老犬や持病がある子の冬のお散歩

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老犬にも大切なお散歩

公園で笑顔の犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

暑い夏が終わりホッとしたのも束の間、日々寒い冬に向かっていますね。夏のお散歩の暑さも辛いですが、冬のお散歩の寒さも辛いですよね。

 

もともと犬は寒さに強いため、若くて元気なワンちゃんは、冬でもお散歩を楽しみにしていることでしょう。でも急に温度差の激しい寒い外気にさらされると、若くて元気なワンちゃんでも血圧や呼吸器官などにダメージを受けることがあります。ましてや体温調節がうまくできなくなってきている老犬や持病がある子は、ヒートショックから心筋梗塞や脳卒中などを起こしてしまうかもしれません。

 

しかしワンちゃんが高齢だから、または持病があるからと、全くお散歩をさせないというのも良くありません。適度な運動やいろいろな刺激を受けることで、筋力の維持や脳の活性化が期待できるからです。

 

そこで今回は、老犬や持病があるワンちゃん達が寒い冬でも安全にお散歩を楽しめるように、飼い主様に注意していただきたいポイントをご紹介いたします。

 

ただし、老化の程度や病気の種類・進行具合によっても状況が異なります。今回のブログでは、無理をさせない範囲で運動をさせた方が良いと診断されているワンちゃんを前提とさせていただきます。個々のご判断は、かかりつけの獣医師とご相談の上お決めください。

 

寒さが老犬に与える影響

ストーブで温まる犬

 

犬の平熱は人間よりも高く、38度台です。寒い外気にさらされると体温も下がります。体温が平熱より下がると、体は平熱に戻そうと反応します。そのスイッチとなるのが脳の視床下部という場所にある体温調節中枢です。冷えた血液で体温の低下を察知した体温調節中枢は、体温を上げ、その体温を逃さないようにするための司令を出すのです。

 

体温を上げるために、甲状腺から分泌されるチロキシンというホルモンを増やして体内の代謝レベルを上げ、体を震わせて筋肉を動かして発熱させます。また体温を維持させるために、血管を収縮させて血圧を上げて熱が奪われるのを防いだり、口を閉じて気化による熱の喪失を防いだりします。

 

しかし老犬や持病があるワンちゃんは、こういった体温調整や臓器の機能が低下してしまっていることが多く、ヒートショックを起こす可能性が高くなります。

 

ヒートショックとは急激な温度変化が原因で身体にダメージを受けることで、人間にもよく起こる現象です。毎年全国で1万数千人と推測されている入浴中の死亡事故の多くは、ヒートショックが原因だといわれています。

 

冬は、暖かい居間から寒いお風呂場へと移動するため、その温度差で体温を奪われないようにと血管が縮み、血圧が上がります。その状態でお湯に浸かると血管が広がり急激に血圧が下がります。この血圧の急激な変化が心臓に負担をかけて、心筋梗塞や脳卒中の引き金になるのです。

 

このヒートショックが起こる仕組みや身体が受けるダメージは、犬でも同じです。愛犬、特に体温調整機能が低下している老犬や持病がある子には、激しい温度変化を与えないことが大切です。

 

老犬の冬のお散歩の注意点

防寒着でお散歩

 

暖かい家から寒い外へ出てお散歩をさせる時に、少しでも温度差が和らぐように、下記の点に注意しましょう。

 

<いきなり外に連れ出さない>

急に寒いところに出ると、老犬や持病があるワンちゃんの体も必死に体温を下げまいと反応します。すると急激に血圧が上がるため、健康な頃よりも弱ってきている心臓には高い負荷をかけてしまいます。

こういう状況を引き起こさないように、暖かい居間から出たらしばらく温度の低い廊下で過ごし、さらに温度の低い玄関で過ごしと、少しずつ寒さに体を慣らすようにしましょう。

 

<準備運動をする>

ワンちゃんの体を寒さに慣らすために廊下や玄関でしばらく時間を過ごす際に、「オスワリ」から「タテ」そして「フセ」などを何回か繰り返すと、寒さに慣らしながら準備運動をさせることができます。

寒い外に出る前に準備運動をさせれば、関節をほぐしたり体を温めたりできます。

 

<暖かい時間帯とコースを選ぶ>

飼い主様のお仕事などによっては難しいかもしれませんが、老犬や持病があるワンちゃんの冬のお散歩は、できるだけ暖かい時間帯や日当たりの良いコースを選びましょう。

お散歩時間は、健康な頃より短くしてもかまいません。可能なら、その分回数を増やしてあげると良いかもしれません。いずれにしろ、ワンちゃんの様子に合わせて無理をさせない程度に調整しましょう。

