寒さに弱い犬種の特徴と寒がりでも快適に過ごせる室内環境管理

ペットの健康としつけ

寒さサインを見逃さない!

イタリアングレーハウンド

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

今年も、よろしくお願いいたします。

 

年が明け、寒さに震える日が増えてきました。寒いと震えるのは、人間だけではありません。ワンちゃんも同じで、体温を下げないように筋肉を震わせて熱を作り出しているのです。震えは、最もわかりやすい寒さのサインです。

 

他にも、水を飲む量がいつもより少なかったり、隅の方で体を小さく丸めていたり、布団などの暖かい場所に潜り込んでいたり、飼い主様や他の動物のそばにくっついて離れようとしなかったりしていたら、寒さのサインとして受け止め、防寒対策を施してあげましょう。

 

一般的に、犬は人よりも体温が高いため、寒さにも強いと言われています。しかし実際は、犬種によって寒さへの強さが異なります。次の章では、寒さに弱いと言われている犬種の特徴を、具体的に見ていきましょう。

 

寒さに弱いのはこんな犬

ミニチュアピンシャー

 

◯被毛

被毛の毛質には、主に2つの観点があります。1つは構造で、オーバーコート(上毛)一層のみのシングルコートと、オーバーコートとアンダーコート(下毛)の二層になっているダブルコートです。そしてもう1つの観点は、長いか短いかという毛の長さです。

 

1つ目の観点で見ると、柔らかくて短い毛が密になっているアンダーコートを持たないシングルコートの犬は、寒さに弱いです。2つ目の観点で見ると、短毛の犬が寒さに弱いです。どちらか一方でも寒さに弱いですが、短毛でシングルコートと2つの条件が重なると、さらに寒さには弱くなります。

 

例えばチワワの場合、同じ犬種でも短毛、長毛、シングルコート、ダブルコートといった毛質が混在しています。そのため、ダブルコートよりもシングルコートの方が、長毛よりも短毛の方がより寒さに弱いといえるでしょう。

 

◯原産国

犬種ごとに原産国が異なります。そしてそれぞれの地に適応した体の作りになります。そのため、暑い地域が原産国の犬種は、寒さには弱いです。

 

これは寒さだけに限りません。一年を通して同じような気候の地域が原産の犬種は、日本のように四季の変化がある地域で暮らすのは大変なため、飼い主様による暑さや寒さへのサポートが欠かせません。

 

◯体格

寒い地域で暮らす動物たちの体格は、総じて大きいです。逆の見方をすると、体格の小さい動物は、寒さに弱いと言えます。これは、体格が小さいと体積に対して表面積が広くなるため、体から熱が放散されやすいからです。つまり犬の場合、大型犬よりも中型犬、中型犬よりも小型犬や超小型犬と体格が小さくなるにつれ、寒さにも弱くなっていくといえます。

 

◯体脂肪率

人間の場合も同じですが、体脂肪率が少ない犬種は寒さに弱いです。脂肪には断熱効果があるため、極端に体脂肪率が低いと、寒さに対する耐性が低くなってしまうのです。

 

◯年齢や健康状態、生活習慣

同じ犬でも、年齢によって寒さへの強さが変化します。若い頃はまだ成長過程で体温調節が上手にできません。また、加齢により筋肉が落ちたり体温調節が鈍ってきたりしたシニア犬も、寒さに弱くなります。持病を抱えている場合も同様です。

 

さらには、あまり外に出ることなく暖かい室内でばかり暮らしている犬も、外で暮らしている犬と比べると寒さに弱くなります。このように、特に寒さに弱い犬種ではなくても、年齢や健康状態、生活習慣によって寒さへの対応能力が変わることも知っておきましょう。

 

寒さに弱い犬の室内環境

寒くて離れないチワワ

 

◯冬でも快適な温湿度管理

犬にとって快適に過ごせる温度は、20℃〜24℃程度です。冬の寒い時期は、室内も気温が下がるため、小型犬であれば23℃、大型犬であれば20℃を目安に調整すると良いでしょう。合わせて、湿度も50%を目安に調整してください。極度の乾燥はウイルスの活動を活発にさせると同時に、皮膚や粘膜のバリア機能を低下させてウイルスを体内に侵入させやすくしてしまうためです。

 

もちろん上記はあくまでも目安です。目の前のワンちゃんの様子をよく観察し、寒さのサインを出していないか、逆に暑がっていないかを判断しながら個別に調整してください。

 

なお、暖房器具を使用すると空気が乾燥します。脱水症状を避けるために、いつでも新鮮な水が飲めるようにしておきましょう。

 

◯リスクの少ない暖房器具選び

暖房器具にもさまざまな種類があり、それぞれにメリットやデメリットがあります。多くの場合、メインの暖房器具はエアコンだと思います。しかし、エアコンだけで完全に防寒対策ができるわけではありませんので、ヒーターや湯たんぽ、発熱マットなどの補助的な暖房器具や防寒グッズも活用し、上手にワンちゃんの防寒対策を行いましょう。

