犬や猫のその症状、夏バテ?それとも病気?

犬猫の病気や症状

犬も猫も夏バテに注意

夏バテ気味の犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

いよいよ本格的な夏になり、蒸し暑い日が続いていますね。中には、なんとなくだるい日が続き、思うように食欲もわかず「夏バテかなぁ…」と思いながら、節電のことも考えつつエアコンの温度調節をされているという飼い主様もいらっしゃるのではないでしょういか。

 

暑さが続く夏、特に1日の中で5℃以上も温度差が発生するような日が続くと、私達人間も寒暖差についていけず、体調を崩しやすくなります。それは、犬や猫も同じです。彼らも、私達と同じように夏バテになるのです。

 

今回は、犬や猫の夏バテの症状と対処法、そして夏バテの症状によく似た気を付けたい病気をご紹介します。そして次回は、夏バテの原因と予防法についてお話したいと思います。年々平均気温が上がってきている暑い夏を、飼い主様の知恵と工夫で、一緒に暮らす可愛いワンちゃんや猫ちゃんと共に乗り越え、元気に秋を迎えましょう。

 

犬猫の夏バテはどうなる?

夏バテ気味の猫

 

<犬や猫の夏バテの症状>

基本的には、人間の夏バテと似ています。体がだるく、食欲がなくなり、疲れやすくなります。動きが緩慢になった、目の輝きが減ってきたと感じることもあるかもしれません。

ワンちゃんの場合は、お散歩に行きたがらなくなる、いつもより寝ている時間が長くなるといった気付き方をするかもしれません。

一方猫ちゃんの場合は、普段から日中寝ている時間が長く、お散歩に行くこともないため、ワンちゃんよりも気付きづらいかもしれません。食欲の変化に気を付けておくと、良いでしょう。

ワンちゃんも猫ちゃんも、食欲がなくなり胃が空になってしまうと、白い泡が混ざった黄色い液体(胃液)を吐くことがあります。

 

<脱水には要注意>

犬は、口を開けて荒い呼吸(パンティング)をし、口内の水分が気化する際の熱を利用して体温を下げます。そのため、夏は水分が不足しやすくなります。

また、夏バテが進んで体に熱がこもり熱中症の初期状態に近くなると、犬も猫も、下痢・軟便や嘔吐を繰り返すようになります。こういった症状が続くと体内の水分が減少し、脱水症状を引き起こします。脱水は循環器や腎臓に悪い影響を与えます。そして体内の水分を15%以上失ってしまうと、命が危険にさらされます。

下痢や嘔吐が続く場合は「様子を見よう」と思わずに、動物病院にすぐに連れて来ましょう。

 

犬猫の夏バテへの対処法

散歩中の水分補給

 

<夏バテの症状を放っておくと…>

ワンちゃんや猫ちゃんの夏バテの症状に気付かずそのままにしてしまうと、必要な栄養だけでなく水分も摂取できなくなり、体力と共に体重が減少し、最終的に多臓器不全を引き起こして命に危険が及ぶ可能性があります。

 

<夏バテへの対処法>

対処のポイントは「温度・湿度」「食事」「水分」です。

まず、夏バテの原因となる暑さを解消しましょう。特に、朝晩の寒暖差が大きいと体にかかる負担が大きくなります。ワンちゃんや猫ちゃんが暮らす室内は、エアコンでできるだけ温度が一定になるようにコントロールしましょう。当院の入院室は、ワンちゃんの場合は20℃、猫ちゃんの場合は23℃に設定しています。個体差もありますので、この温度を参考にワンちゃんや猫ちゃんに最適の温度をみつけてあげてください。なお、湿度も大切です。60%以下になるように上手にエアコンを使ってください。

次に、食事の工夫です。食欲が落ちているときは、ドライフードならお湯でふやかす、ウェットフードの比率を多くする、できるだけ消化しやすいものを食べさせるといった工夫をしてください。お肉の茹で汁をいつものご飯にかけてあげるのも、食欲の増進に役立つことが多いです。

特に気をつけたいのが水分補給です。いつでも好きな時に新鮮なお水を飲めるように、複数箇所にウォーターボウルを置いておく、自主性に任せるだけでなく、飼い主様が積極的に口元まで水を持っていき飲ませるようにするといったことも必要です。また、犬は氷を入れた冷たい水を、猫はぬるま湯や流れる水を好む傾向があります。

 

