こんなワンちゃんにはたっぷり運動を!
必要な運動量の判断基準
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
心身の健康のためには、どんなタイプのワンちゃんにも適度な運動が必要不可欠です。体が大きければ、それだけたくさんの筋肉を維持するために多くの運動が必要です。しかし、小型犬ならお散歩が少なくて良いというわけでもありません。
必要な運動量に大きな影響を与える体の作りや習性は、そのワンちゃんの祖先となる犬の血統で決まります。今回は、たっぷり運動をさせたいのはどのようなワンちゃんなのかについてお話しします。
犬種の分類
犬種特性を大まかに把握するため、国際畜犬連盟(FCI)の犬種分類をご紹介します。
◯第1グループ|牧羊犬・牧畜犬(家畜の群れの誘導や保護)
ボーダー・コリー、シェットランド・シープドッグ、ウェルシュ・コーギー・ペンブロークなど
◯第2グループ|使役犬(番犬、家畜の警護、闘犬、害獣退治など)
ミニチュア・ピンシャー、ドーベルマン、ブルドッグ、グレート・デーン、土佐など
◯第3グループ|テリア(地中の巣穴に潜った小獣を追う猟犬)
ジャック・ラッセル・テリア、ヨークシャー・テリアなど
◯第4グループ|ダックスフンド(地中の小獣猟、撃たれた獲物の血跡を追跡する猟犬)
カニーンヘン・ダックスフンド、ミニチュア・ダックスフンドなど
◯第5グループ|原始的な犬・スピッツ(スピッツ、原始的な猟犬など)
柴、秋田、ポメラニアン、日本スピッツ、シベリアン・ハスキー、チャウ・チャウなど
◯第6グループ|嗅覚ハウンド(嗅覚で捉えた獲物を追跡する猟犬)
ダルメシアン、ビーグル、バセット・ハウンドなど
◯第7グループ|ポインター・セター(ハンターに獲物の位置を知らせる鳥猟犬)
アイリッシュ・セター、ワイマラナー、イングリッシュ・ポインター、など
◯第8グループ|レトリーバー、スパニエル、ウォーター・ドッグ(獲物の回収や追い立てを行う鳥猟犬)
ラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、コッカー・スパニエルなど
◯第9グループ|愛玩犬(人の感情のニーズに応える伴侶犬)
パピヨン、チワワ、プードル、マルチーズ、ビション・フリーゼなど
◯第10グループ|視覚ハウンド(視力と走力で獲物を追跡する猟犬)
イタリアン・グレーハウンド、ボルゾイ、アフガン・ハウンドなど
上記のグループ(以下Gp)で考えると、広い草原を走り回る牧羊犬(第1Gp)、遠くにいる獲物も執拗に追いかける嗅覚ハウンド(第6Gp)、獲物の回収・追い立てなどでハンターを助ける猟犬(第8Gp)、巣穴に潜って獲物を追う猟犬(第3、4Gp)には、多くの運動が必要な犬種が多いといえるでしょう。
運動量が必要な大型犬
体への負担が大きい大型犬に肥満は禁物です。維持すべき筋肉量も多いので、基本的に多くの運動が必要です。1回1時間程度の散歩を1日に2回は行いましょう。大型犬の中でも特に多くの運動を必要とする犬種をご紹介します。
<ラブラドール・レトリーバー>
遊び好きで活動性が高く、ボールを投げて持ってこさせる遊びなども取り入れ、たっぷり運動をさせましょう。水辺で狩をしていたので、プールや川での水遊びもおすすめです。
<ダルメシアン>
ディズニー映画「101匹わんちゃん」でお馴染みの犬種です。軍用犬だった時代もある猟犬で、とても筋肉質で長距離も走れる体力抜群のドッグスポーツにおすすめの犬種です。
<アイリッシュ・セター>
遊び好きで活動性が高く、多くの運動を必要とするワンちゃんです。人懐こくて訓練性も高いので、この犬種もドッグスポーツに向いています。
ダルメシアンのような筋肉質の犬種を除き、大型犬に激しい運動はおすすめできません。例えば、散歩の時間を短くして代わりに激しい運動をさせるというのは考え物です。時間と距離を長めに取り、ゆっくり歩かせるのが理想の散歩です。
運動量が必要な中小型犬
◯中型犬
<ボーダー・コリー>
活動性の高さでは群を抜いています。牧羊犬としての能力を求められて改良されてきたため、今では世界的にスポーツドッグとして人気の犬種となりました。
<シェットランド・シープドッグ>
牧羊犬らしい活動性が高くて遊び好きな犬種です。かつてはコリーの小型版として人気でしたが、大きな声でよく吠えるため、最近ではあまり姿を見かけなくなりました。
<ウェルシュ・コーギー・ペンブローク>
牧羊犬らしく活発で遊び好きな犬種です。スタミナがあるので毎日しっかりと運動させましょう。人気犬種ですが、運動の時間をしっかり取れないご家庭には向きません。
<ビーグル>
漫画「ピーナッツ」のスヌーピーのモデルとして有名な犬種です。家庭犬としてもよく見かけますが、猟犬の特性が強く残っています。大食いで太りやすいため、食事管理も大切です。
◯小型犬
<ミニチュア・ピンシャー>
農場で何でも屋として活躍していた犬種で、特にネズミ捕りが得意でした。華奢に見えますが、筋肉質で活動的です。小型犬の一般的な散歩内容では満足できないでしょう。
<ジャック・ラッセル・テリア>
非常に活動性が高く遊び好きな犬種です。とても気が強いため、忍耐力がありしっかりとしつけられる飼い主様向けです。心が通じ合えば、ドッグスポーツに高い能力を発揮します。
<カニーンヘン・ダックスフンド>
遊び好きで活動性の高い犬種です。ダックスフンドの中で最も小さいけれど、攻撃性が最も高くてエネルギーが有り余っています。しっかり運動させてストレス発散させましょう。
<パピヨン>
小型で愛くるしい愛玩犬ですが、活動性が高くしっかり運動させる必要があります。スポーツ万能なので、アジリティ競技に参加できる小型犬を探している飼い主様におすすめです。
個別の調整を忘れずに!
今回は、たっぷりと運動させる必要のあるワンちゃんを、犬種特性を中心にご紹介しました。しかし忘れてならないのは、個々のワンちゃん毎に適切な調整が必要だということです。
運動に耐えられる体力は、年齢やその時々の健康状態などにも大きく影響されます。教科書通りに考えず、常に愛犬を観察し、その時々の適切な運動量を飼い主様が調整なさってください。
散歩から帰った後も元気で遊びをせがむようであれば、運動量が少なすぎるのかもしれません。お散歩中に息が荒くなってハァハァと舌を出したりよだれを垂らしたりし始めた場合は、疲れすぎかもしれません。
散歩から帰った後、うとうととまどろむ程度がちょうど良い運動量です。普段の様子をよく見て、その子にあった基本の散歩量を見極めましょう。
ポイント
・どんな犬でも運動は必要です。
・運動量は、体格の他に犬種特性も考慮する必要があります。
・犬種のグループ分類は適切な運動量を検討する際の参考になります。
・特に筋肉質ではない大型犬の場合、激しい運動は禁物です。
・小型の愛玩犬にも多くの運動を必要とする犬種があるため注意が必要です。
・愛犬の様子をよく観察し、飼い主様が適宜最終的な運動量を調整しましょう。