆除薬)の概要と効果的な予防法

ネクスガードの写真

 

当院で扱っているノミ・ダニの駆除薬はフロントライン、レボリューション、クレデリオなどたくさんありますが、多く使っているのがノミ・ダニ用のネクスガード、フォートレオンと、フィラリアや回虫、鉤虫など幅広く駆除できるオールインワンタイプのネクスガードスペクトラです。

 

この内、食べるタイプ(経口タイプ)はネクスガードスペクトラとネクスガード、垂らすタイプ(スポットタイプ)はフォートレオンです。

 

食べるタイプと垂らすタイプの特徴を簡単にまとめると、下記になります。

【食べるタイプ】
<メリット>
・新しいタイプの薬で、より安全性が確保されており、耐性もないのでよく効きます。
・薬効が体中くまなく行き届きます。
<デメリット>
・忌避効果はないので、虫よけにはなりません(ノミやダニが犬や猫を吸血して初めて効果が出ます)

 

【垂らすタイプ】
<メリット>
・薬を食べない子にも投薬できます。
・フォートレオンはノミやダニの忌避効果があり、虫よけになります。
<デメリット>
・フロントラインは皮脂腺、フォートレオンはや角質に浸透して全身に拡散させますが、犬や猫が薬剤を舐めてしまわないように首の後に垂らす必要があります。そのため、足先や顔、耳介の先にまでは行き届きづらいです。

 

これらのメリットとデメリットを考え、ダニがたくさんいるような濃厚地帯に行くときにもっともおすすめする万全な予防法は、『食べるタイプのネクスガードに加えて、フォートレオンを垂らす、またはフロントラインスプレーを足先や腹部、耳などにつけてから行く』という方法です。

 

薬の効果について

フォートレオンの写真

 

せっかく毎月継続的に投薬して駆除を行うのですから、当然薬の効果がしっかりと出てくれなければ意味がありません。薬の効果という面で、飼い主様に2点お伝えしたい注意事項があります。

 

1点目は、「耐性」のお話です。

耐性菌という言葉を耳にされたことがある飼い主様は多いと思います。抗生物質などの抗菌剤の場合、使い方に注意をしないと菌の方で耐性を身につけてしまい、薬の効果が出なくなってしまうという問題です。(薬剤耐性と言います)

 

垂らすタイプの駆除薬であるフロントラインの成分フィプロニルは、安全性が高く良い薬で、20年以上前からある実績の高い薬なのですが、横須賀・三浦地区のノミやダニは、フィプロニルに対してかなりの耐性を持ってしまいました。そこで当院では、垂らすタイプの予防薬としては耐性がないイミダクロプリドという成分のフォートレオンという予防薬をおすすめしています。

 

2点目は、市販薬のお話です。
これは前回のブログでも少し触れているのですが、ペットショップやホームセンター等で購入できる、市販のノミ・ダニ予防薬はおすすめできないということです。こういったお店で購入できる市販薬は動物用医薬部外品といって、作用が緩和で比較的安全であるとされている薬です。つまり、獣医師が処方しなければならない薬と比べると、副作用などのリスクが弱いけれども、薬の効果も低い薬だということです。

 

以前もお話した通り、寄生虫はたった数日で何十倍にも増えてしまいます。そのため、とにかく100%駆除し、それを継続しなければなりません。市販薬のノミ・ダニ予防薬(駆除薬)は、元々の薬効が低い上に、効果が半減する期間も非常に短いため、容器に「効果が1ヵ月持続」と書かれていても、その効果は非常に低いものになります。

 

しっかりと効果を得られることを考えれば、動物病院で処方される薬は決して高額ではないと考えています。

 

重症性血小板減少症候群(SFTS)について

診察を受ける犬

 

重症性血小板減少症候群(SFTS)という致死率の高いSFTSウイルス感染症があります。これは、SFTSウイルスを持っているマダニに咬まれることで感染します。ヒトの場合、潜伏期間は6日〜2週間で、発熱や、食欲低下・嘔気・嘔吐・下痢・腹痛などの消化器症状、頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状などが起き、致死率が30%程度の怖い病気です。

 

元々は、発症するのはヒトだけだと考えられていましたが、2017年4月に猫、2017年6月に犬が、それぞれ和歌山県と徳島県で「世界初」の発症例として発見されてから、状況が変わりました。

 

犬や猫の唾液や咬傷を通して、感染した犬や猫から飼い主様に感染することが分かったのです。また、猫の致死率は60〜70%、犬の致死率も29%と高いため、愛犬や愛猫と共に飼い主様ご自身も感染しないように気をつける必要があります。

 

特に愛犬と一緒に草むらや山野を散歩される場合は、長袖長ズボン、帽子の着用などで肌の露出を避け、散歩から帰ったら愛犬のマダニチェックだけでなく、ご自身のチェックも行ってください。

 

また、愛犬や飼い主様がマダニに咬まれていた場合は、決してご自身でマダニを取ろうとせず、動物病院および病院(皮膚科)で処置をしてもらってください。また、上記の潜伏期間中に発熱等の症状が現れた場合は、必ず「マダニに咬まれた」ことを伝えて医療機関を受診してください。

 

ノミ・ダニ予防薬に関するまとめ

気持ちよく眠る猫

 

ポイント

・ダニの濃厚地帯に行く場合は、食べるタイプのネクスガードに加えて、フォートレオンを垂らす、またはフロントラインスプレーを足先や腹部、耳などにつけてから行くという方法がおすすめです。

・ノミやダニは100%駆除して家の中で繁殖させないことが大切です。

・市販薬は、駆除効果が弱い上に効果が半減する期間も非常に短いため、おすすめできません。

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