春先になると増えてくる犬の皮膚トラブルの傾向とその対策

ペットの健康としつけ

春が皮膚に与える影響

春の野を散歩する犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

寒くて空気が乾燥する冬が終わり、ようやく暖かい日が増える春先になると、皮膚にトラブルを抱えたワンちゃんの来院が増えます。冬は空気が乾燥するため肌のバリア機能を低下させることをご存知の飼い主様は多いと思います。それなのに、なぜ冬が終わった後に皮膚トラブルが増えるのかと、不思議に思われるかもしれません。

 

確かに、春になると徐々に暖かくなり、空気の乾燥も和らいできます。しかし、春特有の環境が原因で、皮膚に良くない刺激を与えてしまうのです。皮膚トラブルを引き起こす春特有の原因として、3つの要素が挙げられます。

 

1つ目は、偏西風に乗って大陸から飛んでくる黄砂や飛散量が増えるスギ花粉などのアレルゲンの増加です。2つ目は、暖かくなって活動が活発になるノミやダニの存在です。そして3つ目が、紫外線の増加や季節の変わり目特有の寒暖差や湿度の変化といった刺激により引き起こされる乾燥肌です。

 

これらの原因別に現れる皮膚トラブルとその対策について、ご説明していきます。

 

アレルギーによる皮膚炎

痒くて掻き続ける犬

 

花粉やハウスダストなどの環境に存在する特定の物質に対するアレルギー反応により生じる皮膚炎(アレルギー性皮膚炎)は、人だけではなくワンちゃんにも多く見られます。アレルギー性皮膚炎の原因となる物質をアレルゲンと言いますが、何がアレルゲンとなるかは、ワンちゃんによってさまざまです。春になると空気中にたくさん飛散するスギなどの花粉や黄砂に反応するワンちゃんも多いです。

 

これらのアレルゲンを吸引したり皮膚に付着させたりすることで、アレルギー性皮膚炎が発症します。主な症状はかゆみです。特に強いかゆみが出る部分は、耳、脇、股、足先、口、目の周りなどです。

 

アレルギー性皮膚炎の場合、ワンちゃんはかゆがってこれらの部分をしきりに掻いたり舐めたり噛んだりするようになります。気付かずにそのままにしてしまうと、脱毛したり皮膚が赤くなったり、はっきりとした発疹が現れたりします。

 

かゆみは、ワンちゃんの生活の質を低下させます。またひどくなると、かゆみに加えて痛みも出、ワンちゃんはとても辛い思いをしながら過ごさなければなりません。様子を見過ぎて症状が悪化してしまう前に、かかりつけの動物病院に連れて来てください。

 

アレルギー反応を消失させることはできませんので、治療としては、かゆみをコントロールすることになります。症状に合わせて薬剤等で痒みを抑えていきます。

 

同時に、住環境からアレルゲンを排除することも大切です。シャンプーやブラッシングで皮膚に付いたアレルゲンを除去するだけでなく、こまめな掃除や換気で室内に入り込んだアレルゲンを排除しましょう。散歩中の洋服着用で、アレルゲンの付着を防ぐことが有効な場合もあります。

 

ノミやダニによる皮膚炎

犬に寄生したダニ

 

昔と違って清潔な環境を維持することに熱心な飼い主様が増えてきている現在でも、ノミやダニに寄生されてしまうワンちゃんは少なくありません。ノミもダニも目で見ることができる大きさの小さな虫で、屋外でも室内でも感染するリスクがあります。

 

ノミは13℃以上であれば活発に活動するだけではなく、卵から孵化することもできてしまいます。ダニも同じように、15℃以上で活発に活動するようになります。今はエアコンで一年中室内が暖かいため、ノミやダニによる皮膚炎の可能性は1年を通して高いリスクなのですが、春先になると外でも活発に活動するようになるため、お散歩中にノミやダニがワンちゃんの体に飛び付いて寄生してしまうリスクが増えるのです。

 

ノミやダニに寄生されると、ワンちゃんは激しいかゆみや刺激に悩まされます。また、ノミやダニが媒介する病気に感染してしまうこともあります。そのリスクはワンちゃんだけではなく、一緒に暮らしておられるご家族の皆様も同様です。屋内における対策が万全だとしても、春以降は外からノミやダニを屋内に持ち込まないようにさせることも意識してください。

 

