しっかり予防すれば怖くない、犬や猫のフィラリア症

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

前回は、犬や猫の外部寄生虫であるノミやダニについてのお話をさせて頂きました。

今回は、犬や猫の内部寄生虫であるフィラリアについてお伝えしたいと思います。

そろそろ蚊が活動を始める時期ですので、このブログをお読みになり、愛犬や愛猫をフィラリアから守るための参考にして頂けたらと思います。

 

 

フィラリアは、犬糸状虫とも呼ばれており、その名の通り糸のように細長い形状の内部寄生虫です。

蚊に刺されることで感染し、アカイエカ、ヒトスジシマカ(ヤブカ)、チカイエカなど、日本にはフィラリアを媒介する蚊が約16種類いると言われています。

フィラリアと聞くと、犬の病気だと思われる方が多いようですが、犬だけではなく、猫にも感染します。

 

フィラリアの成虫は大きく、オスでは約17cm、メスでは約28cmになります。

色が乳白色なので、ソーメンのような形状だと思えば良いでしょう。

 

前回、犬や猫の外部寄生虫のお話をしました。

その際、寄生虫の生活パターンのことを生活環と言い、感染予防のためには生活環のいずれかの箇所を断ち切ることが大切だとお伝えしました。

それは、内部寄生虫に対しても同じです。

まずは、フィラリアの生活環についてご紹介します。

 

〈フィラリアの生活環〉

フィラリアの生活環は、下記の1)~5)の循環になります。

なお、フィラリアの繁殖に適しているのは犬の体内なので、下記の生活環も宿主を犬として記載しています。

 

1)蚊が、5)の状態になった犬の血を吸うことで、感染犬の血液中にいるミクロフィラリアが蚊の体内に移行します。ミクロフィラリアは0.2~0.3mm程度の大きさです。

 

2)ミクロフィラリアは、蚊の体内で第1期幼虫→第2期幼虫→第3期幼虫(感染幼虫)へと成長します。感染幼虫は1~2mm程度の大きさで、成長に要する期間は2週間程度です。

 

3)体内に感染幼虫を持っている蚊が健康な犬の血を吸うことで、感染幼虫が犬の体内に移行します。感染幼虫は、犬の皮下や筋肉内等で70日をかけて第4期幼虫(2~20mm)→第5期幼虫(20~40mm)に成長し、静脈系から右心室や肺動脈に移動します。

 

4)幼虫は、右心室で90日をかけて未成熟虫(30~60mm)→フィラリア成虫(120~300mm)に成長し、ミクロフィラリアを産みます。ミクロフィラリアの産出が始まるのは、感染後7ヶ月目です。なお、フィラリア成虫の寿命は5〜6年です。

 

5)ミクロフィラリアは血液中に放出されて、犬の全身に広がります。

 

この生活環から分かることは、犬が蚊に刺されないようにすることが大切だということです。

しかし、完全に蚊を排除することはできませんので、蚊の活動している期間は継続的に対策が必要になるということが分かります。

フィラリアの予防法については最後にお話ししますが、「蚊の活動期間中は継続的に対策が必要」だということは覚えておいてください。

 

 

内部寄生虫がいる時は、虫が便の中に混じるとかお尻から虫が出ていることで気づけると考えている方もおられますが、フィラリアは消化管ではなく心臓や肺動脈に寄生するため、目に見えることがありません。

そのため、フィラリアが寄生したことで現れる体の異常であるフィラリア症の症状によって気付くことになります。

 

〈犬のフィラリアの初期症状〉

・咳をする(フィラリアの初期に代表的な症状)

・運動や散歩をしたがらなくなる

・体重が減少する

・毛艶が悪くなる(栄養障害)

・食欲が低下する

・速くて浅い呼吸になる

 

〈犬のフィラリアの重度症状〉

・口、目などの粘膜の色が白くなる(貧血)

・お腹が膨らんでくる(腹水が溜まっている)

・尿の色が赤っぽくなる(血尿)

・運動や散歩の後に失神する

 

 

フィラリア症の症状は、フィラリア成虫が心臓(右心室)や肺動脈に多数寄生して血流が滞ってしまうことで現れます。

そのため、たとえ軽症だとしても、すでに愛犬の心臓などにはある程度の数のフィラリア成虫が寄生した状態に至っていると考えてください。

 

