愛犬、愛猫の健康管理に検査が重要な理由

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今年もよろしくお願いします

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

新年、あけましておめでとうございます。

 

今年も動物たちの診療を通して、飼い主様とその伴侶となる動物たちの健やかで楽しい暮らしをお手伝いできるよう、スタッフ一同、誠心誠意取り組んで参ります。よろしくお願いいたします。

 

検査には理由があります

犬と猫

 

飼い主様の中には、動物病院に対して「すぐに検査をすすめられるけれど、そんなに頻繁に検査をしなければいけないのだろうか」とか「検査をすると料金がとても高くなるのに、念のためにとしなくても良い検査まですすめられているのではないだろうか」と疑心暗鬼になられている方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、ただ念のためにという理由だけですすめているわけではありません。検査の種類によってはワンちゃん猫ちゃんに負担がかかります。動物たちの命を救いたい、動物たちが安心して健やかに暮らせるお手伝いをしたいという思いでこの職業を選んだ私たちには、ワンちゃん猫ちゃんに負担をかけてまで必要のない検査をさせたいとは思いません。

 

そこで今回は、私たちがどのように動物たちの病気を診断し、治療計画を立て、その成果を判断しているのかという流れをご説明し、その中で検査がどのくらい重要な役目を果たしているのかをご理解いただければと思います。

 

診断の手順

犬の聴診

 

ワンちゃん猫ちゃんの体の状態を知るために、私たちは下記の手順を踏みます。

 

1)問診

2)身体検査

3)臨床検査

 

まずは、ワンちゃん猫ちゃんにどのような症状が出ているのかを把握するために、問診を行います。体に痛みがあるのか、だるさや倦怠感があるのか、下痢や嘔吐といった症状があるのかなどです。

 

もちろん、私たちが診る患者様は犬や猫、ウサギなどの動物ですから、直接お聞きすることはできません。そこで、飼い主様からお話を伺うことになります。一見症状とは関係のないことを聞かれていると思われることがあるかもしれませんが、そんなことはありません。お話を聞きながら、診断のヒントになることを聞き出すのも私たちの仕事なのです。

 

一通りの問診が終わると、次に身体検査を行います。身体検査では、直接ワンちゃん猫ちゃんを見たり触ったりすることで、体の状態を調べます。体重、心拍数、呼吸数の計測、被毛や皮膚、眼、耳、鼻、口の中、全身の骨格や四肢の状態や呼吸の仕方、心音や肺音(聴診)、腹部等の触診によるしこりの有無などを確認していきます。

 

私たちの頭の中には、とてもたくさんの病名が並んでいるリストがあります。そのリストから、問診や身体検査で分かったことを元に、病名を消していきます。そうして最後に残った病名が、診断結果となるのです。

 

ただし、身体検査までの段階で最終的な診断を下すことはできません。病名をかなり絞り込むことができてはいますが、それでもまだいくつかの病名が残っていることが普通なのです。

 

そこで最終的な診断を下すために、臨床検査を行います。臨床検査には、血液や尿、便など、動物たちから採取した物を検査する検体検査と、X線検査やCTなどの検査機器で直接動物たちの体の中を検査する生体検査があります。

 

検査の種類はとてもたくさんありますので、すべての検査を行うわけではありません。病名リストに残っている病名を、明確に否定できる証拠を見つけるために必要な検査項目を選びます。検査の結果「この病気ではない」という証拠を得られた病名をリストから消すためです。場合によっては、追加の検査が必要になる場合もありますが、こうして最終的な診断に至ります。

 

診断された病名によっては、さらに詳細な検査が必要になる場合があります。手術ができる状態かどうかや適用する薬の選択のための検査だったり、実際に手術を行うための詳細な設計書を作るために必要な検査だったりと、その時々で異なります。

 

さらに、治療の過程や最終段階でも、治療の効果などを判定するために検査を行うことがあります。途中経過を検査でモニタリングした結果、治療の継続または変更等の判断をしたり、治療を終えても大丈夫だという判断をしたりするのです。