 

特に気をつけたいリスクは、停電、感電、火傷です。停電対策としては、必ずワンちゃんの寝床などに毛布やブランケットなどのリンネル類を常備しておくと良いでしょう。

 

感電リスクとしては、飼い主様のご不在時にはプラグを抜いてコードを触れないように片付けておく、湯たんぽなどの非電化製品を使用するといった方法があります。

 

火傷対策としては、ストーブの周囲を柵で囲う、湯たんぽはカバーをつけて使用する、温度が人用よりも低く設定されているペット用のヒーターを利用するといった方法が良いでしょう。

 

◯冬の熱中症対策

「冬なのに熱中症?」と思われるかもしれませんが、意外と陥りやすいのが冬の熱中症です。特に飼い主様のご不在時や就寝時には、室内が暑くなり過ぎてワンちゃんが熱中症になるという事故が少なくありません。

 

対策としては、ワンちゃんが自分の意思で温度調節できるようにしておくことです。

 

室内で自由に行動させる場合は、暖房の効いた部屋と涼しい廊下や玄関に行き来できるようにしておくと良いでしょう。ケージ等で過ごさせる場合は、あまり暑くし過ぎないようにしておき、寒い時には自分の意思で毛布などに潜れるようにしておくと良いでしょう。

 

◯寒くても大切な換気

暖房をしていても、定期的に換気を行いましょう。室内の空気は、ハウスダストや持ち込まれたウイルスなどで汚れています。この汚れた空気を外に出し、新鮮な空気を取り込めるのが、換気のメリットです。

 

また換気をすることで、呼吸や調理、加湿器などの影響で室内に溜まった水蒸気を外に出すこともできるため、結露を防止してカビなどの増殖を防ぐことにもつながります。

 

◯寒暖差を減らすための工夫

暖かい場所から寒い場所に、また寒い場所から暖かい場所に移動すると、その温度差で血圧が急激に変化して体に大きな負荷をかけてしまいます。その差があまりにも大きいと、ショック症状を起こすこともあります。そのため、寒暖差をできるだけ小さくする工夫も大切です。

 

室内で特に気をつけたいのは、就寝中です。明け方の冷え込みにワンちゃんが自ら対応できるよう、寝床には必ず毛布などを置いておき、いつでも自由に使えるようにしてあげましょう。

 

また散歩に出る前には、身体を徐々に低温に慣らしたり準備運動をしてから外に出るとか、外では防寒着や防寒ブーツを着用させたりするといった対策を行いましょう。

冬の散歩については、以前書いたこのブログも参考になさってみてください。

<冬のお散歩で注意していただきたいこと>へのリンク

 

寒さに弱い犬種ランキング

布団に潜るバセンジー

 

◯1.イタリアングレーハウンド

イタリアングレーハウンドは、小型犬、短毛、シングルコート、体脂肪率が低いと、寒さに弱い犬種の特徴を4点も揃え持っている犬種です。室内環境には十分に配慮をしてあげましょう。また真冬に限らず、防寒対策として、風を通さない素材や裏地にフリースが使用されているようなジャケットや防水性と耐熱性の高いブーツの着用が効果的です。

 

◯2.ミニチュアピンシャー

ミニチュアピンシャーも、小型犬、短毛、シングルコート、スリムといった点で寒さに弱い犬種の特徴が揃っています。室内環境への配慮や外出時の防寒着など、イタリアングレーハウンド同様のサポートが必要です。

 

◯3.チワワ

前述したように、チワワの毛質は個体によってさまざまですが、短毛とシングルコートの毛質を除いても、超小型犬、メキシコ(暑い地域)原産といった要素を持っているため、寒さに弱い犬種だといえます。

 

◯4.バセンジー

バセンジーは、コンゴ共和国(暑い地域)原産であり、短毛でシングルコートという3条件が揃っており、前者3犬種に次いで寒さに弱いと考えても良い犬種でしょう。中型犬だからと安心せずに、室内環境管理や散歩時の防寒対策をしっかり行いましょう。

 

◯5.トイ・プードル

日本でも長く人気犬種の上位にいるトイ・プードルも、寒さに弱い犬種です。寒さに弱いポイントとして、超小型犬、シングルコートであることに加え、毛の密度が少ないという点が挙げられます。外見からはあまり寒さに弱そうに見えないかもしれませんが、バセンジー同様に寒さに弱いことを意識してサポートしてあげましょう。

 

ポイント

毛布を被るトイ・プードル

 

・愛犬が見せている寒さのサインを見逃さないようにしましょう

・被毛、原産国、体格、体脂肪率、年齢、健康状態等で寒さに弱い犬種を判断できます

・室温の目安は大型犬=20℃、小型犬=23℃です

・湿度の目安は50%です

・リスクの少ない暖房器具を選びましょう

・冬でも熱中症は起こります

・寒くても適宜換気を行うと共に、できるだけ寒暖差を小さくするように工夫しましょう

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