【獣医師解説】犬の肉球の秘密|構造・トラブル・ケア方法を徹底解説

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

愛犬の肉球をじっくり観察したことはありますか?ぷにぷにとした可愛らしい見た目に目が行きがちですが、肉球は犬の健康を支える重要な役割を果たしています。

 

今回は、肉球の構造や役割、トラブルへの対処法、正しいケア方法まで詳しく解説していきます。

なぜ犬に肉球があるのか?

肉球は、陸上で生活する食肉目(イヌ、ネコ、クマなど)の動物に特有の器官です。犬の祖先であるオオカミは、雪や砂利など厳しい環境で生き抜くため、地面からの衝撃を吸収し、寒冷地にも適応できる肉球を進化させてきたと言われています。

 

現在の犬種にも、この進化の名残が見られ、肉球は多様な環境に対応する重要な役割を果たしています。

 

肉球の解剖学的構造

肉球の構造は、一見シンプルに見えますが、以下のような多層構造により、複雑で精巧に作られています。

 

犬の肉球は、大きいもの、小さいもの、少し離れた場所にあるものと複数あり、それぞれに名前がついています。基本的には、爪の生えているすぐ下にそれぞれ小さい肉球があり、真ん中に大きな肉球が1つあります。

 

前足には人の親指にあたる指、「狼爪(ろうそう)」が生えていますが後ろ足にはありません。そのため、前足と後ろ足でも肉球の数が異なります。

 

前足
・指球(しきゅう):爪のすぐ下にある5つの小さな肉球
・掌球(しょうきゅう):指球の下にある一番大きな肉球
・手根球(しゅこんきゅう):手首のあたりにある肉球

 

後足
・趾球(しきゅう):爪のすぐ下にある4つの小さな肉球
・足底球(そくていきゅう)趾球の下にある一番大きな肉球

 

犬の足跡を見ると、前足も後ろ足も同じように見えますが、それは犬が足先(爪先)だけを地面に付けて歩いているからです。

 

肉球が果たす5つの重要な役割

1. 衝撃吸収
肉球は、ハニカム構造と弾力性のある脂肪層により、走行時や着地時の衝撃を和らげ、関節への負担を軽減しています。この機能がなければ、激しい運動や長時間の活動に耐えられません。

 

2. 温度調節
肉球には汗腺と特殊な血管配置があり、効率的な温度調節を行っています。寒冷時には血液を保温し、暑熱時には汗腺を通じて体温を下げる仕組みが働いています。

 

3. 運動制御
スパイク状の表面構造が滑りやすい路面でのグリップ力を高めています。急な方向転換や急停止時にも高い安定性を発揮しています。

 

4. 感覚器官
肉球には神経終末が集中しており、地面の温度や状態を感知する高度な感覚器官として機能しています。危険物の検知や環境情報の収集にも役立っています。

 

5. 効率的な体重支持
肉球のハニカム構造により、体重が効率的に分散されています。この仕組みが長時間の立位や安定した歩行を可能にし、疲労を軽減しています。

 

肉球のトラブルとその対処法

分厚くて丈夫にできている犬の肉球ですが、やはり直接地面に接触しているので、トラブルが生じることもあります。
犬によく見られる肉球のトラブルは、下記のようになります。

 

乾燥・ひび割れ
肉球が乾燥すると、ひび割れや炎症の原因になります。適切な保湿クリームを使用し、洗浄頻度を調整することで予防が可能です。

 

火傷
夏場の熱いアスファルトや砂浜は、肉球の火傷を引き起こします。涼しい時間帯に散歩を行い、肉球保護クリームや靴の使用を検討してください。

 

外傷・異物が挟まる
ガラスや鋭利な物を踏むと切り傷を負うことがあります。傷口はすぐに洗浄と消毒を行い、異物が挟まっている場合は獣医師に相談してください。

 

赤く腫れる
いつもよりも肉球が赤く腫れているような場合は、炎症を起こしていると考えられます。炎症の原因は、アレルギー、常在菌の異常増殖、怪我などを気にして舐めすぎたなど、さまざまなことが考えられます。愛犬が足先を気にしている様子に気づいたら、動物病院に相談してください。

 

硬化
犬ジステンパーウイルス感染症の症状の一つとして、肉球が硬くなることがあります。とても致死率の高い怖い病気ですが、ワクチン接種で予防できます。
ワクチンについてはこちらをご覧ください

 

獣医師が教える正しいケア方法

前述の通り、洗い過ぎのような過剰なケアは不要ですが、基本を押さえて足の裏の清潔を保つことが大切です。
個々の愛犬の体質や性格に合わせたケアを考えてあげましょう。

 

散歩後は肉球を優しく洗い、乾燥させましょう。
肉球や指の間を定期的に観察し、傷や異物の有無をチェックしましょう。
保湿クリームやオイルを使用して、乾燥を防ぎましょう。

 

季節別ケアのポイント
・夏季:アスファルトの温度を確認し、涼しい時間帯に散歩を行ってください。保護クリームの使用や水で冷やすケアも有効です。
・冬季:乾燥対策として保湿ケアを徹底し、融雪剤が付着した場合は速やかに洗浄してください。

 

肉球の健康を守るために

肉球は愛犬の健康に欠かせない器官です。適切なケアを行い、トラブルがあれば早めに対処することで、快適な生活をサポートできます。当院では肉球のトラブルやケアに関するご相談も承っていますので、お気軽にお問い合わせください。

 

まとめ

・肉球は衝撃吸収や温度調節、感覚器官としての役割を持つ重要な器官です。
・過剰なケアは逆効果となるため、適切な洗浄と保湿を心がけましょう。
・夏場や冬場の環境変化に応じたケアが必要です。
・散歩後は肉球の状態を確認し、傷や異物があれば適切に処置してください。
・トラブルが深刻化する前に、獣医師に相談することで健康を守ることができます。

 

横須賀・三浦・逗子・葉山エリアを中心に診療する動物病院
つだ動物病院

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