犬はなぜ遠吠えするの?やめさせられる?

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遠吠えをしやすい犬

遠吠えをする犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

一緒に暮らしているワンちゃんは、遠吠えをしますか?犬の祖先は狼です。狼というと、夜になると月に向かってまっすぐに首を伸ばし、大きくて寂しげな声で「ワォーン、ワォーン」と遠吠えをするイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。

 

狼の子孫である犬にも、遠吠えをする習性が残っています。遠吠えは、犬種に関係なくすべての犬に共通してみられますが、特に多いと言われているのが、ダックスフンド、ビーグル、バセットハウンドなどの猟犬の仲間や、シベリアンハスキー、アラスカンマラミュートなどの狼に近いといわれている犬種です。

 

祖先から引き継いだ習性や本能に由来する遠吠えもあれば、人と一緒に暮らすことで遠吠えをするようになった理由もあるようです。犬が遠吠えをする理由を知ることで、ある程度遠吠えをやめさせる手段もみつかります。今回は、犬の遠吠えについて考えてみましょう。

 

習性・本能由来の遠吠え

オオカミ

 

まずは、祖先である狼から引き継いだ習性や本能に由来した遠吠えの理由からみていきましょう。

 

まず言われているのは、遠く離れた場所にいる仲間とのコミュニケーションです。近所の犬の遠吠えにつられるように遠吠えを始めた場合や、その逆の場合などが当てはまるでしょう。なおサイレンの音など犬の鳴き声に似た周波数の音を仲間の鳴き声と勘違いして、遠吠えを始める犬もいるといわれています。

 

はぐれてしまった群の仲間に、自分の居場所を知らせるための遠吠えもあります。飼い主様が長時間外出している時の遠吠えは、飼い主様に自分の居場所を知らせるためかもしれません。

 

ここは自分の縄張りであると主張し、外敵の侵入を防ぐための遠吠えもあります。庭やベランダなどに侵入した野良猫や鳩、カラスなどの他の動物や、ご自宅前を行き交う車のライトなどを外敵だと思い、侵入を防ごうとしているのかもしれません。

 

雷などの大きくて振動を伴うような音や、サイレンなどの警告音に反応して遠吠えを始めた場合は、身の危険や飼い主様から引き離されるのではという不安を感じているという説もあります。

 

飼い犬特有の遠吠え

退屈な犬

 

人と一緒に暮らすようになった犬は、祖先から引き継いだ習性や本能の他に、人との生活に合わせて行動などを進化させてきました。そうして、現代の犬ならではといった遠吠えの理由も出てきたようです。現在、下記のような理由が考えられています。

 

音に反応して遠吠えをする子がいます。人間社会にはサイレン、楽器、騒音など、さまざまな音が溢れています。特定の音に反応して始める遠吠えは、その音が好き、もしくは嫌いだからと考えることもできます。よく、飼い主様の楽器演奏などに合わせて遠吠えをする犬のビデオを見かけますよね。これはワンちゃんがその音を聞いて、楽しく一緒に参加したいと思っている行動だと考えられます。

 

心身の不調から遠吠えをすることもあるといわれています。体の不調の場合は、痛みや吐き気、倦怠感などの不調を感じています。この場合は、飼い主様に辛さを訴え、助けを求めていると考えられます。

 

心の不調の場合は、何らかのストレスが溜まっていると考えられます。運動不足や飼い主様とのコミュニケーション不足、環境の変化など、遠吠えをしていなかった頃と比べて何か思い当たることがないかどうか、振り返ってみてください。飼い主様からの関心が薄れていると感じると、ワンちゃんは飼い主様の注意を惹くために遠吠えをすることがあるのです。

 

また、飼い主様への依存度があまりにも高くなりすぎると、単なる不安を通り越して分離不安症という病気にまで発展することがあります。過保護や飼い主様との距離感が近くなり過ぎた結果、飼い主様の姿が見えなくなると「もう帰ってこないのでは」という恐怖感が湧いてきて、帰宅されるまで遠吠えをし続けるといったような症状を起こす病気です。

 

高齢犬に多いのが、認知症です。獣医学の発展、良質なフードや室内飼育の普及などにより、ワンちゃんの寿命が伸びている反面、認知症を発症する高齢犬も増えてきています。その症状の一つが、夜になると遠吠えをすることです。

 

遠吠えをやめさせる方法

トレーニング中の犬

 

もって生まれた習性や本能に由来する遠吠えも含めてすべての遠吠えをきれいにやめさせることは難しいですが、理由が明確な遠吠えに関しては、やめさせることも可能だと考えます。ただし、遠吠えをやめさせたい場合に遠吠えをしたワンちゃんを叱ってはいけません。

 

しつけの基本は『褒めること』です。一緒にいる時にワンちゃんが遠吠えを始めた場合は、名前を呼んで飼い主様に注意を向けさせましょう。そして、落ち着いて遠吠えをやめたタイミングですぐに褒めてあげてください。

 

また、ワンちゃんの様子を普段からよく観察し、遠吠えの理由を解明することが大切です。まずは、体のどこかに痛みがあったり体調が良くなかったりしないかを確認します。認知症も含め、病気や怪我が潜んでいる場合は、すぐに動物病院につれてきてください。

 

病気が関与していない場合は、ストレスを疑ってみましょう。最近の環境変化などを振り返り、思い当たるフシがあれば原因を取り除く工夫をしましょう。特に、飼い主様の気を惹きたくて遠吠えをする犬が多いともいわれています。

 

構いすぎはよくありませんが、ワンちゃんとの間にしっかりとした信頼関係を築くことはとても大切です。運動の時間をきちんと確保する、質の高いコミュニケーションを心がけるなどが、ワンちゃんの心の安定には大切です。

 

何か音に反応している場合は、防音の工夫をすることで、予防効果があるでしょう。他の動物や往来を行き交う車のライトなどが原因の場合は、窓から外を見えないようにするなどの工夫ができるかもしれません。

 

いずれにしても、やめさせる過程で「遠吠えをすると良いことがある」と誤解をさせないことです。遠吠えをした時に、叱りつけたり嫌がった素振りを見せたりすると、飼い主様の注意を惹きつけたと勘違いさせることがあります。あくまでも遠吠えをしている間は無視をし、声掛けや指示に従って静かになったら褒めるのが基本です。

 

ポイント

コミュニケーション

 

ポイント

・猟犬や狼に近い犬種の方が遠吠えをしやすい傾向があります

・犬の遠吠えには、習性や本能に由来したものと、病気、ストレスや飼い主様の気を惹きたいといった理由のものがあります

・遠吠えの理由がわかれば、やめさせるための工夫ができます

・やめさせるために叱りつけると、誤った学習をさせて逆効果になることがあります

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