冬にかかりやすい病気
犬も寒さで体調を崩しやすくなります
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
雪やこんこんの歌詞に「犬は喜び庭駆け回り、猫は炬燵で丸くなる」とあるように、犬は寒さに強く猫は寒さに弱いというイメージをお持ちの方が多いかもしれません。
しかし、犬も猫も、私たち人間と同じように寒さに影響を受け、冬には体調を崩しやすくなります。
そこで今回は、冬にかかりやすい病気についてお伝えしたいと思います。
泌尿器系疾患
寒さのため、冬になると犬も猫も水を飲む量が減りがちです。
その影響でかかりやすくなるのが、尿路感染症、膀胱炎、結石などの泌尿器系疾患です。
メスは尿道が短いため膀胱炎にかかりやすく、尿道が長くて先細っているオスは尿道に結石が詰まって排尿困難になりやすいといわれています。
特に、以前泌尿器系の疾患にかかったことがあったり高齢であったりした場合は、よりかかりやすくなるので注意が必要です。
おしっこは、体内の水分量を一定に保たせたり、体内の老廃物を排泄するなど、とても重要な役割を担っています。
そのため、泌尿器系の疾患によりおしっこが作られなくなったり、作られたおしっこが排泄されなくなると、生命の危機に瀕するような重篤なことにもなりかねません。
そのため、愛犬や愛猫の日々の排尿やおしっこそのものの様子を観察することは、とても大切なことです。
何度もトイレに行くのに出ているおしっこの量が少ないもしくは全く出ていない、排尿時に痛そうにしている、おしっこに血が混じっている等の場合は、すぐに動物病院に連れて行き、診てもらいましょう。
特に冬に多くなるのは事実ですが、冬に限らなくても、尿の量と色はよく確認することを習慣づけると良いでしょう。
犬も猫も、いつでも新鮮な水を飲めるようにしておくことと、ウェットフードなどを利用して水分の補給を行うようにすることが、大切です。
なお、屋外で排泄する習慣の犬は、雪の日でも大雨の日でも、外に出ないと排泄ができません。
おしっこを我慢させると膀胱炎を引き起こし、その結果として結石ができやすい環境になってしまいます。
愛犬に排尿を我慢させないためには、どんなに寒くても、また天候が悪くても、飼い主様が愛犬を散歩に連れ出さなければなりません。
室内飼いの場合、飼い主様の負担を考えると、犬でも室内で排泄できるようにトイレトレーニングを行うことをおすすめします。
呼吸器系疾患と感染症
冬は空気が乾燥し気温も下がるため、鼻や喉の粘膜が刺激を受けやすくなります。
また、ウィルスが活動しやすくなり、犬や猫の免疫力が下がりやすくなるため、感染症にかかりやすくなる季節でもあります。
その影響でかかりやすくなるのが、呼吸器系の疾患や感染症です。
特に子犬の場合はケンネルコフに注意が必要です。
ケンネルコフとは、一般的に犬カゼとも呼ばれている呼吸器系の疾患で、頑固な咳が特徴です。
ケンネルコフは、ウィルスや細菌やマイコプラズマ、またはこれらが混合して感染し発症します。
原因となる病原体は低温・低湿度を好みますし、犬は寒さのために免疫力が低下することも加わり、特に冬に蔓延しやすくなるのです。
だいたい、感染してから1〜2週間の潜伏期を経て、喉に何かがつかえているような感じの咳をし始めます。
咳はとてもしつこく一日中繰り返し、それが数週間に及ぶこともあります。
咳の他に膿性の鼻水や目脂(めやに)も出ている場合は、重症な場合が多いです。
感染した病原体によって軽度なものから重度なものまで幅がありますが、特に重度な場合は生命の危険もある疾患です。
ただし、多くの場合はブリーダーやペットショップで感染し、飼い主様の元に来たことで環境が変わり、そのストレスに起因して発症するというケースがほとんどのようです。
ブリーダーやペットショップから子犬を迎えたばかりという場合は、注意してください。
また、ケンネルコフで重度な症状を起こす病原体に、パラインフルエンザウィルスやジステンパーウィルスが挙げられます。
これらのウィルスに対しては混合ワクチンの接種により予防できますので、毎年きちんと接種を受けましょう。
猫の感染症
猫にも、猫カゼと呼ばれている疾患があります。
猫ウィルス性鼻気管炎(FHV)、猫カリシウィルス感染症(FCV)です。
これらの原因となるウィルスも低温・低湿度を好むため、冬になるとかかりやすくなる疾患です。
猫カゼの主な症状は、くしゃみ、鼻水、涙、目脂です。
気づかずに猫カゼを進行させてしまうと、目の充血・腫れや、膿性の鼻水や鼻づまりといった症状も出てきてしまい、猫はにおいをかげなくなるために食欲が低下し、特に子猫の場合は生命の危機に瀕することもあります。
FHVやFCVも、混合ワクチンで予防できますので、やはり毎年きちんと接種を受けるようにしましょう。
関節疾患
冬になると寒くて運動不足になりがちなのは、犬や猫も同じです。
その影響でかかりやすくなるのが、骨関節炎などの関節の疾患です。
関節の周りには筋肉や血管が元々少ないのですが、寒さによって関節周辺の血流がさらに滞り、かつ筋肉が強張ってしまいます。
そのため、寒い時に急に運動をさせると関節を傷めてしまいます。
しかし、運動不足のままにしておくと肥満につながり、さらに関節を傷める要因になってしまいます。
関節の疾患は、咳や鼻水のような明らかに目に見える症状がありませんので、気付くためには飼い主様が愛犬や愛猫をよく観察することが必要です。
愛犬や愛猫が、歩くのを嫌がるようになったり、足を動かすときに鳴くようになったり、飼い主様が足を触るのを嫌がるようになったりしたら、関節の疾患を疑いましょう。
フローリングのような滑りやすい床は、足を踏ん張りづらいために関節に負荷をかけてしまいます。
関節炎などの予防にはカーベットを敷くなどして、愛犬や愛猫の足腰を守るようにしてあげましょう。
また、関節の疾患を予防するためには、太らせないということが一番大切です。
適切な栄養管理と日々の適切な運動により、愛犬や愛猫が適切な体重を維持できるように管理してあげましょう。
そのためには、冬の間も十分な運動量を確保できるよう、上手に遊ばせてあげる必要があります。
とは言っても、ずっと寝ていた犬に対して急にボールを投げて遊んだりするようなことは避け、人の場合の準備運動のように、体を温めながら徐々に激しい運動になるように遊んであげることが、関節を傷めないようにする秘訣です。
また冬になると、やけども増える傾向にあります。
冬のやけどは、室内での防寒対策が原因による場合が多いです。
ストーブに近づきすぎたりするだけではなく、電気マットの上で長時間寝ていて低温やけどをするなどというケースもあります。
これらは、飼い主様のちょっとした注意で予防できる場合もありますので、よく注意してあげましょう。