寒さに弱い犬種の冬の健康管理
寒さに弱い犬種、強い犬種があります
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
一般的に、犬は人よりも寒さに強いと言われていますが、年齢や犬種によっては寒さに弱い犬もいます。寒さは健康的にも悪い影響を与える要因になりますので、冬は特に健康管理に気を使う必要があります。
前々回のブログでは、冬にかかりやすい病気をご紹介し、それらを意識した対策を中心に、愛犬や愛猫が元気に冬を過ごすためのポイントを紹介させていただきました。今回は、寒さに弱い犬種、強い犬種をご紹介します。さらに寒さに焦点を当てて、冬の健康管理ポイントについてお話ししたいと思います。
犬種によって異なる寒さ対策が必要です
一般的には、犬は人よりも寒さに強いと言われています。実際、小型犬の体温は38.6〜39.3℃、大型犬の体温は37.5〜38.6℃程度あり、人よりも体温が高いです。その分、寒さにも耐性があるという訳なのです。
しかし、一口に犬と言っても、毛の長さや質、被毛の構造や体の大きさの違い、また年齢の違いなどによっても寒さに対する耐性が変わってきます。
一般的に寒さに強い犬は、北の寒い地域が原産の犬種や大型犬、長毛種や被毛が二層になっているダブルコートの犬などです。なぜ大型犬が寒さに強いかと言うと、体が大きくて体重が重い方が体内で多くの熱を作るということと、体重あたりの体表面積が狭くなるために熱が外に逃げにくくなるからだと言われています。
これはベルクマンの法則といって、多くの恒温動物は、寒い地域に住んでいるものほど体が大きく体重が重い傾向にあることが知られています。地球上で最も大きな肉食獣のホッキョクグマを思い浮かべて頂くと、ピンと来るかもしれませんね。この法則が、犬にも当てはまるという訳です。
逆に、南の暑い地域が原産の犬種や小型犬、被毛が一層しかないシングルコートの犬、短毛種の犬や、体温調節が上手にできない幼齢犬や高齢犬、病気の犬などは寒さに弱いとされています。
また寒さに強い犬種であっても、長く室内飼いで育ってきた犬は寒さに対して弱くなっています。寒さに強い犬種だからと安心してしまわずに、愛犬の様子をよく観察し、寒がっている場合には防寒対策を強化してあげてください。
具体的な犬種をご紹介
少し具体的に、寒さに強い犬種、弱い犬種を挙げてみましょう。
【寒さに弱い犬種】
・暖かい地域が原産の犬種の例
チワワ(メキシコ原産)、バセンジー(コンゴ共和国原産)等
・小型犬の例
チワワ、マルチーズ、ミニチュアダックスフンド、ヨークシャテリア、パピヨン、イタリアングレーハウンド、ボクサー、ミニチュアピンシャー、グレートデーン等
・シングルコートの例
トイ・プードル、ボストン・テリア等
【寒さに強い犬種】
・寒い地域が原産の犬種の例
シベリアン・ハスキー(ロシア原産)、秋田犬(日本秋田県原産)等
・中〜大型犬の例
ラブラドールレトリーバー、ゴールデンレトリーバー、セントバーナード、コーギー、柴犬等
・小型犬でも寒さに強い犬種
ポメラニアン、ペキニーズ、ジャック・ラッセル・テリア、ミニチュア・シュナウザー等
寒い時に犬が見せるサインを知っておきましょう
冬の寒さにより犬があまり水を飲まなくなることで泌尿器系の病気にかかりやすくなったり、免疫力が低下して感染症にかかりやすくなったり、持病を持っている犬はその持病が悪化するリスクが高まったりします。また、体が冷えることで下痢などにもなりやすいです。このように、寒さは愛犬の健康に良い影響を与えることがありません。
そこで、飼い主様には愛犬が寒がっている時に見せるサインに気付いていただきたいと思います。具体的には、愛犬が次のような仕草や行動を見せている時には、寒がっていると思って、防寒対策を強化していただきたいと思います。
・小刻みにブルブルと震えている
・ケージや部屋などの隅の方で体を小さく丸めている
・ベッドの下などに潜り込んでいる
・いつもよりも水を飲む量が少ない
・散歩に行きたがらない
・いつまでも寝ていて起きてこない
・いつも以上に人の側に居たがる
もし、上記のような様子を見て部屋の中を温めたのに改善せず、いつまでも震えていたり丸まったりしたままでいるような場合は、病気の可能性があります。そのような場合は、なるべく早めに動物病院に連れてきてください。
防寒対策は安全を重視しましょう
愛犬を快適に過ごさせるためには、室温を20℃前後、湿度を50〜60%程度を目安に、一定に保てるように工夫をしてあげましょう。
エアコンの場合、暖かい空気は上の方に行き、床は冷気が溜まりやすいということに注意してください。できれば、サーキュレーターなどを使って、空気が部屋全体に回るようにしてください。特に、犬はお腹側の毛が少ないので、上から毛布を掛けるよりも下側に敷く方が効果的です。温度計は犬の背の高さに合わせたところに置くと良いでしょう。
また、暖房器具はなるべく火を使わないものを使用することをおすすめしますが、ストーブしかない場合はストーブの周囲を柵などで囲い、愛犬がストーブに近づけないようにガードするなどの工夫をしてください。
電気製品を利用する場合は、電気コードをかじってしまう事故を起こさないように注意する必要があります。特に飼い主様がお留守の時にはスイッチをつけっぱなしにせず、コード類などを片付けておきましょう。
コードレスの床暖房などは理想的な暖房器具ですが、床全面が温まってしまうと暑くなった時に犬が避難できないので、一部にスノコを敷くとか、ソファに上がれるようにするなどの逃げ道も確保してあげましょう。
留守中に電気製品を使えない時には、ケージと壁の間に段ボールを挟む、ケージの上から毛布などを覆いかぶせる、ケージの中にフリース素材の布や毛布を入れておく、保温効果の高い洋服を着せる、サークルの下に断熱材を敷く、タオルを巻いた湯たんぽを入れておくなどの工夫が有効です。
なお、犬がコタツの中で熱中症になる事故が毎年発生していますので、愛犬をコタツの中に入れないようにしましょう。
また、散歩もなるべく暖かい時間帯を選ぶようにし、帰宅後に愛犬の足や耳の先、尻尾などを触って、冷たくなっていた場合は温かいタオルなどで温めてあげる等のケアも必要です。
愛犬の様子をよく観察し、寒がっている時には安全に温めてあげられるように準備をしてあげてください。病気を発症する前に対策をすることが重要です。
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