初めて犬を飼う方へ。犬との生活の基本事項
初めて犬を迎える方へ
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
犬には数多くの犬種があり、超小型犬のチワワも超大型犬のグレートデンも、同じ犬です。また、とても温厚で忍耐強い性格で知られているラブラドールレトリーバーの中にも神経質な子がいるなど、犬自身の個性も豊かです。そのため、「犬との暮らし」と言っても、それぞれのご家庭によって違いがあって当然です。
それでも、犬との生活には共通した基本的な事柄があります。それは、犬の生態や習性に基づいたものです。今回は、初めて犬を飼われる飼い主様向けに、犬との生活の基本事項について、お話したいと思います。
<心構え>
犬の平均寿命は、小型犬で約14歳、中型犬で約13歳、大型犬で約11歳といわれています。もちろん、20歳以上まで長生きしてくれるワンちゃんもいます。
中・小型犬の場合は1年で成犬になりその後は約4倍の速さで、大型犬の場合は2年で成犬になりその後は約7倍の速さで成長していきます。子犬時代はあっという間で、1〜2歳以降はものすごい速さで成長し、いつの間にかシニア期に入っているのです。
犬は人間社会の中では自立できないため、最期を迎えるその日まで、飼い主様が責任を持ってお世話をしてあげなければ生きていけません。
<平常時の注意事項>
ブラッシング、爪切り、歯みがき、シャンプーといった日常のお手入れや健康管理はもちろんですが、それ以外にも注意しなければならないことがたくさんあります。
私達人間には身近で安全な食材や植物でも、ワンちゃんが口にしてしまうと危険なものを知り、それらをワンちゃんが口にしないように対策したり、あらゆる事故を予防したりできるのは、飼い主様だけなのです。
<万が一の場合への備え>
地震や火事、洪水などの災害時には、飼い主様ご自身と一緒にワンちゃんも安全に避難しなければなりません。万が一に備えて、一緒に避難所で暮らせるように備えておくことをおすすめします。
<ペット保険加入の検討>
ワンちゃんには人間のような国民健康保険制度がありませんので、治療にかかった医療費は全額負担になります。加入条件の年齢制限もありますので、若いうちからいざという時のためにペット保険への加入について検討しておくことをおすすめします。
お迎え
<お迎え前の準備>
ワンちゃんをお迎えする迄に、下記の物を準備しておきましょう。
・安心できるお家(ケージ、サークル、クレート等)
・トイレ
・食器
・ドッグフード
・首輪とリード
・ブラシ
・犬用のおもちゃ
<お迎え当初の注意事項>
お迎えしたワンちゃんは、初めての場所に初めてのご家族と、初めてづくしでとても不安な状態です。あまり構い過ぎずに、できるだけそっと見守りましょう。そして、早く新しい環境に慣れてもらうことを最優先に考えましょう。
<トイレトレーニング>
新しくお家に迎えられたワンちゃんがその環境に慣れるまでに2週間はかかります。室内でのトイレトレーニングは、新しい環境に慣れた2週間後頃から始めましょう。
ワンちゃんがクンクンとニオイを嗅ぎながらそわそわしたり、おしりを突き出したりといった素振りを見せたら、やさしくトイレに誘導してあげましょう。
最初からうまくはいきません。失敗した時に叱りつけてしまうと、「排泄=悪いこと」と学習してしまい、ワンちゃんが排泄そのものを我慢してしまうことがあるので、決して叱らないでください。
失敗した時は、だまってさっさと、そして綺麗に片付けましょう。排泄物のニオイが残っていると、またそこでしてしまうことがあります。逆に、ワンちゃんの排泄物を拭き取ってニオイのついた布などを、トイレの隅などに置いておくと効果があるかもしれません。とにかく、根気よく繰り返すことで必ず覚えてくれます。
体の健康管理
<かかりつけの動物病院を作りましょう>
ワンちゃんをお迎えしたら、なるべく早めに動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。通いやすくて信頼できる動物病院をみつけて、かかりつけにしましょう。かかりつけの病院を作っておけば、ワンちゃんの健康状態をよく知っていて、病気のことやお手入れのことなどを気軽になんでも相談できる場所になります。
