大型犬を飼う際の注意点
目次
魅力的な大型犬
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
日本では小型犬の飼育が圧倒的に多く、大型犬を飼われている飼い主様はあまり多くないのが現状です。欧米ではレトリーバーやジャーマンシェパードなどの大型犬が人気犬種の上位を占めていますが、日本の住宅事情を考えると、どうしても中小型犬の比率が多くなってしまうのでしょう。
しかし、成人した大人が抱きつけるペットは、大型犬だけです。また愛犬と一緒にスポーツを楽しむなど、アクティブな付き合い方をされたい飼い主様にとっては、猫や中小型犬との暮らしとは一味違う醍醐味を味わえるのが、大型犬の魅力ではないでしょうか。
実は、大型犬はその見た目とは異なり、とても温和で優しい性格の子が多いです。環境が整い、きちんとしつけることができれば、飼いやすい犬種も多いのです。もちろん中小型犬と比べると、大型犬を飼うには多少高いハードルがあるのも事実です。
そこで今回は、大型犬の飼い方や一緒に暮らす際の注意点をご紹介します。
大型犬の飼い方
大型犬といわれる体重が25kg以上の犬は、体の大きさに合った広いスペースを必要とします。そのため、外飼いしかできないと考えられる方が多いかもしれません。しかし外での暮らしは、フィラリアや寄生虫の感染や気温･湿度の調節ができないなど、あまり良い環境とは言えません。たとえ大型犬であっても、室内での飼育をおすすめします。
体が大きいので、少しでもノビノビ過ごしてもらおうと室内で放し飼いにされる飼い主様がおられます。しかし室内であっても、愛犬が落ち着けて安心できる場所は必要です。犬は、周囲を囲まれている巣穴のような場所を好みます。周囲の外敵から身を隠すことができ、過酷な自然環境からも隔離されるからです。室内でも同じで、大型犬のサイズに合った広さのハウスがあると、エアコンの風や窓からの直射日光から身を守り、知らない来客からの視線を遮断できます。突然の雷鳴などにも、ハウスの中なら落ち着ける場合もあるでしょう。
また、トイレも必ず室内に設置しましょう。散歩の時にしか排泄できないと、悪天候時や体調不良で散歩に行けない日、そして歩くのもおぼつかなくなった老後などに苦労することになります。愛犬自身にも辛い思いをさせないように、若い頃から室内に犬用のトイレを設置して、トイレトレーニングを行いましょう。
大型犬は体のサイズが大きいため、ハウスもトイレも、室内に設置するにはかなりの場所を要します。他にも食事をする場所や飼い主様と一緒に寛ぐスペースなど、やはり大型犬と一緒に暮らすためにはそれなりの広さのお住まいが必要です。
更に重要なのが運動です。殆どの大型犬は、狩猟犬や牧羊犬です。つまり、かなりの運動量が必要な体の構造になっているのです。その高い運動欲求が満たされないと、心身共に健康な状態を保てなくなります。大型犬の場合は、1回1時間程度の散歩を1日に2回行うのが一般的です。さらに高い運動量を要する犬種の場合は、1回1〜2時間程度の散歩を1日2回必要とするケースもあります。例えば、馬車の伴走犬だったダルメシアンなどもそのくらいの運動量が必要な犬種です。
大型犬と暮らす際の注意点
大型犬と一緒に暮らす場合、大型犬だからこそ注意が必要な点もあります。その一つが、足腰への負荷の軽減です。体の大きさや体重の重さから、中小型犬よりも足腰に掛かる負担が大きいのですが、フローリングのように滑りやすい床だと、さらに負担が大きくなります。滑り止め効果のあるフローリング材の使用や、カーペットを敷くといった工夫をしてあげてください。
同じ理由で、肥満も予防してください。肥満になることでさらに足腰への負担が増し、老後の寝たきり生活に繋がります。寝たきりになってしまうと床ずれ予防のために、飼い主様が定期的に寝返りを打たせてあげなければなりません。大型犬に寝返りを打たせるのは、かなりの重労働です。
そして、大型犬には中小型犬以上にきちんとしたしつけが重要です。体が大きいだけではなく、かなり力もあるからです。女性やお子さんだけでは、興奮したりパニックを起こしたりしている大型犬を力づくで鎮めさせるのは難しいでしょう。第三者に怪我をさせてしまうこともあり得ます。しっかりとしつけをし、飼い主様の「マテ」や「オスワリ」などの指示できちんと冷静になれるようにしておくことが大切です。
事前に考えて欲しいこと
大型犬との暮らしには、中小型犬との暮らしでは得られない魅力があります。だからといって、むやみに大型犬との暮らしをおすすめしているわけではありません。
一緒に暮らすパートナーとなる犬を選ぶ際には、その犬を最期まで責任持ってお世話できるかどうかを考えなければなりません。飼い主様の庇護がなければ、犬は今の世の中では暮らしていけないからです。そのため、安易に決めるのではなく、しっかりと下記のような観点で検討をした上で、一緒に暮らすパートナーを決めていただきたいと思います。
１．大型犬と一緒に暮らすために必要な環境を揃えられるか
ご自宅の広さだけではなく、わんちゃんと一緒に旅行などに行かれる方は、移動するための手段として車を持っていると便利であるなども含まれます。
２．最期まで責任を持てるだけの覚悟があるか
愛犬が元気な頃のお手入れやしつけ、パニックを起こした時の制御はもちろん、怪我や病気の際の看病や老後の介護なども含めて、愛犬の生涯を通してかなりの重労働が求められます。愛犬の介護をされる時の飼い主様の年齢も含めてよく検討される必要がありますし、ご自身の健康管理も重要です。
また、中小型犬と比較すると、やはり大型犬は食事の量も多く、必要なペット用品や医療費、トリミング費用なども高額になりがちです。中小型犬を飼う場合よりも多くの費用が必要だという覚悟は必要だと思います。
ポイント
ポイント
・賢くて穏やかな性格の犬種なら飼いやすい大型犬も多いです
・大型犬も室内飼いの方が適しています
・室内にもハウスやトイレを設置してください
・大型犬は中小型犬以上にしっかりとしたしつけと多くの運動量が必要です
・中小型犬の場合と比べて、大型犬はその生涯を通して飼い主様の重労働や経済的負担が多くなるという覚悟が必要です
