犬の快適な寝床にはどのような環境が必要か

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睡眠の仕組みと重要性

眠る犬

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

動物にとって、睡眠はとても大切です。疲れの回復はもちろん、成長や新陳代謝が促され、脳が休まり、自律神経の働きも整えられ、ストレスから回復したりストレス耐性が向上したりといった効果も見込めます。睡眠が肥満の防止や肌質の改善、記憶の定着などにも関与していることが分かっています。

 

以前ヒトや犬、猫の睡眠の研究についてご紹介し、犬や猫たちも夢を見るのではないかというブログを書かせていただきました。

 

犬や猫たちも夢をみるのでしょうか? へのリンク

 

そこでもご紹介したように、ヒトでも犬でも、睡眠はノンレム睡眠とレム睡眠の組み合わせで構成されています。その組み合わせ方の違いにより、ヒトの場合は夜間に連続して6〜8時間睡眠を取り、猫の場合は1回の睡眠時間が長くても2時間程度で、小刻みな睡眠を1日のうちに何回も繰り返すような寝方をするのだとご紹介しました。

 

犬の場合も猫と同じように、小刻みな睡眠を1日のうちに何回も繰り返すという寝方をします。トータルで成犬は12時間程度、子犬や高齢犬は18〜19時間程度を睡眠にあてていると考えられています。

 

ノンレム睡眠とは、脳は休息していて体の筋肉は緊張している状態で、伏せの姿勢で眠っている事が多いでしょう。レム睡眠とは、脳波の状態は覚醒時と似ていますが体の筋肉の緊張は緩んでいるため、ゴロンと横になって眠っている事が多いでしょう。一般的に、夢を見ているのはレム睡眠時だと考えられています。

 

いずれにしても、犬の睡眠パターンに適した質の良い睡眠をしっかりと取ることで、睡眠の効果を得ることができるのです。

 

快適な寝床の環境

眠る大型犬

ワンちゃんに質の良い睡眠をさせてあげるためには、快適な寝床の環境を整えることが大切です。それでは、ワンちゃんのための快適な寝床のポイントをご紹介しましょう。

 

<犬にとっての寝心地の良さ>

まずは温度管理です。犬にとって過ごしやすい温度(20℃程度)と湿度(60%以下)を目安に調整してください。夏は、熱がこもりやすい場所や直射日光があたるような場所は、寝床として避けましょう。

また犬は、洞穴のような薄暗くて狭い場所だと落ち着けます。クレートのような四方が囲われていて遮光性の高い物を利用したり、部屋の四隅や壁沿いなどに寝床を設置したりすると良いでしょう。

 

<孤立しない>

寝床は、ワンちゃんが落ち着いて安眠できる場所ですので、ワンちゃんだけのスペースであることが理想です。しかし、ご家族から孤立してしまうような環境でも、ワンちゃんは不安になってしまいます。ご家族の気配が感じられる場所に、ワンちゃん専用の寝床を設置してあげるのが理想です。

なお、犬は1日のうちに短い睡眠を何回も繰り返します。そのため、その時々に快適な場所で寝られるよう、メインの寝床は1箇所でも、予備の寝床を複数箇所に用意してあげるのも良いと思います。

 

<低刺激である>

うるさい場所や明るい場所ではなかなか寝られません。特に、犬の聴覚は人よりずっと性能が良いので、飼い主様にとってはうるさくなくても、ワンちゃんにはとてもうるさく感じることもありますので、気を付けてあげてください。また、寝床にケージを利用する場合は、タオルや段ボールなどで天井や側面を覆い、遮光してあげると落ち着けるでしょう。

窓や玄関の近くなどの場合、外の人通りや車の往来、野良猫や野鳥などの気配が気になって安眠できない場合もあります。少なくともメインの寝床は、窓や玄関の近くではない方が良いでしょう。

 

<衛生的である>

ベッドやブランケットなどをこまめに洗濯し、衛生的な環境を維持してあげましょう。また、きちんとトイレトレーニングをした後は、寝床とトイレは離れた場所にしてあげてください。これも犬の習性の中のひとつで、犬は巣穴の中で排泄をすることはないと言われています。