<病気の予防>
ワンちゃんに健康で長生きしてもらうためには、毎年の狂犬病や混合ワクチンなどの予防接種やフィラリア、ノミ・ダニなどの寄生虫予防、総合的な健康診断の受診がとても大切です。
それぞれの必要な時期や内容は、かかりつけの動物病院と相談をしながら、ワンちゃんに適した内容の予防医療を適切なタイミングで受けさせてあげましょう。
<避妊・去勢手術やマイクロチップの装着>
繁殖を目的としてお迎えするのでなければ、望まない妊娠を避けられ、かつ特定の病気の予防にもなる避妊手術も考えましょう。
またマイクロチップ未装着の場合は、万が一脱走したりはぐれてしまったりした場合に備えて、装着することも考えましょう。
<食事管理>
ワンちゃんの年齢に適した食事を、体格に適した量だけ与えましょう。犬は、「食べられる時に食べられるだけ食べよう!」という習性を持っているため、たくさんの食事を与えてしまうと過食してしまい、肥満になってしまいます。犬にとっても肥満は万病の元です。くれぐれも、適量を超えないように管理してください。
<ワンちゃんが口にすると危険なものはたくさんあります>
ネギ類やブドウ、アボカド、チョコレートなど、犬が食べると中毒を起こしてしまう食材の管理には、くれぐれも気をつけましょう。食材をワンちゃんの手の届く場所に置きっぱなしにしない、蓋付きのゴミ箱を使用するといった対策の他に、つまみ食いをしないようにしつけることも必要です。
また、植物の中にも中毒を引き起こすものがたくさんあります。石、布、おもちゃ、ボタンなども含めて、常に誤飲事故を起こさないような注意が必要です。
心の健康管理
<毎日十分に遊んであげましょう>
ワンちゃんの心の健康にとても大切なのが「遊び」です。遊びとは、お散歩やドッグランで走り回るといった運動や、飼い主様と一緒に行う引っ張り合いっこや宝探しといったゲームなどです。遊ぶことで、体を鍛える他にストレス発散、身体能力の向上、学習効果などが期待できます。
また、飼い主様と一緒に遊ぶことで絆も深まり、信頼関係をしっかりと構築できます。ただし、必ずおもちゃを介して遊びましょう。直接人の手や足で遊ばせると、噛み癖がついてしまいます。
<ワンちゃんと向き合う時は常に真剣に>
ワンちゃんは、飼い主様の様子から気持ちを察知します。ワンちゃんとは、常に真剣に向き合いましょう。一緒に遊ぶ時には飼い主様自身も心から楽しんでください。褒める時には、心の底から褒めてあげてください。
<しつけ>
ワンちゃんが人間の社会の中でトラブルなく暮らしていくためには、どうしてもしつけが欠かせません。しつけの時に大切なのは、褒めることです。決して叱ってはいけません。叱ると逆効果になることが多いです。「これをやるといいことがある(褒められる)」と学習することで、自発的に良い行動をとるように誘導することが、良いしつけです。
しつけには、常に一貫性が求められます。ある時は良くて別の時には悪いとか、同じことをしてもお母さんには褒められてお父さんには怒られるといった対応だと、ワンちゃんはどうすればよいのか分からず混乱してしまいます。きちんとルールを決め、ルールに従って褒めたり罰したりすることを徹底しましょう。
<正しい罰とは…>
罰するとは、大声で怒鳴ったり叩いたりすることではありません。飼い主様がワンちゃんを無視する、ワンちゃんからは見えないところに行ってしまうということが、罰になります。
ポイント
ポイント
・犬は自分の力だけでは生きていけません。最期の日までが飼い主様の責任です。
・迎えてしばらくは新しい環境に慣れてもらうことを最優先に考えましょう。
・体の健康管理のために、通いやすくて信頼できるかかりつけの動物病院を作りましょう。
・心の健康管理のためには、飼い主様と一緒の遊びが大切です。
・しつけは叱らずに褒めることが大切です。
・ワンちゃんへの罰は「無視する」「見えないところに行ってしまう」ことです。