冬になる前に備えたいヒートショック!

ペットの健康としつけ

ヒートショックは犬猫にも

浴槽で気を失った男性

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

冬が近づいてくると、多くの自治体や健康機関がヒートショックに対する注意を呼びかけます。夏の熱中症だけではなく、冬のヒートショックもワンちゃんや猫ちゃんにとって十分に気をつけなければならない健康リスクの一つです。

 

ヒートショックは病気ではありません。暑い場所から寒い場所へ、またはその逆へと短時間で移動することで、身体は温度変化に反応して血圧を上げたり下げたりします。その変化の大きさに身体がついていけなくなることで生じる健康障害が、ヒートショックです。

 

軽い場合は「めまい」や「立ちくらみ」といった症状ですが、ひどい場合は「失神」することもあります。またヒートショックが引き金で、心筋梗塞や脳梗塞になることもあります。そのため飼い主様の注意で、ワンちゃんや猫ちゃんのヒートショックを予防することが大切なのです。

 

ヒートショックの仕組み

入浴時ヒートショックの仕組み

 

気温の変化がどのように血圧に影響しているのかについて、簡単にご説明しましょう。

 

血液は、全身に張り巡らされている血管の中を流れて、全身に酸素や栄養分、免疫関連の細胞などと一緒に「熱」も運びます。

 

暑い場所に行くと、身体が暖められて体内に多くの熱が溜まります。そこで自律神経が血管を拡張して血流量を増やし、皮膚の表面にたくさんの血液を送ろうとします。皮膚の表面に送られた多くの血液から熱を放散して、体温の上昇を食い止めるのです。

 

寒い場所に行くと、外気温の寒さで体内の熱が奪われて冷えます。そこで自律神経が血管を収縮し、血流量を減らそうします。皮膚の表面の血流量が減らすことで放散する熱量を抑え、体温の低下を食い止めるのです。

 

血管が急激に収縮されれば血圧は上がり、急激に拡張されれば血圧は下がります。特に注意が必要なのは、寒い場所に行った後、すぐに暑い場所へ移動した場合です。血管が収縮した後に拡張されるため、血圧が一気に下がって脳への血流量が不足し、ショック症状を起こすことがあるからです。

 

ヒートショックの予防策

犬のシャンプー

 

ヒートショックの予防策は、極端な温度差をなくすことです。室内環境だけではありません。ワンちゃんや猫ちゃんが行動する範囲の全てを含みます。人間の場合は温度差が10℃以上あると、ヒートショックのリスクが高いといわれています。

 

まずは室内環境です。リビングはエアコンで暖かく、ワンちゃんや猫ちゃんのトイレや水飲み場が寒いということはないでしょうか。どうしても行かなければならない場所なので、温度差があるのは好ましい環境とはいえません。暖房器具を設置できない場合は、リビングの暖かい空気が流れ込むように工夫するといった対策が必要です。

 

暖かい空気は上の方に集まります。猫ちゃんは高い所で過ごしていることが多いため、猫ちゃんは飼い主様の体感以上に大きな温度差にさらされている可能性がありますので、注意してあげましょう。

 

ワンちゃんの場合は、毎日のお散歩にも対策が必要です。冬は室内と外気温の差ができるだけ少ない日中に散歩をする、外への出入りには廊下や玄関などの外気温に近い場所でしばらく身体を慣らす時間を設ける、外では防寒着を着せる等で、血圧の変化ができるだけ緩やかになるように工夫してあげましょう。

 

シャンプーや沐浴をさせる場合は、浴室を予め蒸気などで温めておく、湯温はぬるま湯にする、湯冷めをしないように被毛の水分をしっかりと乾かすといった対策が、温度の急激な変化を抑えることに役立ちます。

 

特に注意したいポイント!

上を見上げる老猫

 

◯若齢、高齢

ワンちゃんも猫ちゃんも、若齢や高齢の場合は特に注意が必要です。若齢であれば身体機能がまだ未成熟ですし、高齢であれば加齢による機能低下で、激しい温度差に身体がついていけなくなるからです。

 

特に高齢の場合は少しずつ時間をかけて機能が低下していくため、飼い主様からは今までと同じように見えてしまっていることが多いです。見た目や普段の行動が変わらないように見えても、身体は確実に老化していくということを忘れないでください。

 

◯心臓の持病

人のヒートショックと同様に、ワンちゃんや猫ちゃんのヒートショックも、心筋梗塞や脳梗塞の引き金になることがあります。そのため、もともと心臓系の持病を持っている子の場合はよりこまやかな注意をしてあげてください。

 

小型犬には僧帽弁閉鎖不全症の好発品種が、大型犬には拡張型心筋症の好発品種が、猫には肥大型心筋症の好発品種がいます。定期的に健康診断を受けることで、日頃から病気の早期発見、早期治療を心掛けてあげましょう。

 

◯適切な飲水

あまり水を飲まない子も注意が必要です。体内の水分が不足して脱水状態になると、血液の濃度が高くなるため血栓ができやすくなり、ヒートショックのリスクを高めてしまうからです。お水を飲みたいと思った時に、いつでも新鮮なお水を飲める状態を作ってあげましょう。

 

ポイント

防寒着を着た犬の散歩

 

ポイント

・ヒートショックは犬や猫にも起こり得る健康障害です。

・ヒートショックは温度変化に伴う激しい血圧の変化により起こります。

・ヒートショックは心筋梗塞や脳梗塞の引き金になることもあります。

・身体機能が低下している若齢や高齢、持病のある子は特に注意が必要です。

・愛犬や愛猫の生活環境内に、大きな温度差を作らないことで予防しましょう。

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