犬と猫のアトピー性皮膚炎について┃強い痒みが日常的に続く…
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬と猫のアトピー性皮膚炎は、皮膚病の中で最も多い疾患の一つであり、強い痒みが日常的に続くため、生活の質が大きく低下します。
今回は、犬と猫のアトピー性皮膚炎の原因や症状、診断、治療方法などを詳しく解説します。
原因
「皮膚は最大の臓器」と言われ、体全体を覆って細菌やウイルス、寄生虫などの異物が体内に入らないように守る機能を持っています。しかし、アトピー性皮膚炎になると、このバリア機能が低下し、様々な刺激に対して免疫が過剰に反応し、炎症が生じてしまいます。
特に、ダニの死骸や花粉、ハウスダストなどの環境中に存在するアレルゲンに対して反応が起こりやすいとされています。これらのアレルゲンに対する抗原が過剰に反応してしまう原因は不明ですが、遺伝的な要因が大きく関わっていると考えられています。
アトピー性皮膚炎は以下の犬種で多く発生しますが、全ての品種で発生する可能性があるため注意が必要です。また、若齢 (1歳〜3歳)での発症が多いです。
・柴犬
・フレンチ・ブルドッグ
・パグ
・シーズー
症状
アトピー性皮膚炎の主な症状は、目の周りや口の周り、耳介、手足の付け根、手先・足先などに痒みを伴う湿疹が現れます。痒みから皮膚を引っ掻いたり舐めたりすることで、以下の症状が見られることがあります。
・皮膚の赤み
・出血
・脱毛
・色素沈着
・皮膚の肥厚
アトピー性皮膚炎は、高温多湿の夏場に皮膚が蒸れ、症状が悪化しやすいですが、ハウスダストや花粉などのアレルゲンが原因の場合は、それぞれのアレルゲンが増加する季節に症状のピークが現れます。
診断方法
まず似たような症状を示す皮膚疾患を除外することから始まります。除外すべき疾患には以下のものがあります。
・ノミアレルギー性皮膚炎
・疥癬
・ニキビダニ症
・膿皮症
・食物アレルギー性皮膚炎
これらの疾患が検査によって除外され、以下のFarvotの診断基準のうち5項目を満たしている場合、アトピー性皮膚炎と診断されます。
・初発年齢が 3 歳未満
・主に室内で暮らしている
・発疹を伴う痒みが見られる
・前肢に病変がある
・耳介に病変がある
・耳介辺縁に病変がない
・腰背部に病変がない
これらの診断に加えて、アレルゲン特異的IgE検査、皮内反応試験などの補助的なアレルギー検査を行うこともあります。
治療方法
アトピー性皮膚炎は体質が関与しているため、完治させることが難しい病気です。そのため、治療はいかに痒みをコントロールするかがポイントとなります。
アトピー性皮膚炎の治療は、主に以下の3つの柱で行われます。
①飼育環境の改善
アレルゲンの曝露量を減らすために、室内の掃除や空気清浄機の設置、散歩中は洋服を着せるなどの対策が有効です。
②薬物療法
サイトポイントやアポキルなどの薬は、痒みを誘発するサイトカインを中和し、痒みをブロックします。
特にサイトポイントは副作用が少なく、月に1度の注射で済むため、自宅での投薬の手間が省けます。ただし、アポキルは長期使用により免疫不全の懸念があります。
当院ではサイトポイントをベースに、細菌感染がある場合は抗菌薬など症状に合わせて他の治療薬を組み合わせています。
③適切なシャンプー
皮膚を清潔に保つために、シャンプーはアトピー性皮膚炎の予防に有効です。当院では、トリミング時に薬浴やマイクロバブル、炭酸泉などを組み合わせて症状の緩和を目指しています。
予防法やご家庭での注意点
アトピー性皮膚炎の発症は、遺伝的素因や環境中のアレルゲン、皮膚のバリア機能など複数の要因が関与しているため、100%予防することは困難です。
しかし、日々の掃除や空気清浄機を使って環境を清潔に保つことは、アトピー性皮膚炎の発症予防に極めて重要です。
また、犬や猫が皮膚を痒がったり気にしたりしているのを見かけたら、掻き壊して皮膚にさらにダメージが及ぶ前に、早めに動物病院で診てもらいましょう。
まとめ
・アトピー性皮膚炎は皮膚のバリア機能が低下し、さまざまな刺激に対して免疫が過剰に反応して痒みが生じる病気です。
・ダニの死骸や花粉、ハウスダストなどの環境中に存在するアレルゲンに対して反応が起こりやすいです。
・慢性的な強い痒みが続くため、愛犬愛猫の生活の質が著しく低下します。
・治療は飼育環境の改善、薬物療法、適切なシャンプーの三本柱で行います。
・皮膚を痒がる様子が見られたら、引っ掻いて皮膚がダメージを受ける前に動物病院を受診することが大切です。
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