保湿で愛犬・愛猫を乾燥から守りましょう

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犬や猫に多い皮膚トラブル

犬の皮膚をチェックする飼い主

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

動物病院に来院する理由として、皮膚トラブルは常に上位にランキングされています。全身が被毛に覆われていても、比較的皮膚のトラブルには飼い主様も気付きやすいことが理由の一つだと思いますが、それ以上にワンちゃんや猫ちゃんの皮膚がデリケートだということが大きいと感じています。

 

人間の赤ちゃんの皮膚の厚さは、成人の皮膚の約1/2です。しかし、ワンちゃんや猫ちゃんの皮膚の厚さは、成人の約1/3、つまり赤ちゃんの皮膚よりも薄いのです。いくら全身を被毛で覆われているとは言え、ワンちゃんや猫ちゃんの皮膚はとてもデリケートなのです。

 

ましてや被毛で覆われていない、または少ない部分については、皮膚のケアがとても大切なのです。まずは皮膚の役割について、簡単にご説明しましょう。

 

皮膚の役割と保湿の重要性

皮膚の構造

 

皮膚は動物の体の中で最も大きな臓器で、さまざまな役割を持っています。しなやかで強靭な皮膚は袋のように体全体を覆い、外のいろいろな物にぶつかったり引っ張られたり押されたりしても、簡単には破れません。きちんと皮膚が元の状態に戻ることで、体の形を守っているのです。

 

皮膚にはたくさんの感覚器もあるため、硬さや温度、痛み、痒みなどの感覚を脳に伝達します。温度を感じますので、外気温に合わせて皮膚の血管を広げたり縮めたり、また汗腺からの汗の分泌量を調整したりして、体温を調整するのも皮膚の役割の一つです。

 

そして、最も大切な機能がバリア機能です。外の環境から体内にウイルスや細菌などの外敵が侵入しないように防ぎ、かつ体内の水分や大切な成分が出ていくのを防いでいるのです。

 

このバリア機能の主役となっているのが、身体の最も外側を覆っている皮膚の中の角質層という部分です。皮膚の底の方で生まれた角化細胞が時間の経過とともに成長しながらだんだん体表に移動していきます。そして、犬や猫の場合は約3週間かけて角化細胞が死滅し、体表から剥がれ落ちていきます。これがフケです。このフケとなって剥がれ落ちる直前の角化細胞が積み重なっている層が角質層です。

 

美しい被毛の猫

 

この角質層は、角化細胞がただ積み重なっているわけではありません。セラミド、コレステロールエステル、遊離脂肪酸といったさまざまな成分からなる角質細胞間脂質が角化細胞の間を埋めて、このバリア機能を果たしているのです。

 

実はこの角質層、水の中で生活している動物には存在しません。例えば、おたまじゃくしに角質層はありませんが、カエルに成長すると角質層が形成されるのです。つまり角質層は、脊椎動物が水中から陸上で暮らすため、体内の水分を外に逃さないようにするために手に入れた強力な武器なのです。

 

何らかの理由でバリア機能が低下してしまうと、皮膚の水分が蒸散してしまい、乾燥してしまいます。それを防ぐためのスキンケアが、保湿なのです。実際に、人間の新生児に対して毎日保湿を行った場合は、行わなかったグループよりもアトピー性皮膚炎の発症率が低減することが分かっています。また、保湿で皮膚のバリア機能を高めることで、他のアレルギー疾患の発症リスクを低減できる可能性も期待されています。

 

乾燥した時の犬猫の症状

毛並みの美しい犬

 

先程もお話したように、ワンちゃんや猫ちゃんの皮膚の中でも、被毛に覆われていない部分、または被毛が薄い部分の皮膚は、ケアが重要になってきます。具体的にいうと、下記のような部位になります。

・目の周囲

・口元

・耳

・肉球や指の間

・足の付根

・下腹部

 

ワンちゃんや猫ちゃんの皮膚が乾燥していわゆる乾燥肌になると、下記のような症状が見られます。

・皮膚が乾燥してカサカサしている

・痒がっている

・フケが目立つ

・毛が抜けていたりカサブタができていたりする

・皮膚の色が赤くなっている

・肉球の場合はひび割れができていることもある

 

痒がっている場合は、ワンちゃんや猫ちゃんの様子から、飼い主様も比較的気付きやすいと思います。次に気付きやすい症状が、ブラッシングなどを行っている時にフケが目立つことかもしれません。

 

角化細胞が生まれてからフケとなって剥がれ落ちるまでに3週間かかるとお話ししました。この時間を皮膚のターンオーバーといいます。バリア機能が低下すると、皮脂や汗の分泌量に異常が生じ、皮膚のターンオーバーが、短くなってしまいます。例えばターンオーバーが1週間になってしまった場合、フケの量が通常の3倍になるわけで、そのために乾燥肌になるとフケが目立つというわけです。

 

犬猫の保湿ケア

シャンプー中の犬

 

ワンちゃんは、月に1回程度の頻度でシャンプーを行っていると思います。シャンプーは皮膚や被毛に付いた汚れを落としますが、同時に皮膚に必要な油分も落としてしまいます。先ほどお話した、角質細胞間脂質などもその一つです。残念ながら、シャンプーは皮膚のバリア機能を低下させる原因になり得るのです。

 

そのため、フケが出る子はシャンプー後の保湿をおすすめします。シャンプーをした後に十分なすすぎを行いますが、その後に保湿を行いましょう。ワンちゃん専用の保湿剤がありますので、それを利用してください。保湿剤によって、濡れた状態で使用するものや乾かしてから使用するものなどがありますので、使い方をよく読んで正しく使用しましょう。

 

保湿剤も、ワンちゃんの体質によって合う・合わないがあります。かかりつけの動物病院に相談をすると、それぞれの体質にあったものを処方してもらえます。なお、猫ちゃんは舐め取ってしまうので保湿剤はおすすめしません。

 

ワンちゃんや猫ちゃんたちが普段過ごしている室内の湿度を常に50〜60%に維持しておくことも大切です。温度管理には気を使われている飼い主様が多いのですが、湿度管理も重要なので、気を付けてください。

 

エアコンなどで冷暖房を行っていると、どうしても空気が乾燥してしまいますので、加湿器を利用したり、濡れタオルを室内に干したりすることで、湿度を維持してください。また、温度計と一緒に湿度計も用意しておくと良いでしょう。

 

さらに、栄養バランスの取れた食事やストレスのない生活をさせることで、ホルモンバランスを整え、心身共に健全な状態で暮らせることも、皮膚のバリア機能を維持させるためにとても大切です。

 

冬は暖房器具を利用することで室内の空気が乾燥しがちですので、湿度調整に注意をして過ごしてください。また、もともと皮膚のバリア機能が低い子がシャンプーを頻回すると、益々皮膚のバリア機能が低下してしまいます。そういう場合は、保湿剤を使用したケアも考えましょう。

 

ポイント

仲良く寝る犬と猫

 

ポイント

・犬や猫の皮膚は人間の赤ちゃんの皮膚よりも薄くデリケート

・被毛で覆われていない部分や被毛が薄い部分の皮膚は特にケアが必要

・皮膚のバリア機能が低下することで乾燥肌となりさまざまな症状が現れる

・暖房器具を使用する場合は湿度管理にも気を配る

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