冬だからしっかりと水分補給の工夫を!

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体内における水分の役割

水を飲む犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

今回は、冬の水分補給についてお話します。私達人間は、身体の約60%が水でできています。赤ちゃんの頃には、約75%が水分です。年を経るごとに水分量が減っていき、老人になると50%程になります。同じように、犬も約60%、猫は約70%が水分でできています。

 

それだけ水分は、私達動物が生きていくために大切な役割を果たしているのです。具体的には、水分がいろいろな成分を運びながら体内を巡ることで、酸素や栄養素を各臓器に届けたり、不要な老廃物を排出したりしているのです。

 

そのため、体内の水分が不足すると、身体を組成している成分のバランスが崩れるだけではなく、消化吸収や体温の調節、代謝機能に支障が生じて、さまざまな病気の原因となってしまいます。

 

水分補給というと、夏の熱中症対策として気を使われる飼い主様が多いのですが、冬になるとそれ程気にされなくなってしまう方が多いようです。でも実は、ワンちゃんや猫ちゃんが意外と水分不足になりやすい季節が冬なのです。

 

私達人間も同じです。冬になると、夏ほどお水を飲まなくなるのではないでしょうか。でも、人間の場合は鍋物やシチュー、スープなどの暖かくて水分の多いメニューを多く摂るようになり、自然と水分をコントロールしているのです。

 

ぜひワンちゃんや猫ちゃんにも、同じように意識的に水分補給を考えてあげてください。

 

水分不足が招く病気の例

おしっこをする子犬

 

ワンちゃんや猫ちゃんの飲水量が少なすぎることで招きやすい病気の例を、いくつかご紹介します。

 

【尿路結石】

腎臓、尿管、膀胱、尿道を尿路といいます。これらの器官のどこかに結石ができてしまう病気を、尿路結石といいます。結石は、食事中のミネラル成分や体内の水分バランスが崩れたことで尿の濃度やpH、イオン濃度などが変動し、塩類が沈殿してできます。冬でも、必要量の水分をきちんと摂らせることが、予防にも繋がります。

※猫の尿路結石 へのリンク

 

【膀胱炎】

膀胱が細菌などに感染することで炎症を起こす病気です。お水を飲む量が減ってしまうと、おしっこの量が少なくなりなかなか排尿しないために、膀胱の中に細菌が長くとどまるようになってしまいます。そのため、冬に多く見られる病気の一つです。飲水量の確保と、トイレを清潔な状態に保つことが予防になります。

※おしっこをしようとしても出ない時は病院へ へのリンク

 

【歯周病】

飲水量が減ると口内細菌が増えやすくなり、歯周病が悪化しやすくなります。特に犬の場合は、夏場よりもよだれの量が減ることで、口内が乾きやすくなります。ワンちゃんも猫ちゃんも、普段から歯磨きによる予防が大切ですが、併せて適切な飲水量の確保に気を付けてあげてください。

※約8割の成犬・成猫がなるといわれる歯周病 へのリンク

 

冬に飲水量が減る理由

水を飲む猫

 

冬になるとワンちゃんも猫ちゃんも水を飲む量が減ってしまうのには、いくつかの理由が考えられます。

 

まずは、寒くて水温が冷た過ぎるということです。ワンちゃんも猫ちゃんも、自分の体温程度の温度の水を好む傾向があるようです。38℃程度のぬるま湯にしてあげると飲んでくれる子もいますので、一度試してみてください。

 

次の理由も寒さに関係します。水飲み場が寒い場所にある場合、ワンちゃんも猫ちゃんも、寒くて水飲み場まで行きたがらずに我慢をしてしまうというケースです。お水用のボウルの数を増やし、温かいリビングなどにも置いてあげるようにしてみましょう。

 

次の理由も寒さに関係しますが、飼い主様側の問題になります。飼い主様が寒くてお水の交換や補充の頻度が減ってしまい、お水の鮮度が落ちてしまうために飲みたがらなくなるというケースです。冬でもお水の補給は大切です。そして、ワンちゃんや猫ちゃんは新鮮なお水でないと飲んでくれないことも多いです。寒くても、こまめにお水を交換してあげましょう。

 

最後は、運動量の問題です。寒くなると、ワンちゃんはお散歩の時間が短くなりがちです。猫ちゃんも、寒くて寝床で丸まっている時間が増えるのではないでしょうか。運動量が減ることで、自然と喉の渇きも感じなくなり、暖かい季節と比べると、ワンちゃんや猫ちゃんが自らお水を飲む量が減ってしまいます。寒くても、積極的にワンちゃんや猫ちゃんと一緒に遊ぶ時間を作ってあげましょう。

 

冬の飲水量を増やす工夫

散歩をする犬

 

前述の「冬に飲水量が減る理由」から考えると、ワンちゃんや猫ちゃんに積極的にお水を飲んでもらうためには、「38℃程度のぬるま湯にする」、「こまめにお水を交換する」、「暖かい部屋の中も含めて水飲み場を増やす」といった対策に、効果を期待できそうです。

 

それ以外にも、次のような工夫が考えられます。

 

・ドライフードが中心の場合は、ウェットフードや手作り食(スープ等)を併用して、食事から摂取できる水分量を増やす

・お水にささみの茹で汁などを加えて風味をつける

・老犬・老猫の場合はボウルや水入れの高さを工夫して、前傾姿勢にならずに飲めるようにする

 

水分は、必ずしも飲み水という形で摂る必要はありません。水分量が3〜11%程度しかないドライフードをメインにしている場合は、約80%が水分のウェットフードや、手作り食のスープなどを併用すると、お食事から水分を補給することができますので、おすすめです。

 

もちろん、お水をたくさん飲めばそれだけ体に良いというわけではありません。お水をたくさん飲みすぎてしまうと、「水中毒」を起こすこともあります。あくまでも、いつも飲んでいるお水の量を維持できるようにという観点で、上手に調節してあげましょう。

 

ポイント

遊ぶ猫

 

ポイント

・犬や猫にとって水分補給は一年を通して大切です

・冬は自然と飲水量が減るので、増やすための工夫が必要です

・飲水量が減少したことで発症したり悪化したりする病気があります

・愛犬や愛猫に冬でもしっかりと水分を補給させることは飼い主様の責任です

・冬でもしっかりとお水を飲ませるための工夫ポイントにはいろいろあります

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