愛犬愛猫の健康基盤を作る大切な食事

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

私たち人と同じように、犬や猫も、健康の基盤は適度な運動と食事から得られる栄養によって作られます。

栄養は、多すぎても少なすぎても、そして栄養素のバランスが悪くても、健康に大きな影響を及ぼします。

ご自身やご家族の健康を考えて普段のお食事をご用意されているのと同じように、愛犬や愛猫の食事についても、彼らの健康について考えた上でご用意されていると思います。

 

ここで気をつけて頂きたいのは、愛犬や愛猫の食事については、人に必要な栄養の考え方と同じではないということです。

犬には犬の、猫には猫の、それぞれに必要な栄養のバランスがあり、それを守ることで愛犬・愛猫の健康を維持することができるのです。

 

今回は、ついつい人と同じように考えてしまったり、またはあまり関心を持たなかったり、逆に神経質になり過ぎてしまったりといった傾向になりがちな、愛犬・愛猫の食事についてお伝えしたいと思います。

 

 

人は雑食性なので、肉や魚も食べれば、野菜や穀物なども食べます。

犬は元々肉食性の動物でしたが、長い間人と一緒に暮らしているうちに、かなり雑食性寄りの肉食になりました。

猫も長い間人と一緒に暮らしてきたのですが、人から「ねずみを狩る能力」を買われていた猫は、長く自らの食事を自らの狩によって手に入れていたため、今でも純粋な肉食性を保っています。

そのため、人、犬、猫が必要とする栄養素は同じなのですが、それぞれが必要とする栄養のバランスには大きな違いがあるのです。

 

たとえば、必要とするタンパク質の量です。

肉食性の動物は、雑食性の動物よりも多くのタンパク質を必要とします。

そのため、1,000kcalの食事に含まれるタンパク質の推奨量を比較すると、下のグラフのようになります。(環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン」より)

 

さらに、人、犬、猫が必要とする三大栄養素のバランスを比較すると、下のグラフのようになります。(環境省「知って納得!ペットフードの表示」より)

このグラフは、動物の種類によって三大栄養素の適切なバランス(比率)が異なることを示すものですが、これだけではなく、猫は人や犬が体内で合成できるタウリンを合成できないので、食事からタウリンを摂取しなければタウリン欠乏症という病気になってしまうなど、細かい点にも色々と異なる点があるので注意が必要です。

ちなみに、タウリンは魚介類や動物の内臓などに多く含まれています。

 

もう少し身近な例を挙げてみましょう。

人も犬も猫も哺乳動物なので、子供の頃は母乳を飲んで栄養を摂取します。

人の場合、子供から大人まで、牛乳は良質な食品の一つとして広く飲まれています。

しかし、子犬や子猫を牛乳だけで育てようとしてはいけません。

犬や猫の母乳は、それぞれに適した栄養バランスになっているので、牛乳ではタンパク質やエネルギー(脂肪)が不足してしまうからです。

さらに、子犬や子猫は牛乳に含まれている乳糖をうまく消化できないので、下痢してしまうことも多いのです。

このように、同じ哺乳動物の乳であり、人にとってはとても良質な食品の牛乳ですが、犬には犬の、猫には猫の乳を飲ませるべきだと考えてください。

 

説明が長くなってしまいましたが、犬には犬に、猫には猫に適した食事があるのだということをしっかりと認識して頂きたいと思います。

人にはおいしくて栄養満点の食材であっても、犬や猫には中毒を引き起こすような食材もたくさんあります。

これらのことを踏まえた上で、愛犬や愛猫への食事を用意して頂ければと思います。

 

私は、手作り食に賛成です。

愛犬や愛猫の健康を願い、飼い主様が心を込めて作った食事は、きっと愛犬や愛猫には美味しくて栄養満点に違いありません。

飼い主様が選んだ材料だけが使われていて、余計な添加物も含まれていませんので、飼い主様にとっても安心して食べさせられるでしょう。

 

ただ、犬や猫の栄養のことをきちんと知ってから作って頂きたいということです。

特に、犬と猫が一緒に暮らしている場合は、犬用と猫用をきちんと作り分け、適切に与えて頂きたいのです。

また、人と同じように、犬や猫にもそれぞれの年齢(ライフステージ)に見合った栄養バランスや摂取エネルギーがありますので、そのことも考慮してあげましょう。

 

