犬猫のノミ・ダニ対策

ブログ

みつけても潰さないで!

シャンプーされる犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

前回のブログで、ワンちゃんや猫ちゃんの体の中に寄生するフィラリアについてお話をしました。今回は、体の表面に寄生するノミやダニについてお話したいと思います。ノミやダニは、とても身近なところに生息し、犬や猫、人に寄生して血を吸うことで栄養を摂り、繁殖している寄生虫です。

 

ノミの多くはネコノミです。名前にはネコが付いていますが、猫だけではなく犬や人にも寄生します。2〜3mmほどの大きさなので、小さいですが目で確認することもできる大きさです。ダニにはヒゼンダニ、ニキビダニ、ミミヒゼンダニ、マダニなどがおり、やはり犬にも猫にも人にも寄生します。

 

ヒゼンダニやニキビダニは1mm未満で小さく、目視での確認は難しいですが、マダニは2〜3mmで、吸血後にはさらに大きく膨らむため、目視でしっかりと確認できる大きさです。

 

ブラッシング中などにノミやマダニを確認できた場合、つい指や爪、またはピンセットなどで潰したり、引っ張って取り払ったりしたくなるかもしれません。しかし、それはとても危険な行為なのでやめてください。

 

ノミの場合は、体内の卵が大量に散乱したり、ノミに寄生していた瓜実条虫(サナダムシ)が潰した人に感染したりすることがあります。ダニの場合は、体は取れても口の部分がワンちゃんや猫ちゃんの体内に残ってしまい、それが原因で炎症を起こしたりダニの血液が逆流して感染症を引き起こしたりすることがあります。こういった事態を避けるために、ノミやダニを潰したり無理に引き剥がしたりしてはいけないのです。

 

ノミの弱点は水です。犬猫それぞれ専用のシャンプーを使用して、入浴またはシャンプーをすることでノミを取り除けます。犬の皮膚は弱アルカリ性、猫の皮膚は中性、人の皮膚は弱酸性と、それぞれpHが異なりますので、くれぐれもワンちゃんには犬用の、猫ちゃんには猫用のシャンプーを使ってください。

 

ダニの場合は、みつけたらそのまますぐに動物病院に連れて来てください。くれぐれも、素手やピンセットなどを使って引き剥がそうとしないことです。

 

ノミの感染

ノミ

 

ノミに血を吸われると、犬も猫もとても激しいかゆみを感じます。中には、ノミの唾液でアレルギー反応を起こす犬や猫も少なくはありません。もしもワンちゃんや猫ちゃんがしきりに体中のあちらこちらをかゆがって掻きむしるような行動を見せる場合は、ノミの寄生を疑うべきでしょう。

 

ノミは目視できる大きさですが、光を避けて被毛の奥に隠れてしまうため、ノミを直接見つけるのは難しいかもしれません。そのため、ワンちゃんや猫ちゃんがしきりにかゆがっている時は、ノミの糞を探してください。毛をかき分けたところに黒い砂粒のようなものが付いていたら、濡れたティッシュに乗せてみましょう。濡れた部分が赤くなったら、それはノミの糞です。血液の成分で赤くなるのです。

 

ノミの糞を見つけたら、前述のシャンプーで応急措置を行い、動物病院に連れてきてください。しっかりと駆除した上で、継続的に予防を行いましょう。お家の中をこまめに掃除することで、生活環境からノミや卵を徹底的に排除することが大切です。

 

特にノミの卵は、13℃以上あれば孵化してしまいます。室内は、暖房により冬でも暖かく、13℃以上あるご家庭がほとんどでしょう。ノミの卵は、最長6ヶ月後に孵化します。ノミを室内に侵入させてしまった場合、最低6ヶ月間はノミの駆除薬を使わないと、完全な排除は行えないということです。

 

なおノミは、前述の瓜実条虫だけではなく、バルトネラ菌も媒介します。バルトネラ菌に感染しても、ワンちゃんや猫ちゃんは無症状です。しかし感染したワンちゃんや猫ちゃんに引っ掻かれたり噛まれたりすると、その傷から人に感染します。人がバルトネラ菌に感染すると、傷口が化膿したり発熱、リンパ節の腫脹といった症状が引き起こされたりしますので、注意が必要です。このバルトネラ菌の感染症は、寒くなって猫と一緒にいる時間が増える秋から冬にかけての感染が多く、猫ひっかき病と呼ばれています。

 

ダニの感染

マダニ

 

ダニが寄生したワンちゃんや猫ちゃんは、寄生された箇所の刺激により精神が不安定な状態になります。特に顔や耳に寄生されたときにはしきりに頭を振ったり耳を掻いたりするため、分かりやすいでしょう。ワンちゃんの場合は、肉球の間に寄生することも多いです。肉球の間に寄生した場合は、寄生された足をかばうようにして、引きずるような歩き方になることもあります。

 

