梅雨に増える犬の皮膚病は、ご家庭の予防ケアで防ぎましょう!

ペットの健康としつけ

皮膚病を誘発する条件

小雨の中で遊ぶ犬と子ども

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

最近、関東地方では毎週末「雨」という状況が続いています。いよいよ梅雨が近づいてきているなぁと感じておられる飼い主様も多いのではないでしょうか。梅雨時は、ワンちゃんの皮膚トラブルが増える時期です。そこで今回は、梅雨時に多くみられるワンちゃんの皮膚病や発症時の対処、そしてご自宅でできる予防ケアについてお話しします。

 

まずは、ワンちゃんの皮膚トラブルを予防するための前提知識として、梅雨時のどういった条件が皮膚トラブルを誘発しやすいのかについて知っておきましょう。

 

皮膚トラブルを誘発する三大要因は、「高温」「多湿」「抜け毛」です。日本の梅雨は「高温」と「多湿」を避けられません。そしてワンちゃんにとって、本格的な夏が始まる前の梅雨時は、「抜け毛」の季節です。

 

基本的に抜け毛は一年中発生します。しかし梅雨時になると、本格的な暑い夏に向けて冬毛から夏毛に生え変わる「換毛期」を迎えます。そこで抜け毛の量が通常よりも増え、それが被毛に絡まって通気性を悪化させるのです。そこに「高温」と「多湿」が加わることで、皮膚が蒸れやすくなり、これが皮膚のバリア機能を低下させ、細菌や真菌などが繁殖しやすい環境を作ってしまうのです。

 

特にダブルコートの犬種は換毛期の抜け毛の量が大量ですので、注意しましょう。ダブルコートの犬種の例として、下記が挙げられます。

【小型犬】

ミニチュア・ダックスフンド、チワワ、ポメラニアン、シー・ズー、パグなど

 

【中型犬】

柴犬、コーギー、フレンチ・ブルドッグ、ボーダー・コリーなど

 

【大型犬】

レトリーバー系、ジャーマン・シェパード・ドッグなど

 

梅雨時に罹りやすい皮膚病

舐めて脱毛している犬

 

では、梅雨時に罹りやすいワンちゃんの皮膚病の例をいくつかご紹介していきましょう。

 

○マラセチア皮膚炎

マラセチア皮膚炎とは、皮膚の常在微生物であるマラセチアという真菌が異常に繁殖したことが原因で起こる感染症で、脂漏症(しろうしょう)とか脂漏性皮膚炎などとも呼ばれます。マラセチアは、普段から頭皮、顔、胸、背中などの皮脂の分泌が多い部分に多く生息しています。

 

マラセチア皮膚炎になる原因には遺伝、代謝異常、栄養バランスの崩れなどさまざまな要因がありますが、その中の一つが高温多湿です。特に抜け毛が絡まった被毛で皮膚が蒸れるとマラセチアが繁殖しやすくなり、感染症につながります。

 

症状として現れるのは、散歩や食事中、睡眠中にも現れる、生活の質を落とす可能性のあるかゆみ(中等度のかゆみ)や、赤みやベタつきのある大型のフケなどです。進行して慢性化すると、脱毛して皮膚がゴワゴワとした黒い状態へと進行していきます。

 

○ノミアレルギー性皮膚炎

名前からもわかるように、ノミ(主にネコノミ)に刺されたことが原因で感染するアレルギー性の皮膚炎です。梅雨時の高温多湿でノミが活発に増殖するため、この時期に発症しやすい皮膚病の一つと言えます。

 

症状としては、飼い主様が制止しても治らないほど強い重度のかゆみが突発的に襲います。皮膚に赤みやブツブツが生じますが、強いかゆみで掻きこわされ、すぐに脱毛、えぐれ、カサブタへと発展していきます。またノミの感染が重度の場合は、貧血を起こすこともあります。

 

○急性湿疹

梅雨時や夏の雨天後に発症しやすいのが急性湿疹で、通称ホットスポットとも呼ばれています。高温多湿な環境で過ごしている密な被毛を持つワンちゃんが罹りやすい皮膚病です。

 

症状としては、中等度以上のかゆみ、皮膚の赤いただれ、脱毛、化膿や脱毛している周囲の皮毛が赤茶色に変色するなどが挙げられます。また、激しいかゆみや掻きこわした皮膚の痛みなどからワンちゃんがイライラしたり、触られるのを嫌がったり、無理に触ると痛がってキャンッと悲鳴をあげるといった行動の変化も大きな目印になります。

 

○外耳炎

特に垂れ耳や耳毛が多いワンちゃんに多く見られるのが外耳炎です。外耳炎の原因もさまざまですが、梅雨時に増えやすいのは、マラセチア皮膚炎と併発して生じる耳垢でのマラセチアの異常増殖や、ミミダニの寄生などです。

