犬や猫たちも夢をみるのでしょうか?

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犬や猫も夢をみるのでしょうか

熟睡している犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

時々飼い主様から「寝ている時に時々ピクピクするのですが、大丈夫でしょうか?」というご質問をお受けします。その子が若くて健康な場合は「夢をみているのではないでしょうか。」とお答えしています。

 

そこで今回は、犬や猫も夢をみるのかどうかについて考えてみたいと思います。

 

ヒトの睡眠の研究

寝ている人

 

まずは、ヒトの睡眠のお話から入りたいと思います。眠りにはレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があり、一晩の睡眠の中でそれらを周期的に数回繰り返しているということを聞いたことのある飼い主様は多いと思います。

 

このレム睡眠というのが発見されたのは、1953年でした。これをきっかけに、夢に関する研究がそれまで以上に盛んに行われるようになったのです。科学的に睡眠を研究する場合、必ず使われるのが脳波です。

 

健康な成人は、一晩の睡眠中に脳波が下記のような変化をするのが普通だということが分かってきました。

 

1.覚醒期
目を閉じて覚醒している:脳波には10Hz前後のα波が見られる

 

2.睡眠第1段階
うとうとしてくる:脳波がα波から振幅の小さい4〜6Hzの徐波に変わる
※徐波とは、ゆっくりとした波のことです

 

3.睡眠第2段階
浅い眠り:脳波に振幅の大きいK複合と呼ばれる鋭波と14Hz位の紡錘波が出てくる

 

4.睡眠第3段階
深い眠り:紡錘波の他に振幅の大きい3Hz位の徐波が現れる

 

5.睡眠第4段階
深い眠り:最終的に1〜3Hzの大きい徐波だけになる

 

6.レム睡眠(逆説睡眠)
深い眠りで夢をみる:PGO波という脳幹の橋(きょう:Pons)、外側膝状体(がいそくしつじょうたい:lateral Geniculate body)、後頭皮質(Occipital cortex)からの電気信号による脳波の一種がみられます。脳波の状態は覚醒期のように振幅が小さくて活発ですが、体の筋肉は緊張状態が低下して、弛緩した状態になります。最も特徴的なのは、目がキョロキョロと急速に動くということです。人はレム睡眠時に夢をみると言われています。

 

7.覚醒
一晩のうちに睡眠第1段階〜第4段階とレム睡眠を数回繰り返してから覚醒します

 

レム睡眠は、その特徴である急速な眼球運動(Rapid Eye Movement)から命名されました。また、脳波の状態が覚醒時に似ているにも関わらず深い眠りであるということから逆説睡眠とも呼ばれています。

 

レム睡眠以外の睡眠第1段階から第4段階までの睡眠は、急速な眼球運動が起こらないことから、ノンレム睡眠と呼ばれています。また、第3,第4段階の脳波は大きな徐波となるため、まとめて徐波睡眠とも呼ばれており、外からの刺激に対して最も覚醒しにくい段階です。

 

レム睡眠は、体は休息しているけれども脳は起きている時ほどではありませんが比較的活発に活動している状態で、ノンレム睡眠は、脳は休息しているけれども体は緊張している状態だと言えます。体の緊張状態から考えて、レム睡眠と比べるとノンレム睡眠の方が起きたらすぐに動き出せる状態だと考えられます。

 

動物の睡眠の研究

熟睡している猫

 

レム睡眠とノンレム睡眠は、鳥類以上の高等動物からみられるようになり、原始的な哺乳類のハリモグラを除くと、哺乳類には明確なレム睡眠とノンレム睡眠があることが分かっています。昔から、よく猫で睡眠についての研究が行われてきました。

 

レム睡眠の周期は動物の種族によって異なります。ヒトは約90分の周期で出現しながら、一晩では6〜8時間ほどの継続した睡眠を取ります。また、レム睡眠は睡眠前半よりも後半により多く出現し、一晩の睡眠の20%前後を占めるという報告があります。

 

猫の場合は、レム睡眠が出現する周期は30〜40分程度で、ノンレム睡眠、レム睡眠を数回繰り返して1回の睡眠時間は長くても2時間程度です。つまり、猫は小刻みな睡眠を1日の内に何回も繰り返しているという寝方をしています。

 

起きてもまたすぐに眠ってしまうこともあれば、しばらく起きて活発に活動している時間帯もあります。犬や猫は、一緒に暮らしている飼い主様の生活リズムに合わせて調整しますが、基本的には薄明薄暮性といって薄暗い時間帯に活発に活動を行うのが特徴です。

 

ヒトと犬や猫は、上記のように眠り方に違いはありますが、レム睡眠中にはよく似た生理現象がみられます。そして、ノンレム睡眠時には体の筋肉が緊張して伏せの姿勢で眠り、レム睡眠時は体の筋肉の緊張が緩み、ゴロンと横になって眠ります。

 

結論:結局犬や猫は夢をみるのか?

熟睡している犬と猫

 

ヒトで調べた結果、レム睡眠期には70〜80%、ノンレム睡眠期には0〜50%の率で夢をみていることが分かりました。ノンレム睡眠期の率の幅が広いのは、研究者によって睡眠の定義に違いがあるからで、漠然とした断片的な印象のようなものは夢としないと定義すると、ノンレム睡眠期における夢は0%になるそうです。

 

この実験は、レム期覚醒法と呼ばれる方法で行われました。睡眠中に、脳波や筋電図、眼球運動などの測定を行い、レム睡眠中またはノンレム睡眠中に被験者を起こして夢をみていたかどうかをヒアリングするという方法です。

 

つまり、レム睡眠があることが夢をみることを証明することにはならず、レム睡眠期やノンレム睡眠期に起こした犬や猫に夢をみていたかどうかを尋ねて答えてもらわない限り、犬や猫が本当に夢をみるのかどうかを知ることはできないということです。

 

しかし、私は犬や猫も夢をみていると考えてもよいのではないかと思っています。それは、ヒトも犬も猫も、脳の構造が非常によく似ているということ。そして、犬や猫たちの睡眠中に、ヒゲをピクピクしたり何か喋っているように口を動かしたり、時には声を出したり、しっぽを振ったり、走っているように四肢をバタバタ動かしたりしているのを見かけることがあるからです。

 

また、ヒトしか夢をみないと考えるよりも、ヒトとよく似た睡眠を行う哺乳動物は夢をみると考える方が自然だと思うのですが、読者の皆様はいかがでしょうか。

 

犬や猫は夢をみるかに関するまとめ

遊ぶ犬と猫

 

ポイント

・ヒトの睡眠にはレム睡眠とノンレム睡眠があり一定の周期で繰り返している

・哺乳動物である犬や猫にもレム睡眠とノンレム睡眠があることが分かっている

・ヒトも犬も猫も、レム睡眠中の生理現象がよく似ている

・ヒトは、レム睡眠時によく夢をみる

・犬や猫は、睡眠中に夢をみていると思わせるような行動をすることがある

・以上から、科学的に証明されてはいないが犬や猫も夢をみると考えて良いと思われる

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