 

こういった過程で、もしかすると飼い主様に「いらない検査まですすめられたのでは」という疑心を起こさせてしまうのかもしれません。私たちも、なぜこの検査を行う必要があるのかについて、またその検査に伴うリスクがある場合はそのことも含めて丁寧にご説明いたします。それでも、飼い主様には聞き慣れない言葉がたくさん出てきて、よくわからないかもしれません。その場合は、どこがわからないとか、ここが心配といった率直な質問を遠慮せずになさってください。ご理解いただけるようにご説明いたします。

 

動物にも必要なスクリーニング検査

X線写真を見る獣医

 

病名を診断する過程で行った問診や身体検査は、体の異常を発見するための検査に該当します。こういった目的で行う検査のことを、スクリーニング検査と言います。人間も、ある程度の年齢までは、学校や会社で1年に1度の健康診断を受け、またその年齢を過ぎると1年に1度の人間ドックを受けておられると思います。この健康診断や人間ドックも、スクリーニング検査の一種です。

 

私は、定期的な健康診断は人間だけではなく、犬や猫にもとても必要な検査だと考えています。動物たちは、言葉を話せません。体の調子が悪くても、飼い主様に訴えることができませんので、健康管理は飼い主様の観察に頼るしかありません。しかし動物たちは、体調が悪くても、それをあまり他者には知らせないように我慢してしまいます。野生で暮らしていた時に、自分が弱っていることを敵に知られてしまうと命取りになったことの名残でしょう。

 

したがって、飼い主様が愛犬や愛猫の病気に気がついて来院された時には、病気がかなり進行してしまっているケースが少なくありません。そうすると、治療に長い期間を要したり、場合によっては手の施しようがない場合すらあったりします。そうさせないためには、定期的な健康診断で病気を早く見つけてあげることが必要になるのです。

 

また、健康診断は定期的に継続して受けることが望ましいと考えています。検査の結果が蓄積されていくことで、健康状態の変化を知ることができるからです。ただし、この定期的というのが曲者です。10年に1度受けても1年に1度受けても、言葉上は定期的になってしまうからです。

 

ご存知の方も多いと思いますが、犬や猫はだいたい1年で成熟し、その後小型犬や猫は1年で人間の4歳分、中型犬は5歳分、大型犬は7歳分の歳をとっていきます。こう考えると、愛犬や愛猫の健康診断が1年に1度では少な過ぎると思われないでしょうか。愛犬、愛猫の健康診断は、最低でも1年に1度、高齢になったら最低でも半年に1度は受診させることを考えてみてください。

 

なお、健康診断の内容によって、検査の費用も変わってきます。愛犬、愛猫の健康状態なども考慮して、必要最小限の検査項目、安心できる検査項目、シニアには行うべき検査項目等をアレンジできますので、お気軽にご相談ください。

 

動物達にもある白衣症候群

くつろぐ家族

 

今回は、伴侶となる動物たちの健康を管理していく上で、検査がとても重要だということをお話ししました。

 

人にもよくみられることですが、自宅で血圧を測ると正常値なのに、病院で測ると高い数値になるといった現象があります。白衣症候群と言われている現象です。これは、動物たちにもあてはまります。慣れない場所へ連れてこられた緊張感や恐怖感が、検査結果に反映されてしまうのです。

 

とても臆病な子たちは、病院に連れて来るだけでも大変だったり、診察室に入ったら豹変して凶暴になったりと、なかなか診察させてくれない子もいます。

 

いざという時にこのようなことにならないよう、どうか愛する伴侶動物たちを、普段から動物病院に連れてきてください。問診と身体検査で健康状態をチェックするだけでも構いません。そうすることで動物たちが病院や私たちスタッフに慣れてくれれば、検査結果も安定し、いざというときも治療ができるようになります。そして何より、動物たち自身のストレスも少なくなるのです。

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