さらに味付けについても、犬や猫が摂取すべき1日の塩分摂取量(体重5kgの避妊去勢済みの場合、犬=0.18g/日、猫=0.33g/日)も意識しましょう。

人が美味しいと感じる味付けは、犬や猫の美味しいとは異なっていて、塩分過多になってしまうということを知っておいてください。

 

ここまでの説明を読まれた飼い主様は、毎日の食事を100%完全な手作り食にするのは荷が重すぎると感じてしまったかもしれません。

そういう場合は、手作り食だけでは不足してしまう栄養分については、市販の犬や猫用のフードを利用するというのも一つの解決策になるでしょう。

 

 

もちろん、手間暇かけて作った手作り食を食べさせることだけが最良の食事だというわけはありません。

毎日忙しくて、愛犬や愛猫の食事どころか、人の食事をゆっくりと作る時間もないという飼い主様だって大勢おられるでしょう。

そいう場合は、市販のフードを愛犬や愛猫に食べさせてあげましょう。

 

もしかすると、飼い主様の中には「市販のフードは信用できない。原材料だって人間の食品ほどきちんと管理されていないはずだ。」と考えておられる方がいらっしゃるかもしれません。

それは、おそらく2007年に米国で起こった、有害物質であるメラミンが混入した市販フードを食べた多くの犬や猫が死亡したという事件のせいではないでしょうか。

このフードは、日本でも輸入販売されていたことが判明しています。

 

人の場合は、食品衛生法や食品安全基本法という法律により、飲食の安全性を確保するための規制が定められています。

しかし、ペットフードの衛生や安全性に関しては、法律による規定がありませんでした。

しかし前述の2007年の事件をきっかけに、ペットフードに関しても、愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(ペットフード安全法)という法律が制定されました。

 

この法律では、農林水産大臣と環境大臣が実施できる内容や業者がやらなければならないことを、次のように定めています。

 

1. 基準または規格の設定と基準等に合わないフード製造等の禁止

農林水産大臣と環境大臣は、ペットフードの基準または規格を定め、この基準または規格に合っていないペットフードの製造、輸入、販売を禁止することができる。

 

2. 有害な物質を含むペットフードの製造等の禁止

農林水産大臣と環境大臣は、有害な物質を含むペットフードの製造、輸入、販売を禁止することができる。

 

3. ペットフードの廃棄等の命令

農林水産大臣と環境大臣は、製造業者、輸入業者、販売業者に対して、廃棄や回収といった必要な取るべき措置を命ずることができる。

 

4. 製造業者等の届出の義務

製造業者、輸入業者は、氏名、事業場の名称等を農林水産省及び環境省に届け出なければならない。

 

5. 帳簿備付けの義務

製造業者、輸入業者、販売業者(小売の場合は除く)は、販売等をしたペットフードの名称、数量等を帳簿に記載しなければならない。

 

6. 報告徴収、立入検査等

農林水産大臣または環境大臣によるペットフードの製造業者等からの報告徴収、製造業者等への立入検査等について定める。

 

 

したがって、2007年当時とは異なり、今ではこの法律によって国内で製造されたり海外から輸入されたりしたペットフードについては、基準・規格に合ったもので、有害物質を含まないものしか販売できないようになりました。

万が一、基準・規格に合っていなかったり、有害物質を含んだりしているペットフードがみつかった場合は、それらの販売や製造を禁止、廃棄等をさせることができるようになったのです。

また、ペットフードの検査内容や分析方法についても、「愛玩動物用飼料等の検査法」により細かく定められています。

 

このペットフード安全法が対象としているのは、「犬・猫の栄養に供することを目的として使用されるもの」です。

そのため、犬や猫が口にする可能性があっても、「おもちゃ」や「ペットフードの容器」などは対象に含まれません。

おもちゃとしての使用を目的としている「またたび製品」や毛玉を吐き出させることを目的としている「猫草」などは対象に含まれませんので、そこは注意が必要です。

 

ペットフード安全法が対象としているペットフードには、2種類の分類法があります。

1つは使用目的による分類で、もう1つは水分含量による分類です。

それぞれの分類を、下表にまとめましたので参考にしてください。

 

また、前述の「愛玩動物用飼料等の検査法」では、検査方法を下記の種類別に定めています。

 

 