その上で、感染をより確実に防ぐために欠かせないのが、定期的にノミやダニを駆除するお薬を飲ませることです。それぞれの地域の気候に合わせて、ノミやダニが活動している期間を通して薬を定期的に飲ませることが大切ですが、冬の室内の温度の高さも考えると、1年を通して飲ませることが望ましいご家庭も多いと考えています。

 

ノミやダニの対策については、以前のブログも参考にしてみてください。

<犬猫のノミ・ダニ対策>へのリンク

 

乾燥が引き金となる皮膚炎

犬のフケ

 

冒頭でご説明したように、季節の変わり目の激しい寒暖差や増えた紫外線といった春先特有の刺激を受け、ワンちゃんは乾燥肌になりやすく、それが原因で皮膚のバリア機能が低下しがちです。そこにスギ花粉や黄砂、ノミやダニといった刺激が加われば、皮膚トラブルが発生しやすくなっても何の不思議もありません。

 

乾燥が引き金となる皮膚炎の初期症状は、フケの増加や軽いかゆみです。さらに進行していくと、毛並みの艶がなくなり、皮膚からの出血が見られ、かさぶたができ、傷口から感染した細菌や真菌による炎症が生じるといった、より重い症状に進んでいきます。

 

乾燥性の皮膚炎を予防するためには、ブラッシングによる表面の汚れの除去や毛玉による蒸れを予防し、体が濡れた後はタオルとドライヤーによる乾燥を十分に行った上で、保湿剤を使用して皮膚の乾燥を防いでください。ワンちゃんの健康状態や皮膚の状態によって、現れる症状もさまざまです。少しでも心配な症状が見られたら、できるだけ早くかかりつけの動物病院に連れて来てください。

 

犬のスキンケアのポイント

犬のブラッシング

 

ワンちゃんのスキンケアを行う際のポイントをまとめると、下記になります。ご家庭の環境によっても受ける刺激が異なりますので、ワンちゃんの皮膚の状態をよく観察し、状態に応じて下記のポイントに気を配りながら日々のケアを行ってみてください。

 

<ブラッシングおよびシャンプー>

アレルゲンや寄生虫、汚れなどを除去するために、常に清潔な状態を維持しながら肌のコンデイションを整えましょう。清潔さが大切だと言っても、過剰なシャンプーは必要な皮脂まで落としてしまうため、かえって皮膚にマイナスの影響を及ぼします。通常の場合、ワンちゃんのシャンプーは月に2回程度が目安です。ただし、ブラッシングはまめに行いましょう。

 

<適切な食事>

健康な皮膚も、食事から作られます。ワンちゃんの年齢や健康状態、皮膚の状態に合った、適切な栄養バランスの食事を適切な量だけ食べさせるようにしましょう。良質な材料を使った総合栄養食のドッグフードを適切な保管状態で管理し、開封したらできるだけ新鮮なうちに食べ切らせるということも大切な食事管理の一環です。

 

<適切な住環境づくり>

花粉、黄砂、ノミ、ダニなどを屋内に持ち込まない、溜め込まないことが大切です。こまめな掃除、換気、適切な温湿度管理を心がけ、布製品はこまめな洗濯も忘れないでください。

 

<飼い主様の生活変化によるストレスにも要注意>

春先は、飼い主様やそのご家族の生活が変化する季節でもあります。入学、卒業、就職、転職、転勤、退職など、さまざまな生活の転換期が春に起こりやすく、それに伴う飼い主様のライフスタイルの変化は、そのままワンちゃんのストレスにつながります。ストレスは免疫力を低下させ、ワンちゃんの皮膚トラブルをより進行させてしまう要因になりかねません。飼い主様のライフスタイルが変わった場合は、ワンちゃんへのストレスケアも忘れずに行ってあげてください。

 

ポイント

海岸を走る毛並みの美しい犬

 

・春先は、犬の皮膚トラブルが増える傾向があります

・春先の皮膚トラブルの原因は下記の3つです

 ≫飛散する黄砂やスギ花粉などのアレルゲンとなる物質が増える

 ≫暖かくなることでノミやダニの活動が活発になる

 ≫増えた紫外線や激しい寒暖差による刺激を受けると乾燥肌になりやすい

・春先のワンちゃんのスキンケアのポイントは下記の4つです

 ≫ブラッシングや定期的なシャンプーで皮膚の清潔さを維持する

 ≫適切な食事で健康な皮膚づくりをサポートする

 ≫屋内の住環境をワンちゃんに適切な環境に維持できるよう管理する

 ≫飼い主様の生活変化で受けた愛犬のストレスをケアする

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