 

<慣れない場所で眠らせる場合>

場合によっては、いつもとは異なる慣れない場所で眠らなければならないこともあるでしょう。ワンちゃんと一緒に旅行に行ったり、引っ越したり、もしかしたら同行避難しなければならないこともあるかもしれません。その場合、寝床にワンちゃん自身のニオイがついているブランケットや、飼い主さんのニオイがついているTシャツなどを置いておいてあげると、安心できるでしょう。

 

犬用ベッドの選び方

犬用ベッドで眠る犬

さまざまなタイプの犬用ベッドが市販されています。ここで少し、犬用ベッドの選び方についてご紹介しておきましょう。

 

<形状>

クッション・マットレスタイプ、カドラータイプ、ドームタイプの3種類がありますので、それぞれの特徴を見ていきましょう。

≫クッション・マットレスタイプ

平たくて床面だけのベッドです。リビングの四隅や壁沿いに置いておくと、くつろいでいるご家族の様子を見ながら寝ることができます。また、クレートに寝かせる場合、硬い床面を補うために入れてあげるのも良いでしょう。

≫カドラータイプ

四方、または三方の縁の部分が少し盛り上がっている形状のベッドです。囲われているため、ワンちゃんも落ち着け、また盛り上がった部分に頭を乗せて枕のように使うワンちゃんもいます。

≫ドームタイプ

天井部分も含め、入口以外の部分が囲われている形状のベッドです。熱がこもりやすいため、冬の寒い夜でも暖を取れます。ただし、クレートのようにサイズのバリエーションは多くないようです。

 

<素材>

素材に接触冷感素材や毛足の長いファーを使っている場合があるので、使用する時期と素材の関係も考慮しましょう。

また、どんなワンちゃんでも硬い素材よりも柔らかい素材の方が寝やすいと思います。特に大型犬と高齢犬は、体重の負荷を分散できるため、クッション性の高い素材が良いでしょう。

 

<サイズ>

サイズも重要です。ワンちゃんの体格に合わせて、レム睡眠時のゴロンと横になっている状態でも身体がはみ出ることのないようなサイズを選びましょう。特に子犬の時期は、成長に合わせて新調していくことが必要です。

クレートやドームタイプの場合は、中でワンちゃんが1周回れるくらいの広さがちょうど良いです。

 

一緒に寝る場合の注意点

飼い主と一緒に寝る犬

飼い主様とワンちゃんが同じ布団やベッドで一緒に寝るというご家庭も多いと思います。最後に、ワンちゃんと一緒に寝る場合の注意点もご紹介します。

 

<衛生面への配慮>

ワンちゃんのためにも飼い主さんのためにも、シーツや布団カバー、枕カバーなどをこまめに洗濯し、衛生的な環境を維持してください。

 

<ワンちゃんへの配慮>

一緒に寝るワンちゃんが小型犬や子犬の場合、熟睡した飼い主様が寝返りを打って押しつぶしてしまったり、ワンちゃんをベッドから落としてしまったりするリスクがあります。一緒に寝るのがベッドの場合は、なるべく広めのベッドにして、ベッドの下にもクッション性の高い物(マット、クッション、毛布など)を敷く等の対策をしておきましょう。

 

<飼い主様ご自身への配慮>

ワンちゃんへの配慮をするばかりに、飼い主様ご自身が寝返りを打てずに、目覚めるといつも疲れている、体の一部が痛いといった状態であれば、本末転倒です。広めのベッドにする等の対策をする、一緒に寝るのは諦めてワンちゃんの寝床はベッドの脇にする等、飼い主様ご自身が質の良い睡眠を取れるように考えてください。

 

ポイント

クレートから覗く犬

ポイント

・犬に質の良い睡眠をとらせることは、疲労回復以外にも多くの効果がある

・質の高い睡眠のためには、快適な寝床の環境が大切である

・犬は薄暗くて狭い場所が落ち着ける

・ワンちゃんの寝床は外的刺激が少なく、飼い主様の気配が感じられる場所が良い

・ワンちゃんのベッドは、形状、素材、サイズなどを吟味して選びましょう

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