角膜潰瘍

犬猫の病気や症状

 

犬に多い目の病気:角膜潰瘍

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

今回は、犬に非常に多い目の病気の一つである、角膜潰瘍についてお伝えします。
目の病気は、比較的飼い主様が気付きやすい病気なので、このブログを参考に日々の健康管理に役立てて頂ければ幸いです。

 

角膜潰瘍とはどのような病気なのか

犬の顔のアップ

 

目の表面には涙の薄い膜(涙膜)があり、その奥に角膜があります。角膜は透明で光を通し、さらにその奥の方にある水晶体と共に、レンズの役割を果たします。
目を正面から見ると、目の中央に黒目が見えますが、これは角膜の奥の方にある瞳孔や虹彩が、透明な角膜を通して見えているのです。
このように、透明な角膜には血管がありませんが、神経はたくさんありますので、目にゴミが入るなどの刺激に対してはとても敏感に痛みを感じます。

 

この角膜に傷が付いたり穴が開いたりした状態になったものが角膜潰瘍です。
角膜自体の厚さは薄いのですが、さらに細かく見ると、角膜は角膜上皮、基底膜、角膜実質、デスメ膜、角膜内皮という5層構造になっています。

 

角膜潰瘍の種類は、表在性、深部性、複合型、デスメ膜瘤、難治性の5つに分類できます。
角膜上皮が部分的に傷ついている状態が表在性角膜潰瘍、角膜実質まで傷ついている状態が深部性角膜潰瘍、感染した細菌が産生した分解酵素で角膜実質が融解してしまい複雑化した状態が複合型潰瘍、潰瘍が角膜実質よりさらに深いデスメ膜まで達し、眼内圧によりデスメ膜がコブのように突出した状態がデスメ膜瘤、角膜上皮と基底膜が接着せずにはがれやすくなってしまっている状態が難治性角膜潰瘍です。

 

デスメ膜瘤は眼球破裂をおこしやすく、緊急性の高い状態です。
難治性角膜潰瘍は、名前の通りに治りづらく、ボクサー、フレンチ・ブルドッグ、ゴールデン・レトリーバーなどの犬種によくみられます。

 

角膜潰瘍の原因は、物理的な刺激による傷や、細菌、ウィルス、真菌などによる感染です。
また、涙膜の異常や涙の不足も原因となります。
大抵の場合、飼い主様が気づいて来院される頃には細菌等に感染していることが多く、特に猫のウィルス感染の場合は、猫ヘルペスウィルス1型に感染しているケースが多いです。

 

角膜潰瘍の症状

猫の顔のアップ

 

角膜潰瘍には、次のような症状が現れます。

 

・ 羞明(しゅうめい)
通常であればなんでもない光の量であるにも関わらず、眩しくて不快に感じる状態のことです。
角膜潰瘍以外にも、白内障、ドライアイ、結膜炎、網膜剥離、緑内障など、さまざまな目の病気の症状として現れます。

 

・ 流涙
通常の場合、まばたきのつど涙が少量が分泌されて目の表面を覆います。
それが、目の乾燥を防いだり、目に酸素や栄養を供給したり、感染を防いだり、目の表面の傷を治したり、物を鮮明に見えるようにしているのです。
しかし、涙がまぶたから溢れ出している状態が続くことを流涙と言います。

 

・ 目脂(めやに)
目の表面の細胞が新しい細胞に入れ替わると、死んだ古い細胞等が目の分泌物と混ざって目脂となります。
角膜潰瘍の場合、何に感染しているかによって粘性があったり、サラサラしていたり、膿のようだったりと、さまざまなタイプの目脂がみられます。

 

・ 結膜充血
白目の部分を結膜と言い、その部分が充血して赤くなっていることを結膜充血と言います。
目の病気以外でも、犬や猫の興奮や体温の上昇などが原因で結膜充血になることもあります。

 

・瞬膜の露出
犬や猫には、まぶたとは別に水平方向に動いて眼球を保護する、瞬膜という半透明の薄い膜があります。
普段はほとんど見えませんが、角膜潰瘍になると、この瞬膜が出っぱなしの状態になることがあります。

 

・その他
犬や猫は自分で症状を訴えることができませんので、上記の症状以外にも、目に触られるのを嫌がったり、目がしょぼしょぼして頻繁に瞬きをしたり、自分の前脚で頻繁に目をこすったりします。
これらの行動をよく目にするようになった場合も、要注意です。

 

角膜潰瘍の検査と治療

目をこする犬

 

前述の通り、角膜潰瘍の原因はさまざまです。
治療方法は、原因や病状に応じて変わってきますので、まずは原因を究明したり、病状を確認するための検査を行います。
角膜上皮のどこに傷が付いたり剥がれやすくなっているのかを調べるために、フルオレセイン染色という方法で調べます。
試薬を付けた角膜上皮の内、緑色に染まる部分が傷付いたり剥がれやすくなっている箇所です。

 

角膜上皮の傷が点状であったり、ごく浅くて小さい場合は、抗生物質や角膜修復保護剤(ヒアルロン酸製剤)を点眼して治療します。

 

広範囲に傷付いていたり、角膜実質の半分程度の深さまで傷が達している場合は、自己血清と抗生物質の点眼を、フルオレセイン染色で緑色に染まらなくなるまで続けます。
また、角膜の状況に応じて治療用コンタクトレンズを装着する場合もあります。

 

傷が角膜実質の半分よりさらに深いところまで達している場合は、傷が角膜を突き破ってしまう角膜穿孔という状態になってしまうリスクが高いため、早急に角膜縫合、結膜被覆術、眼瞼縫合、瞬膜被覆術などの手術を行う必要があります。

 

なお、角膜潰瘍の治療中は、犬が目をこすって自分で傷付けるのを防ぐために、エリザベスカラーを装着することが多いです。
特に痛みが強い犬の場合は目をこすりがちなので、エリアベスカラーの装着が大切になります。

 

角膜潰瘍の予防

診察される犬

 

基本的に、これをしておけば角膜潰瘍にはならないという予防法はありません。
日頃から、愛犬や愛猫の目の状態をよく観察し、目がしょぼしょぼして頻繁に瞬きをするとか前脚で頻繁に目をこするといった、前述のような症状や行動をみつけた場合は、動物病院で診てもらいましょう。
慎重に様子を見ているうちに傷の状態が悪化し、治療に必要な期間が長引いたり、手術が必要になってしまう場合もありますので、軽い症状のうちに動物病院で診察を受けることをおすすめします。

 

目脂や涙などは、目の病気にかかっていなくても普段から目にすると思いますが、普段と比べて状態や量、頻度に変化が見られた場合は注意が必要です。

 

またシー・ズーやパグなどのように、目が大きくて飛び出している犬種は目が傷付きやすいので、特に目の状態には気を付けてチェックしてあげましょう。

 

また、前述の通り、猫の場合は猫ヘルペス1型ウィルスに感染しているケースが多いので、ワクチン接種も予防策の一つとなります。
猫の混合ワクチンの中に猫ヘルペスウィルス感染症の予防となるワクチンも含まれていますので、年に1回混合ワクチンを接種することが望ましいです。

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