ペットと一緒の防災について考えましょう

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ペットの防災に対する準備はできていますか?

小型犬の同行避難

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

ここ数年、地震や台風、豪雨といった自然災害の激しさや頻度が増してきているように感じています。環境省は、2018年9月にペットの飼い主様向けの災害対策ガイドライン「災害、あなたとペットは大丈夫?」を公表しました。その中では、ペットを守るためには飼い主様がペットと一緒に避難する「同行避難」が重要だと明記されています。

 

アイペット損害保険株式会社が、2021年3月4日に、1,041名の犬や猫の飼い主様に対して行ったアンケート調査の結果を公表しました。その回答を見ると、ペットに関する防災対策をしているかという問いに対して「あまりしていない」と「まったくしていない」と回答された方が78.3%を占めました。

 

実際にペットと同行避難をしようとすると、普段から飼い主様が準備をしておかなければならないことがたくさんあります。このブログを読んでくださっている飼い主様のペットとの防災に対する準備は、いかがでしょうか。

 

今回は、ペットと一緒の防災について一緒に考えていきたいと思います。

 

環境省:災害、あなたとペットは大丈夫? へのリンク

 

日本の避難は原則「同行避難」

体育館

 

前述の環境省が作成した飼い主様向けの防災ガイドラインにも書かれている、「同行避難」という言葉について、実は正しく理解をされていない方が多いのです。同行避難と聞くと、ペットと一緒に避難所の同じ空間で過ごせると思ってしまうのではないでしょうか。

 

しかし同行避難とは、ペットと一緒に避難所まで行くことまでです。避難所に着いたら、人は人専用の部屋、ペットはペット専用の部屋もしくは屋外の区画が割り当てられて過ごすことが多いのが現状です。

 

避難所で、飼い主様とペットが同じ空間で過ごせることを「同伴避難」と言います。また、動物の受け入れは行っていない避難所もあります。ですから、お住いの近くにある避難所が、動物の受け入れを行っているかどうか、そして受け入れてくれる場合は同伴避難ができるかどうかを、事前に調べておく必要があります。

 

動物が嫌いな方や動物が怖い方、また動物アレルギーの方などもいらっしゃいますし、避難所の設備の問題もありますので、動物の受け入れを行っていない避難所もありますし、受け入れていても、同伴避難はできないところも多いのが現状のようです。

 

いずれにしても、大勢の知らない人や動物たちの中で過ごさなければなりません。また、救助物資も人間用が優先されて、動物用はなかなか入ってこないのが現実なので、そういったことを意識して、日頃から準備をすることが不可欠です。

 

災害の種類や大きさ、また被災した時の状況にもよりますので、その時々で臨機応変に対応し、まずご自身の身の安全を確保し、避難できる状況になったらペットと一緒にその時に持てる防災グッズを優先順位に従って選択し、避難所に向かってください。場合によっては、在宅避難が安全だという判断もありうるでしょう。

 

日頃から準備しておくこと

隠れる猫

 

最優先で準備しておくべき品を下記に列挙しますので、ご自宅での準備の参考になさってください。

 

1.普段食べているフード(療法食の場合は療法食)と食器

2.飲水と飲水用の食器

3.常備薬

4.予備も含めた首輪・リード

5.ペットの身元がわかるもの(鑑札、予防注射済票、迷子札、マイクロチップなど)

6.ケージ、クレートなどペットが過ごせるケージ類+ガムテープ(修繕・補強用)

7.トイレグッズ

8.ワクチン証明書

 

フード、飲水、常備薬は、7日分以上は用意したいところです。もちろん、賞味期限にも注意してください。またケージやクレートは、1頭につき1つ用意が必要です。被災した季節により、防寒や防暑グッズも準備しましょう。

 

しばらくの間は、見知らぬ他人や他の動物との共同生活になります。他の避難者や避難動物との間にトラブルを起こさないように、最低限の健康管理としつけはしておく必要があります。

 