ペットフード安全法では、下記の内容を国内で販売されるペットフードのパッケージに記載しなければならないとも定めています。

 

1. 名称

商品名だけではなく、犬用なのか猫用なのかが分かるように明記することが義務付けられています。

 

2. 賞味期限

ペットフードのパッケージに記載されている賞味期限の意味は、美味しく食べることができる期限ではなく、「栄養価や品質が保証できる期限」なので間違えないようにしましょう。

 

3. 原材料名

当該フードの製造に使用した「すべての原材料と添加物」を記載しなければなりません。

 

4. 原産国名

当該フードの最終加工が行われた国を記載します。

 

5. 事業者名及び住所

輸入者、製造者または販売者の種別、事業者名と住所を記載しなければなりません。

 

 

また、ペットフード安全法の規定ではありませんが、不当景品類及び不当表示防止法に基づいて定められた規約で、消費者が適正に商品を選択できるように業界で設定されているルールとして、下記も表示されています。

 

1. 用途

「総合栄養食」「間食」「療法食」「その他の目的食」のいずれの目的であるかがわかるように記載されています。

 

2. 内容量

当該フードの正味料がg(グラム)やmL(ミリリットル)などの単位で記載されています。おやつの場合は、個数表示の場合もあります。

 

3. 与え方

当該フードの目的に合わせて、1日に与える量や回数等の目安が記載されています。ただし、1日に与える量の基準として記載されている体重は、犬や猫の現在の体重ではなく「理想体重」を示していますので、間違えると愛犬や愛猫を肥満にしてしまう原因になりますので注意しましょう。

 

4. 成分

当該フードの主要な栄養成分や水分量が%で記載されています。また、多くのフードでは、kcal/100gでも記載されていますので、この数値を上手に利用して愛犬・愛猫の体重管理を行いましょう。

 

 

犬や猫の肥満率は年々上昇してきています。

しかし、愛犬や愛猫が肥満だと気付いておられない飼い主様がほとんどです。

それは、フードの目的や与え方について、正しく理解されていないせいもあるのかもしれません。

 

市販のフードを中心とした食事の場合、メインの食事は必ず「総合栄養食」にしてください。

また、愛犬や愛猫の年齢(ライフステージ)によっても、必要とするエネルギー量や栄養バランスが異なります。

メーカーによっては、ライフステージ別にフードを分けている製品もありますので、上手に利用してください。

 

もし、しつけやコミュニケーションの補助としてどうしてもおやつをあげたい場合は、おやつも含めて1日に必要なエネルギー量を超えないようにしなければなりません。

また、栄養バランスが崩れてしまいますので、おやつは1日に必要なエネルギー量の20%以内に収めるようにしましょう。

 

 

最後に、市販のフードの保管方法についてお話しします。

 

フードの保管については、水分含量を意識して保管方法を変えてください。

フードの分類別の保管方法を下表にまとめました。

 

特に、夏だからといってドライタイプやソフトドライタイプのフードを冷蔵庫で保管しないように注意してください。

これらのタイプのフードを冷蔵庫に保管してしまうと、出し入れの際にフードの表面に結露が生じてしまい、カビが発生する原因になってしまうからです。

 

袋の開封口を密閉するためには、100円ショップ等で入手できる、キッチン用品の袋留めクリップを利用すると良いでしょう。

また、給仕した食事を食べ残してしまった場合、水分含量が多いフードについては、なるべく早く片付けるようにしてください。

そして、給仕する食器の衛生管理も合わせて注意しましょう。

 

犬は1回で1日分の食事ができるくらい大きな胃を持っていますが、食事は1日数回に分けて食べさせるようにしましょう。

猫は胃が小さいので昼夜を問わず、1日に何度も少しずつ食べるという習性を持っています。

そのため猫の場合は、ドライフードなら置き餌にして、1日中いつでも自由に食べられるようにしてあげても大丈夫です。

その場合も、給仕時間は決まった時間にして、食べた量をきちんと測ることで健康管理を行ってください。

ただし、1日数回に分けて給仕し残した場合は下げてしまう方が、より良い食事方法です。

定期的に交換し、食器もその都度洗って清潔にしてあげましょう。

 

愛犬、愛猫の健康の基盤は食事から作られます。

神経質になり過ぎる必要はありませんが、愛犬や愛猫のために必要な最低限の知識を身につけ、適切な食事になるように配慮してあげましょう。

 

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