元気に春を迎えるための猫の寒さ対策

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寒さが猫に与える影響

猫団子

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

現在世界各地で暮らしているイエネコの祖先は、リビアヤマネコだということが分かっています。リビアヤマネコは、北アフリカの沿岸部、中央アフリカ、イラン・イラクといった中近東、カスピ海沿岸、アラビア半島、西アジアといった地域に生息していました。これらの地域は、基本的には半砂漠から熱帯雨林地帯で、暑い地域です。そのためか、猫は暑さよりも寒さに弱いというイメージが定着し、実際に寒さによっていろいろな影響を受けることも分かっています。

 

猫が寒さによって受ける主な影響には下記のようなものが挙げられます。

 

<換毛期の毛球症リスク>

暑くなる前の春(3月頃)と寒くなる前の秋(11月頃)の年に2回、猫は体温を調節するために冬毛から夏毛へ、夏毛から冬毛へと、毛を生え変わらせます。それが換毛期です。毎日大量の抜け毛が発生するため、毛繕いの時に普段以上に抜け毛を飲み込んでしまい、その毛が胃や腸に溜まって毛球症になるリスクが高まります。

 

<病気を発症するリスク>

人間と同様に、冬の寒さと空気の乾燥は猫にも感染症や皮膚トラブルを発症させたり、持病の関節疾患を悪化させたりするリスクを高めます。また、寒いと飲水量が減り、トイレを我慢することも増えるため、泌尿器系の病気や便秘を起こしやすくなります。

激しい寒暖差によるストレスも、泌尿器系の病気を引き起こす引き金になりやすいです。

 

<肥満>

猫は野生時代の本能を色濃く引き継いではいますが、寒い時には丸まってなかなか動かなくなります。必然的に運動不足となり、肥満につながりやすくなります。肥満は、猫にとっても万病の元となりますので、適正体重・体型の管理は冬でも大切です。

 

猫が寒い時に見せるサイン

丸まっている猫

 

具体的な寒さ対策についてお話する前に、猫ちゃんが寒がっている時に示してくれる「寒さのサイン」について知っておきましょう。猫と人間では、心地良いと感じる温度に少し差がありますし、もちろん猫ちゃんの個体差もあります。そのため、寒がっているかどうかを様子から判断できるようになることが大切です。

 

猫ちゃんに下記のような様子が見られる場合は、寒がっている可能性が高いです。室温の設定温度見直しや、ブランケット・毛布などを出す等の対処をしてあげてください。

 

・体を丸めて動かない

・多頭飼育の場合、複数匹で集まって丸くなっている

・暖かい毛布や布団などに潜って出てこない

・食欲はあるのに水は飲まない

・ご家族の膝やお腹など体の一部に乗って離れない

 

愛猫への寒さ対策

布団に潜る猫

 

では、いよいよ具体的な寒さ対策についてお話します。基本的な考え方としては、猫ちゃんにとって適切な室温と湿度を常に一定の範囲内に維持できるようにすることです。そして、猫ちゃんがその時その時の状況に応じて、自由に「涼める場所」や「温まれる場所」に行けるようにしておくことです。

 

<室温>

猫にとっての適温は、一般的に21〜28℃といわれています。年齢や健康状態にも左右されますが、室温が21℃未満にならないように注意しましょう。暖かい空気は上に溜まります。できるだけ猫ちゃんが過ごしている場所の温度を測定できるようにしておきましょう。

また前述の通り、猫ちゃんには激しい寒暖差がストレスとなり、泌尿器系の病気を引き起こす原因となることがあります。エアコンや安全な暖房器具を活用して、猫ちゃんが普段過ごす室温はできるだけ一定に保つように管理をしてください。

 

<湿度>

高温多湿な夏とは異なり、湿度が低くなりすぎないように管理する必要があります。猫にとっての適切な湿度は50〜60%です。50%未満になってしまう場合は、加湿器等を利用しましょう。室内に濡れタオルを数枚干しておくようにしても、湿度の上昇には効果が期待できます。

室温と同様に湿度計も準備しておき、猫ちゃんの生活空間の湿度をチェックできるようにしておくことをおすすめします。

 