ワクチン接種、ノミ・ダニの駆除は必須です。そして、犬の場合は最低でも「マテ」「オイデ」「オスワリ」「フセ」ができるようにトレーニングをしておきましょう。普段お家でならできることも、避難所ではパニックになり出来なくなる子もいます。普段から、興奮したら「ダイジョウブ」などの声掛けで落ち着けるようにしておくことも大切です。

 

猫の場合は特に難しいと思います。飼い主様の指示を聞くことはできないと思いますが、少なくとも知らない人や動物がいても、極端にパニック状態にならないように、普段から定期的に動物病院に通うなどで他人や他の動物に慣れさせるようにしておきましょう。また、猫の場合は飛び出して行方不明になるケースが多いので、猫が入る大きさの洗濯ネットを用意しておくと役立つでしょう。

 

また大型マンションなどの場合、非常時はマナーウェアを着用すれば廊下などの共用スペースを直接ペットが歩いても良いと規定しているところもあるようです。その場合は、日頃から時々マナーウェアを着用させて慣らしておくと良いでしょう。適切なサイズや履かせ方等で脇から漏れてしまうこともありますので、ぶっつけ本番はおすすめできません。

 

また、飼い主様とペットが一緒にいる時に被災するとは限りません。お互いに別の場所で被災することもありえます。万が一はぐれてしまった時にも備えておく必要があります。

 

犬の場合は鑑札と予防注射済票を装着していると思いますが、他に飼い主様の連絡先が明記されている迷子札と、マイクロチップの装着をおすすめします。猫も同様です。なぜ迷子札とマイクロチップの双方が必要かというと、視認性の良い迷子札等は、外れてしまうリスクがあるためです。その場合も、マイクロチップを装着し、情報を正しく登録していれば、飼い主様の元に戻ってこられる確率が格段に上がります。

 

横須賀市の事例

キャリーケースの中の猫

 

ここで、横須賀市の例をご紹介します。横須賀市は、災害時に3種類の避難所が開設されることになっています。1つ目は、自宅が被害に遭う可能性のある方が予め自主的に避難する自主避難所です。市内に9つある行政センター併設のコミュニティセンターを基本に、台風の規模等によってその他のコミュニティセンターや体育会館などを避難所として開設するものです。残りの「風水害時避難所」と「震災時避難所」は、災害によってご自宅で生活することが困難になった方が避難生活を送る避難所です。

 

自主避難所の場合、基本的にはコミュニティセンターではペットの受け入れを行い、体育会館では受け入れを行っていません。またコミュニティセンターでは、通常時は同伴避難ができますが、昨年の台風14号などの際には、3密を避けるために「人間の部屋」と「ペットだけの部屋」に分ける形で運営されました。

 

避難所の場合は災害の規模によって、どの避難所を開設するのかをその都度判断します。開設する可能性のある施設は、市立小中学校やコミュニティセンターなどの市の施設や各町内会館や寺院の本堂などです。この場合も、コミュニティセンターは原則ペットを受け入れますが、他の施設ではその都度決定されます。日頃から、避難所に関する情報が掲載されるサイトにはすぐにアクセスできるようにしておくと良いでしょう。

 

また三浦市での事例になりますが、2021年3月に、市民有志が主催したペットと同行避難をする際の心得に関する講習会が無料で開催されています。タウン誌などに案内が出ていますので、お住いの地域でも同じような企画があった場合は、活用してみるのもよいかと思います。

 

いずれにしろ、お住いの地域にある避難所の位置、ペットの受け入れ可否やその方式を事前に確認し、一緒に暮らしているペットたちと一緒に避難する際の経路や手順などをシミュレーションしたり、実際に体験したりしておくことをおすすめします。

 

多頭飼いをご検討されている飼い主様は、被災時のことも考えた上で飼育可能な頭数をご判断される必要もあると思います。

 

ペットと一緒の防災に関するまとめ

犬のトレーニング

 

ポイント

・被災時は、まずご自身の身の安全を確保してください

・在宅避難も含めて、避難時に必要な防災グッズは日頃から準備しておきましょう

・避難時は他人や他の動物との共同生活になるため、最低限のしつけをしておきましょう

・万が一はぐれたときのことを考え、迷子札やマイクロチップを装着しましょう

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