乾燥する冬に特に大切な犬のスキンケア

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太平洋側の冬の風は乾燥しています

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

冬になると、シベリアからとても冷たい風が日本に吹き付けられます。その風が日本海を通過する時に、空気中の水分が吸収されて日本海側の地域にたくさんの雪や雨を降らせます。そのため、山を越えて太平洋側に入ってきた風は、水分が抜けてしまい乾燥した空気になっています。

 

さらに室内では、エアコンやヒーターなどの暖房器具を使用するため、ますます空気が乾燥することになります。しかし皮膚にとって、乾燥は大敵です。今回は、乾燥しがちな冬における犬のスキンケアについてお話しします。

 

皮膚の構造

寒そうな犬

 

皮膚の表面は、角質細胞が密に何層にも積み重なった、タイルのような構造の角質層です。この角質層は、動物が陸上で生きていく上でとても大切な働きをしています。たとえば、オタマジャクシには角質層はありませんが、カエルになると角質層が形成されるのです。角質層は、陸上の環境に適応するために必要な「バリア機能」を持っている臓器なのです。

 

バリア機能というのは、外部環境から体内にウイルスや細菌、真菌といった外敵が侵入するのを防ぐ機能です。角質層は、角質細胞が何層にも積み重なった構造をしていますが、その角質細胞と角質細胞の間には、角質細胞間脂質という脂質があり、角質細胞をしっかりとつなぎとめています。この角質細胞間脂質は水分を保持する機能も持っており、バリア機能に貢献しています。

 

角質細胞間脂質を構成する成分の中でも、特にセラミドが重要です。セラミドは、水分の保持能力が高い脂質で、バリア機能も強靭です。そのため、角質を構成するタンパク質はもちろんですが、この角質細胞間脂質が不足することも、皮膚バリア機能の低下を招く要因になります。特にアトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患を悪化させる要因となります。

 

皮膚の構造は人も犬も同じなのですが、犬の皮膚は被毛で覆われている分非常に薄く、人の1/3程度しかありません。そのため、犬の皮膚は人の皮膚よりもずっとデリケートだということを覚えておいてください。

 

犬の皮膚にも乾燥は大敵

ストーブにあたる犬

 

冬になると空気が乾燥し、その影響で犬の皮膚も乾燥します。皮膚が乾燥すると、皮膚の表面から水分や角質細胞間脂質が失われてしまい、バリア機能が低下します。そのため、外からの刺激に対して無防備な状態になります。そうなると、少しの刺激に対しても敏感になってしまい、かゆみが出やすくなります。

 

かゆくなると、犬はその部分を舐めたり掻いたりするので、皮膚は刺激を受け、さらにかゆみが増してしまいます。また、掻くことで皮膚が傷つき、ますますバリア機能が低下して悪循環に陥ります。

 

バリア機能が低下すると、体内にウイルスや細菌、真菌といった外敵が進入してきますので、アトピー性皮膚炎などのアレルギーを持っている犬は、その症状が出やすく、また悪化しやすくなります。

 

そこで、特に冬には、保湿を意識したスキンケアが必要になります。シャンプーをすることで汚れとしての脂質と共に角質細胞間脂質も落ちてしまいますので、シャンプー後にコンディショナーやリンスでしっかりと保湿ケアをすることが重要です。シャンプーだけで終わりにしないように注意してください。

 

また、エアコンなどの乾燥を誘発する暖房器具を使う場合は、加湿器を利用する等の工夫も必要です。室内の湿度が50〜60%を維持できるように工夫してください。

 

他にも、愛犬がいつでも十分な水分を補給できるようにする、エアコンやヒーターの風が直接愛犬の体に当たらないようにする等の工夫をし、肌の乾燥を予防してあげましょう。

 

アレルギーのある犬のスキンケア

ドライヤーをかける犬

 

特にアトピー性皮膚炎などのアレルギーを持っている犬の場合のスキンケアでは、下記に注意すると良いでしょう。

 

(1) シャンプーの選び方

低刺激性で保湿成分が配合されている製品を選ぶことをおすすめします。シャンプーに保湿成分が配合されていても、それで保湿効果が十分という訳ではありません。必ずシャンプー後の保湿ケアは必要です。

また、外用薬を使用する場合、シャンプー後だと汚れも落ち、皮膚も柔らかくなっているので、薬が皮膚に浸透しやすくなり効果的です。

 

(2) お湯の温度

熱いお湯の使用は厳禁です。犬の体温よりも低いぬるま湯を使用しましょう。温度が高いと、血行が促進されてかゆみが出てくるからです。アレルギーを持っている犬の場合、より強いかゆみが出ることがあるので注意しましょう。

 

(3) ドライヤー

たとえ夏の暑い時期であったとしても、シャンプー後はそのままにしてはいけません。毛が湿ったままだと雑菌が繁殖しやすい環境になり、体臭がきつくなったり皮膚炎が悪化したりする原因になるからです。必ずドライヤーを使って体を乾かしてください。

ただし、敏感な肌にはドライヤーの熱も刺激が強過ぎます。吸水力が強くて清潔なタオルでしっかりと体を拭いて、まずはタオルドライを行ってください。その後にドライヤーで乾かします。その際も、ドライヤーを体に近づけ過ぎず、温度も高過ぎないように気をつけて乾かしましょう。ドライヤーと犬の体の間に飼い主さんの手をかざすようにしながらドライヤーをかけると、温度が分かるので安全に行えます。

 

掻けば掻くほど痒くなる

ブラッシングする犬

 

かゆみは、掻くことでさらに増幅していきます。そして、犬に掻くのを我慢させることは難しいです。デリケートな皮膚を持っている犬には、まずかゆみを生じさせないことを目標にスキンケアをしていきましょう。特に、冬の空気が乾燥する時期は、保湿に注意してください。

 

なお、過度なシャンプーは必要な脂質も落としてしまい、逆効果です。特別な理由がない限り、シャンプーは月に1回程度が目安です。

 

スキンケアの最も基本となるのは、ブラッシングです。ブラッシングを行うことで、被毛の中に残っている抜け毛や汚れを落とし、風通しが良くなることで蒸れることも予防できます。そして、ブラッシングによる刺激が肌の血行を良くします。ブラッシングは、出来るだけ毎日行うようにしましょう。また、ブラシは愛犬の毛質に合ったものを選び、あまり強くし過ぎないように注意してください。

 

また、シャンプーをする前にもブラッシングを行うことをおすすめします。抜け毛や毛玉がついたままシャンプーをしても、汚れがきちんと落とせなかったり毛が絡んでしまってシャンプーがやりづらくなったりするからです。そして、シャンプーが終わり、しっかりと体を乾かしたら、最後にもう一度ブラッシングをして、毛並みを整えてあげましょう。

 

皮膚のかゆみは、犬にとってもストレスになります。軽視せず、しっかりとスキンケアを行い、愛犬が快適に暮らせるようにサポートしてあげてください。

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