<涼める場所>

ご家族の留守中も、エアコン等の利用により室温は一定の温度となるようにしておくことが大切ですが、日差しなどの影響で、室内が暑くなりすぎてしまう場合もあります。その際に、猫ちゃんが自分で涼しい場所に避難できるようにしておきましょう。

たとえば、部屋のドアを開けておいて廊下や玄関などに自由に行けるようにしておくとか、エアコンのついている部屋とついていない部屋の双方を自由に行き来できるようにしておくなどの方法があります。

 

<温まれる場所>

エアコンで調整された室温だけでは寒い場合、猫ちゃんもご家族と一緒にストーブの前やこたつの中で暖を取るでしょう。

その際に気をつけていただきたいのは、火傷や熱中症です。ストーブの前でうつらうつらしていて髭や皮膚などを火傷する、こたつの中で熱中症になってしまうという事故も実際に起こっています。特にこたつに入っている時は、ご家族が時々強制的に布団を上げて冷気をこたつの中に入れるようにしてあげましょう。

また猫ちゃんだけで留守番をさせるような場合は、こたつやストーブのスイッチは切ってしまい、エアコンだけでは寒いと感じた時に潜って暖を取れるような、布団、毛布などを用意しておいてあげることをおすすめします。

 

寒さ以外の注意事項

ブラッシング

 

最後に、寒さから派生して起こる問題に対する注意事項についてもお話します。

 

<水を飲ませる工夫>

普段からあまりお水を飲みたがらない猫ちゃんも多いですが、特に冬は寒いため、いつも以上に飲水量が減ってしまうことがあります。飲水量が減ってしまうと脱水症状を起こしたり、便秘になったり、腎臓への負担が多くなったりしますので、猫ちゃんにはできるだけお水をたくさん飲んでもらうように工夫しましょう。

人肌程度のぬるま湯や、ささみの茹で汁などだと飲んでくれる場合があります。また、溜まった水は飲まなくても、流れている水だと飲んでくれる子がいて、そういう子のために水を循環させる給水器も市販されています。水道の蛇口から流れる水を飲みたがる子には、試してみると良いかもしれません。

ドライフードに猫用スープやぬるま湯をかけて与える、ドライフードの一部をウェットフードに置き換えるといった方法も、水分摂取量の増加に役立ちます。猫ちゃんの好みに合わせて、色々と工夫してあげましょう。

 

<運動>

猫ちゃん達も、「狩りをしたい」という欲求を持っています。しかし実際に狩りをする必要がないため、その欲求を満たすために、ご家族が毎日、1回10〜15分程度でかまいませんので、猫じゃらしなどのおもちゃを使って「狩りごっこ」をして遊んであげる必要があります。

しかし、冬になると寒さのために体を動かすのが億劫になり、ご家族も猫ちゃん自身も、あまり動きたがらなくなってしまうことがあります。猫ちゃんにとっても肥満は万病の元であり、百害あって一利なしです。寒くても猫ちゃんとの狩りごっこは止めないであげましょう。

 

<ブラッシングによる血行促進>

11月頃は換毛期で抜け毛が多くなる時期だというお話をしましたが、換毛期が終わっても、できるだけブラッシングはこまめに行うことをおすすめします。ブラッシングをすることで抜け毛を取り除けるだけではなく、被毛に空気の層を作り保温に貢献できますし、皮膚に心地よい刺激を与えることで血行が促進され体を温める効果も期待できるからです。

 

今回ご紹介した寒さやそれに伴う問題への対策を行うことで、猫ちゃんが今年の冬も無事に過ごし、元気に春を迎えられるようにしてあげましょう。

 

ポイント

ストーブで温まる猫

 

ポイント

・冬の寒さと乾燥は、猫への健康リスクを高めます

・猫と人間とでは快適だと感じる室温が異なります

・猫が寒がっているかどうかはしぐさや行動から判断できます

・室温が21℃を下回らず、激しい寒暖差が発生しないような管理が必要です

・室内の湿度を50〜60%の範囲内に保てるような管理が必要です

・暖房器具の使用については、火傷や熱中症等の事故への注意が必要です

・ご家族の不在時は、毛布や布団などの安全な方法での防寒対策が有効です

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