ワンちゃんとのお散歩時間を大切に!
犬が散歩を好きな理由
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬には散歩が必要だとただ漠然と考えて、義務感から毎日ワンちゃんとのお散歩に出掛けているという飼い主様もいらっしゃるのではないでしょうか。人間にも運動が大切なように、もちろん犬にとっても運動はとても大切で、そのためにもお散歩はとても大切です。ワンちゃんにとっても、1日の中で最も楽しみにしている時間かもしれません。
ところで、ワンちゃんにとってお散歩がとても大切な理由を、じっくりと考えたことはありますか。ワンちゃんにとってのお散歩は、単なる運動というだけではなく、他にも大切な要素を含んだものなのです。
今回は、ワンちゃんがお散歩を好きな理由や、飼い主様も一緒に楽しみながらお散歩の効果を最大限に活かすための工夫点についてお話をしたいと思います。
体をたくさん動かしたい!
元々は完全肉食獣だった犬たちは、仲間と協力をしながら狩りをして食物を得ていました。そのため、体は狩りをするのに適した構造をしています。その体を維持するためにも、犬にとって運動はとても重要な要素です。犬種や年齢、そして個体差や健康状態にもよるため、一概に犬に必要な運動量を断言することはできませんが、それぞれのワンちゃんに合わせた適切な運動量をキープさせることが、ワンちゃんに健康で長く生きてもらう秘訣です。
例えばイギリスの犬種協会が出している散歩の目安は、小型犬が1回30分程度の散歩を1日に1回、中型犬は1回1時間程度の散歩を1日に1〜2回、大型犬は1回2時間程度の散歩を1日2回とされています。しかし小型犬でもテリア種などは、とても猟欲に富んでいるため、たくさんの運動をしたがります。そのため、小型犬だからと1日に1回の散歩だけでよいというわけではなく、1日に複数回のお散歩や、1回でも長時間のお散歩をしたがるなど、その子によって適切なお散歩時間はさまざまなのです。
もしお散歩から帰った後も元気に遊びたがるのであれば、お散歩コースをもう少しハードな内容にしてみたり、回数を増やしてみたり、1回のお散歩時間を延ばしてみたりと工夫してみてください。逆に途中でくたびれてしまい、歩きたがらなくなってしまうような場合は、もう少し楽なコースや短い距離にした方が良いでしょう。
楽しくお散歩をして、帰宅したら疲れて気持ちよくお昼寝をしてしまうくらいの、ちょうどよいお散歩を目指せると良いですね。
多くの情報を探りたい!
現在の犬たちは、その大半が完全室内飼いという環境で暮らすようになりました。そのため、日常のお手入れも丁寧にしてもらい、普段の様子もよく見てもらえて、体調の変化などにもすぐに気がついてもらえるようになりました。動物病院でのワクチン接種や寄生虫予防なども適切に受けられるようになり、平均寿命も年々延びてきています。
ただし、1日の大半を家の中で過ごすことで、ワンちゃんたちの生活はかなり退屈になってしまったことは否めないでしょう。しかし、元々の犬たちは縄張りの中を常に監視し、獲物を探したり敵の侵入を察知したりしながら、平穏な暮らしを手に入れていたのです。
そのため今でも犬たちは、常に周囲の情報を収集したがる習性を持っています。その現れが、いつでもどこでも「クンクン」とニオイを嗅ぐ行動です。犬にとって最も優れた五感である嗅覚を使って、縄張り内で起きているさまざまな出来事や、近隣で暮らしている他の犬たちの情報を探っているのです。
そのため、毎日のお散歩で外に出、思いっきり周囲のニオイをクンクンと嗅がせてあげることが、ワンちゃんの情報収集欲を満たしてあげることになり、気持ちも穏やかにしてあげられるのです。
たくさんの刺激を受け、そこからたくさんの情報を探ることで、ワンちゃんは退屈だと感じることも減り、脳の活性化やモチベーションの高まりにも寄与します。それはつまり、年をとってからの認知症などの予防にもつながるということです。それに何より、ワンちゃんがたくさんの刺激に囲まれて、いつまでも楽しくイキイキと暮らせる方が、飼い主様も楽しい暮らしになるのではないでしょうか。
ですから「散歩は運動のため」とだけ考えて、お散歩コースをせっせと歩いたり走ったりするだけではなく、途中でゆっくりとニオイを嗅いで情報を収集する時間も、たっぷりとってあげてください。
飼い主様と交流したい!
散歩は「運動をする」ため、そして「たくさんの刺激から多くの情報を探るため」に必要だということをご説明してきました。もう一つ大切な要素が、「飼い主様とのコミュニケーションをより深める」ためです。
もちろん、ずっとお家の中で暮らしているため、外飼いされていた時代と比べれば、今のワンちゃんたちの方が飼い主様とのコミュニケーションはずっと多くなっていることでしょう。しかし、普段お忙しい飼い主様は、案外思っているほどにはワンちゃんとのコミュニケーションが十分ではないかもしれません。例えば家の中でのコミュニケーションだけでは、シチュエーションが限定されすぎてはいないでしょうか?
お散歩をしながらアイコンタクトをとる、お散歩コースの中に公園やドッグランなどの広い場所を組み込むことで普段できない遊びの時間を作る、また家の中だけではなく外でもおすわりなどのトレーニングを行うといったことをお散歩メニューに取り入れることで、より広く、そして深いコミュニケーションを図ることもできるのです。
お家の中での遊びももちろん大切です。お散歩ができないような悪天候の日なども、お散歩の代わりに家の中でできる遊びをしておられるでしょう。しかし、いつものお散歩コースをたまにアレンジすることで、いつもとは異なる種類の刺激を味わってもらえますし、お散歩メニューの中に変わり種の遊びを組み込むことで、より深いコミュニケーションを図れるようにすることもできます。
そして何より、ワンちゃんと一緒に飼い主様も心から楽しむことが、真の意味でのコミュニケーションになり、ワンちゃんにとっても飼い主様にとっても、とても有意義な時間になるはずです。
どうかワンちゃんのためのお散歩とは考えず、飼い主様がワンちゃんと一緒に楽しむためのお散歩だと考え、一緒に心から楽しんでください。飼い主様の生活スタイルや健康状態と、ワンちゃんの特性や健康状態の双方を考慮し、お互いにとって快適で最適なお散歩スタイルがみつかるように、いろいろと工夫を重ねてみてください。
ワンちゃんとのお散歩は、決して一通りの方法しかないわけではありません。周囲へのマナーさえきちんと守ることができていれば、飼い主様とワンちゃんの組み合わせの数以上の方法が存在してよいのです。
ポイント
ポイント
・お散歩はワンちゃんの「運動欲」を満たし、健康で長く生きてもらうことに繋がります。
・お散歩はワンちゃんの「情報収集欲」を満たし、退屈せずにいつも生き生きと暮らしてもらうことに繋がります。
・お散歩は飼い主様との「コミュニケーション」を深め、強い絆の構築に繋がります。
・お散歩はワンちゃんだけのものではなく、飼い主様も一緒に楽しむことが大切です。
・飼い主様とワンちゃんの双方に快適で最適なお散歩スタイルをみつけて、毎日のお散歩をワンちゃんと一緒に楽しみましょう。
・ワンちゃんとのお散歩は、飼い主様とワンちゃんの組み合わせの数以上に方法があって良いのです。