初めて猫を飼う方へ。猫との生活の基本事項
初めて猫を飼う方へ
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
前回のブログで、初めて犬を飼われる飼い主様向けに、犬との生活の基本事項をお話しました。今回は、初めて猫を飼われる飼い主様向けに、猫との生活の基本事項についてお話したいと思います。
<猫ってどんな動物?>
猫は、人と一緒に暮らすようになった今でも、本質は孤独なハンターのままです。そのため、誰かの言うことを聞く必要性を感じておらず、いまだに狩猟本能も衰えていません。この点をよく理解しておかないと、猫との暮らしに難しさを感じてしまうかもしれません。
<心構え>
猫の本質は孤独なハンターですが、実際には自分で獲物を捕まえて自活する必要はありません。天寿を全うするためには、飼い主様の厚い庇護が必要です。
猫の平均寿命は約15歳で、1年で成猫になった後は約4倍の速さで成長し、7歳頃にはもうシニア期に入ります。生涯の半分以上が老後だといっても良いでしょう。
愛猫が最期を迎えるその日まで、責任を持ってお世話をするという心構えが必要です。
<平常時の注意事項>
猫にも、ブラッシング、爪切り、歯みがきといった日常的なお手入れや日々の健康管理がとても大切です。
特に注意が必要なのは、事故の予防です。ネギ、チョコレート、ブドウやユリ科の植物など、私達にとっては日常的な食材や植物でも、猫が口にしてしまうと中毒症状を引き起こす危険なものがたくさんあります。それらを猫ちゃんの手の届く範囲に置かないようにしましょう。猫は身長の何倍も高い場所に軽々と飛び乗れることも考慮しましょう。
<万が一の場合への備え>
自然災害や火事などは、いつ起こるかわかりません。いざという時には、飼い主様が猫ちゃんを連れて安全に避難しなければなりません。同行避難で、同じ避難所でも別々の空間で暮らさなければならないこともあるでしょう。万が一への備えはとても大切です。
<ペット保険>
猫もさまざまな病気に罹りますが、人間のような国民健康保険制度はありません。治療費用は、飼い主様の全額負担になります。加入できる年齢制限もあるため、猫ちゃんが若いうちから、ペット保険への加入についても検討することをおすすめします。
お迎え
<お迎え前の準備>
猫ちゃんをお迎えするまでに、下記の物を準備しておきましょう。
・トイレ
・猫砂
・キャットフード
・食器
・爪とぎ
・ブラシ、コーム
・猫用のおもちゃ
・キャリーバッグ、クレート等
<猫の習性に合わせたトイレの選択と設置>
猫のトイレは習性を上手に利用するように作られているため、しつけは比較的簡単です。きちんと猫用のトイレと猫砂を準備しておきましょう。
猫のトイレや猫砂にはいろいろなタイプがあります。最初は、ブリーダーさんやペットショップで使用していた物と同じタイプを用意しておくと良いでしょう。
トイレは、飼育頭数+1個の設置が基本です。
<お迎え当初の注意事項>
猫は優秀なハンターであると同時に、獲物でもあります。そのため、自分の縄張り以外の場所にいる時には、不安でたまらなくなります。
お家に迎えられたばかりの猫ちゃんも、初めての場所に初めてのご家族と、とても不安な状態です。可愛さのあまりつい構いすぎたくなると思いますが、そこはグッと我慢をして、新しい環境に早く慣れてもらうことを最優先に考えましょう。
<安心できる隠れ家を作る>
お迎えした猫ちゃんがまだ子猫の場合は、ケージの中で安全に過ごしてもらいながら、徐々に慣らしていくと良いでしょう。
室内で過ごせるようになった後も、猫ちゃんが安心できる隠れ家が必要です。身体にピッタリのサイズで、四方八方が囲まれている形だと落ち着けます。段ボール箱でも構いません。不意の来客時にもすぐに隠れられるよう、複数箇所に用意しましょう
また部屋全体を見渡せるような棚の上などの高い場所も、猫ちゃんのために開放してあげてください。キャットタワーを設置するのも良いでしょう。
体の健康管理
<かかりつけの動物病院を作りましょう>
猫ちゃんをお迎えしたら、できるだけ早めに動物病院で健康診断を受けることをおすすめします。そして、通いやすくて信頼できる動物病院をみつけ、かかりつけにしてください。
かかりつけの病院は、猫ちゃんの健康状態をよく知っていて、病気のことやお手入れのことなどを気軽になんでも相談できる場所になります。