フィラリア症の治療は、薬の投与によるフィラリア成虫の駆除になります。

死んだフィラリア成虫は、肺の方へ流されて、白血球により処理されます。

フィラリアの数が少ない場合は問題ありませんが、数が多い場合は問題です。

急激に薬で処置してしまうと、フィラリア成虫の死体で血管を塞いでしまい、命を落としてしまうこともあるためです。

また、フィラリア成虫の外皮(クチクラ)は、虫が分解された後も粉状の形態で残ってしまうため、これが毛細血管をつまらせてしまって肺組織を壊死させることもあるのです。

 

そのため、多数のフィラリアが寄生している場合は薬を使用せずに手術により頸静脈からフィラリアを摘出します。

ただし、この場合は限られた部位のフィラリアしか摘出できないため、完全な治療にはなりません。

 

このことからも、フィラリアについては予防が最も重要だということが分かると思います。

 

 

前述の通り、フィラリアは猫にも寄生します。

犬と同様に、蚊に刺されることで感染し、感染部位も犬と同じように右心室や肺動脈です。

そして、犬と同じように多数のフィラリアの寄生により血流が停滞し、フィラリア症を起こします。

 

ただし、猫の体内はフィラリアにとっては繁殖や成長しやすい環境ではないため、フィラリア成虫まで成長できる数が少なく、そのため無症状の場合も多いようです。

しかし、猫の場合は突然症状が現れ、そのまま死に至る(突然死)場合もあるため、油断はできません。

猫の突然死における最も多い理由が、実にフィラリアだと言われているのです。

 

なぜ寄生数が少ないにも関わらず突然死を引き起こすのかについては、フィラリアに対してアレルギー症状を引き起こすとか、フィラリア成虫の死骸が肺動脈などを閉塞してしまうという理由が考えられています。

 

〈猫のフィラリアの症状〉

・咳をする

・苦しそうな呼吸になる

・嘔吐

・うつ状態になる

・疲れやすくなる

・元気がなくなる

・食欲が低下する

・体重が減少する

・ショック死(突然死)

 

猫の場合は、フィラリア症の症状が出ていなくても感染している場合が多いのではないかと考えられています。

そして、フィラリア症の治療のリスクは犬と同様であることも考え合わせると、猫に対してもフィラリアの予防が大切だと考えるべきでしょう。

 

 

これまでみてきたように、犬にも猫にも、フィラリアに関しては何よりも予防が大切だということがお分かり頂けたでしょうか。

また、たとえ完全室内飼いであっても、室内に蚊を入れないということはほぼ不可能ですので、予防措置は必要だと考えましょう。

 

現在、最も一般的なフィラリアの予防法は、蚊が発生する期間中を通して薬を継続的に投与し、感染した幼虫を駆除する方法です。

フィラリア予防薬は、体内に入ったミクロフィラリアを1ヶ月分まとめて駆除します。

また、第3〜5期の幼虫を殺すタイプの薬剤が一般的なため、蚊に刺された後ミクロフィラリアが3期から5期に成長するまでの2ヶ月の間に月1回の投薬をすることで確実な効果が期待できます。

 

蚊が活動している期間中はいつ刺されるか分かりませんので、実際には蚊が活動を始めてから蚊が見られなくなって1ヶ月後までの期間中に、毎月1回投薬するということになります。

私が獣医師になった30年前は、横須賀での最低予防期間は5月末から11月末でした。

今は暖かくなっていますので、4月末から12月末の期間中に継続的に投薬することをおすすめします。

 

フィラリア予防薬は、種類によってはフィラリア成虫やミクロフィラリアを殺すと同時に犬にショック状態を引き起こす危険があります。

そのため、毎年予防薬の投与を始める前には、必ず動物病院で診察を受けるようにしてください。

 

また、フィラリアの予防薬は、必ず獣医師の処方が必要です。

万が一、ネット通販などでフィラリア予防薬を入手することが可能であっても、そういう入手方法は避け、必ず動物病院で診察を受け、処方してもらった薬を投与してください。

 

フィラリアは、感染してしまうととても恐ろしい病気ですが、しっかりと予防をすれば怖い病気ではありません。

正しく入手した予防薬を正しく飲ませることで、しっかりと予防し、愛犬や愛猫の健康を守ってあげましょう。

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