マダニの場合は目視で虫本体を確認できますので、上記のような様子や、体に寄生しているマダニの本体を見つけた場合は、すぐに動物病院に連れて来てください。しつこいようですが、くれぐれも無理にマダニを引き剥がそうとはしないでください。

 

特にマダニは、人にも感染する多くの病気を媒介します。近年特に問題視されているのは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)です。SFTSは致死率が高く、猫で60〜70%、犬で29%、人で6.3〜30%です。マダニに感染した猫に噛まれてSFTSを発症し、死亡した例もあり、マダニから直接感染するだけでなく、ワンちゃんや猫ちゃんからの感染も否定できません。

 

マダニが媒介して人にも感染する病気には、他にもバベシア症、日本紅斑熱、Q日本紅斑熱、ライム病、エールリヒア症などがあります。特にワンちゃんと一緒に暮らしている飼い主様は、お散歩の際に、ご自身もマダニに咬まれないような服装をし、帰宅後にワンちゃんの足先や全身のチェックをしっかり行うようにしてください。

 

ノミ・ダニの予防

耳を掻く猫

 

ノミやダニに寄生されると、ワンちゃんや猫ちゃんは激しいかゆみや刺激に悩まされ、非常につらい思いをします。またノミやダニが媒介する病気にかかることもあります。それは飼い主様も同じです。つまり、ワンちゃんや猫ちゃんだけではなく、飼い主様やそのご家族の健康のためにも、ノミやマダニをお家の中に持ち込まない、感染させない、ご自身も感染しないことが大切なのです。

 

寄生虫の感染を防ぐためには、その寄生虫のライフサイクル(生活環)を知り、そのサイクルを断ち切ることが大切です。ノミやダニの生活環に関しては、以前のブログで詳しくお話をしていますので、ぜひそちらも読んでみてください。

<犬や猫に寄生するノミやダニ その種類と予防薬>へのリンク

 

ノミ・ダニの予防薬とは、正確には感染したノミやダニを駆除するお薬です。感染を100%防ぐことはできないため、感染したノミやダニを駆除するのが予防の基本になるのです。

 

そのため、ワンちゃんや猫ちゃんをノミやダニから守るためには、いつ寄生されてもそのノミやダニをしっかりと退治することが大切になります。そのため、ノミやダニが活動している期間を通して、薬の有効期限に合わせて定期的に投薬し続けることが何よりも重要です。

 

ワンちゃんや、特に猫ちゃんはお薬を飲ませるのが難しい場合が多いので、そういった子にも確実に投薬できる薬や、生活習慣に合わせて駆除できる寄生虫の種類などを意識して薬を選ぶ必要があります。

 

そして、最近特に意識したいのは、薬に対する耐性の問題です。同じ薬を長い間使い続けていると、病原体がその薬に対する耐性を身につけてしまうというものです。ノミ・ダニの駆除薬では、フィプロニルという成分が該当します。垂らすタイプの駆除薬として広く普及しているフロントラインというお薬の成分が、フィプロニルです。このお薬は、横須賀・三浦地区では20年以上前から使われていて、とても実績が高いです。その反面、横須賀・三浦地区のノミやダニは、フィプロニルに対する耐性を身につけてしまいました。

 

そこで、当院ではフロントラインに変わる垂らすタイプの駆除薬として、まだ耐性がないイミダクロプリドという成分のお薬、フォートレオンをおすすめしています。

 

また垂らすタイプのお薬の場合は、なかなか全身に行き渡りづらいという問題も持っています。投薬後にワンちゃんや猫ちゃんがお薬を舐めないように、肩甲骨の間に垂らすのですが、そうするとなかなか足先や耳などには薬が行き渡りづらいのです。

 

そこで、ダニがたくさんいる場所に行かれることのあるワンちゃんには、食べるタイプのお薬をベースに飲んでいただき、さらに垂らすタイプのフォートレオン、またはフロントラインスプレーを足先や腹部、耳などに付けてからお出かけして頂く方法をおすすめしています。

 

なお、ノミ・ダニの駆除薬については、以前書いた下記のブログも参考にしてください。

<ノミ・ダニの薬 食べる?垂らす?>へのリンク

 

ポイント

耳を掻く犬

 

ポイント

・ワンちゃん、猫ちゃん、飼い主様すべての健康のために、ノミ・ダニの予防は大切です。

・ノミをみつけたら、潰さずにシャンプーで応急措置をし、動物病院に連れて来てください。

・ダニをみつけたら、引き剥がそうとせずにすぐに動物病院に連れて来てください。

・ノミ・ダニを駆除したら、お薬での継続的な予防が大切です。

・ダニがたくさんいる場所に出かける場合は、食べるタイプのお薬による基本の予防に加えて、垂らすタイプのお薬で二重のガードをおすすめします。

・横須賀・三浦地区の場合、薬の耐性を考慮して、垂らすタイプの予防薬はフォートレオンをおすすめしています。

このページをシェアする

カテゴリー