 

マラセチアの場合はベタベタしたワックス状の耳垢になり、ミミダニの場合は黒くて乾燥した耳垢になりますので、ワンちゃんが耳をかゆがった場合は、必ず耳垢の様子を観察するようにしましょう。

 

皮膚病に罹った時の対処法

犬の皮膚病の診察

 

普段でも、ワンちゃんの被毛や皮膚のケアとチェックはとても大切なケアですが、梅雨時は特に注意深くチェックをし、同じ部位を頻繁に舐めたり噛んだり掻いたりしている様子を見かけたら、その部位の状態をよく見て、毛が薄くなっていたり脱毛していたり、皮膚が赤く腫れたりブツブツができていたりしないかをしっかり確認してください。

 

もし少しでも「いつもと違うな」と感じた場合は、できるだけ早めにかかりつけの動物病院に連れてきてください。お願いしたいのは、飼い主様の自己判断で、市販の動物用薬を使用したり、人間用の薬を使用したりしないでいただきたいということです。もしも一時的に症状が改善されたように見えたとしても、その後症状が再発したり悪化したりするリスクが非常に高いからです。

 

患部はぬるま湯で優しく洗い流し、清潔なタオルや必要に応じてドライヤーなどを利用してしっかり乾かしてください。そして、患部を舐めたり触らせたりしないように工夫するようにしてください。

 

梅雨時の皮膚病の予防ケア

濡れた犬を拭く女性

 

梅雨時に入ったら、皮膚病の予防として下記の4点に配慮しながら毎日のケアを行ってあげましょう。

 

○1.室内の温湿度管理

ワンちゃんの場合、室温は20〜22℃程度、湿度は50%前後になるように管理をすると良いでしょう。もちろん個体差やその時々のワンちゃんの健康状態などにもよりますので、目安を意識しながら、適宜調節してあげてください。当院の場合も、ワンちゃんの入院室の温度は20℃を基本に調整を行なっています。

 

○2.こまめなブラッシングによる被毛の通気性の確保

どんなタイプのワンちゃんでも、こまめなブラッシングが大切です。被毛に絡まってしまう抜け毛を取り除いて通気性をよくすることで、皮膚が蒸れるのを防ぎましょう。また、ブラッシングの都度皮膚の状態をチェックできるため、異変にもすぐに気付けるでしょう。

 

○3.濡れたら乾かす

雨の日の散歩や水遊び、シャンプーの後など、水に濡れた後は必ずしっかりと乾かしてあげましょう。「この程度なら大丈夫だろう」と油断してしまうと、いつも以上に高温多湿の気候が皮膚にダメージを与えてしまうかもしれません。

 

乾かすのは、体だけではありません。耳介(耳の頭から飛び出している部分)の内側もしっかりと乾かしてください。垂れ耳や耳毛が多い犬種は特に注意が必要です。

 

○4.紫外線の浴びすぎにも注意しましょう

だいたい5月〜8月頃に、紫外線が強くなると言われています。紫外線には殺菌作用やビタミンDの生成促進というメリットがありますが、同時に浴びすぎると皮膚や目に強いダメージを与えてしまうというデメリットもあります。

 

そこで私たち人間は、帽子を被ったり日焼け止めクリームを塗ったり長袖を着たりといった形で紫外線を浴びないようにコントロールします。ワンちゃんにも、紫外線を浴びさせすぎないように注意してあげてください。

 

散歩の時間やコースを変更して日が高い時間や直射日光を浴びやすい道を避ける、窓際で過ごす時間を短くするなど、ご家庭のライフスタイルに合わせて、いろいろな工夫をしてあげましょう。

 

ポイント

レインコートを着て散歩する犬と飼い主

 

今回のブログのポイントをまとめると下記になります。少しでも気になる点に気付いたら、お気軽に当院までご相談ください。早期に対処することで、ワンちゃんの治療にかかる負荷も軽くて済むことが多いです。

 

・梅雨時は愛犬の皮膚トラブルが生じやすい時期です

・梅雨時は「高温」「多湿」「抜け毛」の管理を徹底しましょう

・梅雨時は皮膚の常在微生物が異常に繁殖しやすく、皮膚の感染症を起こしやすいです

・梅雨時はミミダニやノミなどの寄生虫も活発に繁殖するため注意が必要です

・愛犬の皮膚や被毛に異常が見られたら、速やかに動物病院に連れてきてください

・梅雨時は下記に配慮して皮膚トラブルを予防しましょう

 >室内を気温20〜22℃、湿度50%前後を目安に維持管理する

 >こまめなブラッシングと皮膚の状態チェックを行う

 >濡れたら全身や耳をしっかりと乾かす

 >紫外線の浴びさせすぎに注意する

カテゴリー