<病気の予防>
猫には、狂犬病のように法律で定められている予防接種はありません。しかし、感染症を予防できる混合ワクチンの接種や、ノミ・ダニ、フィラリアなどの寄生虫の予防、健康診断などの定期的な受診は、猫ちゃんを元気に長生きさせることにつながります。
かかりつけの病院と相談しながら、適切なタイミングに適切な内容の予防医療を行いましょう。
<避妊・去勢手術やマイクロチップの装着>
繁殖を目的としていない場合は、避妊・去勢手術をおすすめします。望まない妊娠を避けられ、かつ特定の病気も予防できます。発情に伴うマーキングや脱走などの防止にもなります。
またマイクロチップの装着と飼い主様の情報登録で、万が一脱走したりはぐれたりした場合も、再会できる確率が高くなります。
<食事管理>
猫ちゃんは完全肉食性なので、人間や犬とは異なる栄養バランスの食事が必要です。猫専用で、かつ年齢ステージに適した食事を与えましょう。
欲しがるままにおやつを与えてはいけません。猫にとっても肥満は万病の元です。適量を上回る食事量にならないように、管理しましょう。フードの袋に記載されている給餌量は、あくまでも目安です。体重の増減を確認しながら、猫ちゃんの適量をみつけてください。
<事故予防>
平常時の注意事項でもご紹介した通り、猫ちゃんが事故に遭わないための予防措置も、飼い主様の役目です。口にすると危険なものを遠ざけるのはもちろん、その他にも下記のような事故への予防も必要です。
・閉じ込め
・水の溜まった浴槽への落下
・火のついているガス台に上がる
猫は身体が柔軟なので、入れないだろうというような狭い隙間から中には入り込み、閉じ込められることがあります。棚や引き出しなどへの閉じ込めには注意が必要です。
心の健康管理
<遊び>
遊びは、狩りのシミュレーションです。猫じゃらしなどを獲物に見立てて飼い主様が上手に動かすことで、猫ちゃんは本気で狩りを行います。この狩りごっこは、運動量の確保とストレス発散のために、短時間でも良いので毎日行いましょう。
ただし、飼い主さんの手や足を獲物に見立てて遊ぶと、人の手や足は噛んでも良いものだと誤解させます。遊ぶ時には必ずおもちゃを使いましょう。
<適度な刺激のある生活>
本来猫は単独生活のため、長時間の留守番にも適しています。しかし、退屈な時間が延々と続く毎日は、良い暮らしとは言えません。お留守番が多い猫ちゃんにも、適度な刺激のある生活が必要です。例えば、窓から外の景色を見ることも良い刺激になります。市販の知育玩具を利用するのも良いでしょう。
<しつけ>
猫は、基本的には人の言うことを聞きません。自分の身を守る術は、自分の判断だけだからです。そのため、しつけはちょっと大変だと感じるかもしれません。
しつけの基本は、褒めることです。して欲しいことをした時には、ご褒美のおやつをあげる、気持ちの良い場所を撫でてあげるといった方法で褒めてあげましょう。
して欲しくないことをした場合は、短く簡潔な言葉で「ダメ!」と大きな声を掛けます。机を叩いて大きな音を出しても良いでしょう。ただし、現行犯かつその行為の直後(1秒以内)に限ります。それ以上時間が経つと、猫は大きな音(罰)と自分の行為の関係を結び付けられません。いずれにしても、猫にもしつけは必要です。根気よく向き合いましょう。
<猫の爪とぎ対策>
爪は狩りの際の重要な武器で、爪とぎは常に鋭い爪を維持するために必要不可欠な行動です。そのため、やめさせることはできません。
よくあるのは、高価な家具で爪とぎをすることです。最も確実な対策は、猫の手の届かない場所にしまうことです。猫が入れない部屋を1室作り、大切な家具や装飾品はその部屋に置くと良いでしょう。
可能であれば「この家具は猫ちゃんにあげる」と諦めてしまうのも、飼い主様のストレスを軽減させる方法の一つです。
ポイント
ポイント
・猫が健康で幸せに天寿を全うできるかどうかは、飼い主様にかかっています。
・迎えてしばらくは、新しい環境に慣れてもらうことを優先しましょう。
・体の健康管理には、通いやすくて信頼できるかかりつけの動物病院が役に立ちます。
・心の健康管理のためには、狩りごっこの遊びや適度な刺激が必要です
・猫にもしつけは必要です。適切な方法を用いて根気良く向き合いましょう。
・猫に爪とぎをやめさせることはできません。