 

<防寒着の活用>

健康なワンちゃんでも、シングルコートの犬種はお散歩で防寒着を着せることがあると思います。ダブルコートの犬種でも、老犬や持病があるワンちゃんの場合、防寒着を活用することも考えましょう。特に寒くて震えているような場合は、防寒着の着用をおすすめします。

ただし、防寒着は寒暖差を和らげるために着用させるので、帰宅したらすぐに脱がせましょう。着させたままだと皮膚トラブルの原因になることもありますし、ますます寒さへの耐性を弱めてしまうこともあります。

 

<カートでお散歩する時の注意>

自力でお散歩ができないワンちゃんの場合も、さまざまな刺激を与えたり気分転換をさせたりするために、カートに乗せてお散歩をすることをおすすめします。

カートでのお散歩は、ワンちゃん自身が体を動かさないため、体温を上げることが難しいです。そのため、防寒着やブランケット等での防寒対策が必須です。

カートから景色を見たり外のニオイを感じたりできるようにしつつも、吹き付ける冷風で体温が逃げないよう、適度な風よけ対策も考えましょう。

 

<帰宅後のケア>

帰宅した後のケアも大切です。足を拭く時に、洗面器などにワンちゃんの体温程度のお湯を張り、かかとまでを浸からせて5分程度の足湯をしてあげると良いでしょう。しっかりと乾かした後は、肉球を保湿クリームでケアするのもおすすめです。

足湯を嫌がる場合は、蒸しタオルで足先を包んであげても良いです。上から優しくマッサージをすることで、血行が良くなります。

老犬は特に血行が悪くなりやすいので、足先だけではなく肩・背中・腰を蒸しタオルで温めてあげると疲れが取れやすくなるでしょう。

 

<散歩後のお昼寝>

老犬や持病を持っているワンちゃんは、短いお散歩でも想像以上に疲れてしまうこともあります。帰宅した後にうつらうつらし始めた場合は、暖かくしてゆっくりとお昼寝をさせてあげましょう。

 

お散歩代わりの室内運動

オスワリする犬

 

持病がある小型犬の場合は、必ずしもお散歩をする必要はないと考えています。しかし、老犬や持病があるワンちゃんもお散歩で得られることは多いので、中型犬以上のワンちゃんや、小型犬でもワンちゃん自身がお散歩に行きたがっているのであれば、できるだけお散歩に行くことをおすすめします。ただし、あまりにも寒い日や悪天候の日に、無理に連れ出す必要はありません。

 

そんな日は、家の中で軽く体を動かしたり知恵を使わせたりして、お散歩の代わりにしましょう。老犬や持病があるワンちゃんにもできそうな、簡単なゲームをご紹介しますので、参考にしてみてください。

 

1つ目は、準備運動のところでもご紹介しましたが、「オスワリ」→「タテ」→「フセ」を繰り返すという遊びです。遊びながら筋肉や関節を使わせられます。

 

2つ目は、ブランケットやバスタオル、低めのクッションなどを床に並べてその上をまたがせたり歩かせたりする遊びです。これも、足の筋肉強化に役立つでしょう。

 

3つ目は、おやつを入れた小箱を隠して見つけさせる遊びです。体を動かす他に、ニオイを嗅いだり頭を使ったりさせられます。

 

同じゲームを長くやり続けるのではなく、ひとつのゲームで少し遊んだら小休止を挟んで別のゲームでまた少し遊ぶという感じで、複数を組み合わせると良いでしょう。

 

ポイント

カートでお散歩

 

ポイント

・老犬や持病がある子も、冬でもできれば散歩をさせましょう。

・体温調整機能が低下しているので、寒暖差を和らげるための工夫が大切です。

・いきなり外に出さず、寒さに慣らし、準備運動をさせてから出掛けましょう。

・なるべく暖かい時間帯に、日が当たる暖かいコースを散歩しましょう。

・防寒着を活用しましょう。

・自力で歩けない子も、防寒対策をしてカートでお散歩をさせましょう。

・帰宅後のケアで足先や体を温めましょう。

・お散歩後に疲れてうとうとしている場合は、静かにお昼寝させましょう。

・寒さが厳しい日や悪天候の日は、無理せず室内でゲームをして遊ばせましょう。

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