80列マルチスライスCTを導入しました

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新しいCT装置に入れ替えます

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

2020年12月に、今まで使用してきた16列のCTを、新しく80列マルチスライスCTに入れ替えることになりました。列数が多くなったということは、それだけ撮影にかかる時間が短くなることを意味します。そのため、今まで難しかった無麻酔での撮影も可能になります。

 

この機会に、CT検査の特徴やどのような検査に適用できるのかといったことを、改めてご紹介したいと思います。

 

新しいCT装置の概要

CT検査装置

 

CTとは、Computed Tomographyの略で、日本語にするとコンピュータ断層撮影になります。X線装置で体の周囲を360度回転しながらスキャンし、体の断層面を撮影します。一般的なX線検査(レントゲン検査)と比較すると、体の組織の識別能力がとても高いため、非常に精度の高い検査を行うことができます。

 

さらにコンピュータ処理により立体像の再構成も行えるため、外科手術の準備などの際にも非常に役に立ちます。

 

今回導入した機種は、0.5mm厚の80列160スライスの画像を1回転0.5秒でスキャンできる、高速で高分解能を持っています。しかも、低被曝での撮影が可能なため、患畜への負担も今までよりも軽くなります。

 

CT検査と他の検査の違い

CTと私

 

代表的な画像検査には、エコー検査、レントゲン検査、CT検査、MRI検査があります。ここで、それぞれの違いを簡単にまとめておきましょう。

 

<エコー検査>

超音波を利用した検査で、お腹の中の臓器や心臓の検査に用います。

動きに強く、心臓の検査や小型犬の腹部臓器の描出に優れています。

ただ頭部や骨盤の中など、骨に覆われているところは観察できません。

また大型犬の腹部はビームが届きにくく苦手です。

撮影時間が早いので、無麻酔での検査が可能です。

 

<レントゲン検査>

CTと同じくX線により撮影します。胸部や腹部、骨など全身が対象となり、体内の様子を調べることができます。

画像は白黒で、X線が通過しにくい骨の部分は白く、通過しやすい空気などは黒く写ります。肺、心臓、腸管などの各臓器の状態や、骨折や関節の状態を観察できます。

犬や猫が誤食をした場合にも、誤食した物や位置の確認をするために利用します。

CTと異なり一方向からの撮影なので、平面の画像しか撮れません。そのため臓器が重なり、正確な診断ができない場合もあります。

 

<CT検査>

レントゲン検査と異なり、体の周囲を360度回転してスキャンするため、一度の撮影で大量の画像データを取得でき、さまざまな角度の断面を確認することができます。コンピュータのAI処理による立体像の再構築も可能なため、手術の設計図として、非常に重要な役割を担います。

MRIには劣りますが、頭部では腫瘍、出血、水頭症などの診断が可能です。

 

<MRI検査>

X線検査に不向きな骨に囲まれた脳や脊椎の検査により有効なのが、磁石の力を利用して体の断面を撮影するMRIです。

ただし、MRIはCTに比べ撮像に時間がかかるため全身麻酔が必要です。

 

CTとMRIの関係ですが、頭部における脳の急性の出血に対してはMRIよりもCTの方がより有効であり、脳や脊椎の神経系の疾患にはMRIの方が適しているという面があります。ただし、CTでも多くの判定が可能ですので、まずはCTで無麻酔により出血および腫瘍の検査を行うことがおすすめです。脊椎疾患に関しても最適なのはMRIですが、椎間板ヘルニアの場合、石灰化していればCTの単純撮影でも部位の判定が可能ですし、石灰化していない場合も造影撮影を行うことで、CTでも部位の判定が可能です。

 

このように、CT検査で発見できる異常は水頭症、脳腫瘍、交通事故などによる頭部の外傷、鼻血、椎間板ヘルニア、胸部や腹部の疾患、腫瘍の早期発見など非常に多岐に渡り、X線写真では見つけられない病気の診断にとても役に立ちます。腫瘍の場合は、転位の確認や手術計画を綿密に行う目的でも使用できます。

 

新しいCT装置は全身麻酔をしなくても撮影できます

診察を受ける猫

 

今回、16列から80列のCTに入れ替えたことで、X線の検出器の数が5倍になり、かつ管球の容量が3.5MHUから5MHUに大きくなり、撮影時間が非常に短くなりました。このことにより、患畜への負担が非常に軽減されます。なぜならば、無麻酔での撮影が可能になるからです。

 

従来使用していた16列のCTも、CTの中では高速に撮影できる部類の機種ではありましたが、撮影の瞬間に意図的に息を止めることができない患畜を正確に撮影するためには、どうしても全身麻酔が必要でした。

 

全身麻酔は患畜に与える負担が大きいため、高齢な動物や麻酔の副作用が強く出てしまう患畜の場合、それを理由にCT検査を諦めるケースも少なくありませんでした。それが、無麻酔で検査できるようになるということは、より多くの患畜に、安全に精度の高い検査を行うことができるようになるため、より多くの患畜に正確で精度の高い診断を行うことが可能になるということなのです。

 

麻酔不要の低被曝CTでもっと高度医療を!

診察を受ける犬

 

今回のCT新規導入により、低被曝での検査及び短時間での撮影が可能になり、患畜に全身麻酔をすることなくCT検査を受けていただけるようになりました。このことにより。今までCT検査を諦めていた老犬や老猫等にも、CT検査による精度の高い画像診断を行うことができるようになります。

 

今後も、高度な医療機器の導入や、医療スタッフの技術の向上を継続的に行い、ご家族の皆様に安心して愛犬や愛猫の検査や診断、治療を受けていただけるように努力してまいります。

 

小さなことでも構いませんので、ご心配な点等があれば、いつでもお気軽にスタッフにお声がけください。

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