<環境を整えれば夏バテは改善されます>

基本的に、上記の「温度・湿度」「食事」「水分」に気を付けて環境を整えてあげれば、ワンちゃんも猫ちゃんも、夏バテの症状は改善されます。夏の暑さが続く中で、ワンちゃんや猫ちゃんの元気がなく、食欲も落ちてきたと感じたら、まずは「温度・湿度」のコントロールを見直し、食事の改善やこまめな水分補給を心掛けましょう。

特に身体機能がまだ未熟な子犬や子猫、そして体力や免疫力が低下してきている老犬や老猫には、十分な注意が必要です。

熱中症の初期症状が現れている場合は、ワンちゃんや猫ちゃんの体に熱がこもって熱くなっているはずですので、まず体を冷やしてあげましょう。保冷剤などをタオルでくるみ、太い血管の通っている首や脇の下、後ろ足の付け根のあたりを冷やすと、効率的に全身の体温を下げられます。その後、できるだけ早めに動物病院に連れて来てください。

 

<それでも症状が改善されなければ…>

上記の対処を行っても症状が改善されない場合は、夏バテによく似た症状の、別の病気が隠れている可能性があります。

犬や猫に多く隠れている、夏バテによく似た症状の病気をご紹介します。夏バテの対処をしても症状がなかなか改善されない場合は、一度かかりつけの動物病院に相談してみましょう。

 

夏バテに似た病気

トイレの中の猫

 

<犬に多い夏バテに似た症状の病気>

①貧血

夏バテで元気がないのかと思っていたら、実は貧血だったということがあります。貧血になる一般的な原因は、栄養不足や体内外での出血です。しかしワンちゃんの場合、多数のノミに寄生されて重度の貧血になるというケースもあります。

夏は草むらの草丈も伸び、子犬は特に喜んで入りたがるかもしれませんが、ノミが潜んでいることが多いので、できるだけ散歩コースからは外すようにすると良いでしょう。

②熱中症

ワンちゃんに限りませんが、夏バテだと思っていたらあっという間に症状が悪化してしまい、熱中症だったということもあります。夏バテの場合は徐々に体力が低下していきますが、熱中症の場合は症状が急に現れて悪化します。パンティングをし大量によだれを流す、ぐったりしていて歯茎や舌の色が白っぽいといった場合は、熱中症が強く疑われます。

 

<猫に多い夏バテに似た症状の病気>

①胃腸炎

夏バテの症状に加えて、繰り返し嘔吐する、うんちをしようとしているのに排便しないといった症状が見られた場合は、胃腸炎の可能性が疑われます。猫の場合、ストレス、寄生虫感染、誤食が原因になりやすいので、日常的に対策を心掛けましょう。

②腸閉塞

夏バテの症状に加えて、胃液だけを何度も吐く、うずくまってじっとしているといった症状が見られます。腸閉塞も、誤食やストレスによる過剰な毛づくろいでできた毛玉が原因となりやすいです。腸管が壊死してしまうととても危険です。

③尿石症

尿管や膀胱、尿道などに結石ができる病気です。これも、夏に限らず猫に多い病気です。夏バテの症状に加えて、トイレに行く回数が増えるのにおしっこの量が少ない(または出ない)、おしっこが濁っている、血尿が出るなどの症状が見られます。

④腎臓病

これも猫に多い病気です。夏バテの症状に加え、お水を沢山飲んで薄いおしっこを沢山する、嘔吐を繰り返す、脱水するといった症状が見られます。特に、過去に尿石症や猫カゼで脱水症状になったことのある猫や、歯周病を持っている猫はかかりやすい傾向があるので注意しましょう。

⑤猫カゼ

夏バテになった時に気をつけたい病気に猫カゼがあります。主な症状は、鼻水、くしゃみ、咳、流涙、目やにです。病状が悪化すると、発熱したり口内炎ができたりもします。

猫カゼはワクチンで予防できる感染症ですが、過去に感染したことがある猫の体内には病原体が残ってしまうため、夏バテで体力が弱ったタイミングに再発することがあります。気を付けましょう。

 

ポイント

昼寝する犬と猫

 

ポイント

・犬や猫も夏バテをします

・夏バテの場合、「気温・湿度」「食事」「水分補給」を対処すれば症状が改善します

・犬の場合、当院の入院室は気温20℃、湿度60%以下を目安にしています

・猫の場合、当院の入院室は気温23℃、湿度60%以下を目安にしています

・犬の場合、夏バテによく似た症状の貧血や熱中症が潜んでいることがあります

・猫の場合、胃腸炎、腸閉塞、尿石症、腎臓病が潜んでいることがあります

・過去に猫カゼに感染したことのある猫は、夏バテで体力が弱り再発することがあります

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