犬と猫の年齢と介護生活

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犬猫年齢を人間年齢に換算

犬と猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

「うちの子、人間だと○歳なんです。」などと話しておられる方を見かけることはないでしょうか。なぜ、犬や猫の年齢をわざわざ人間に換算する必要があるのだろうと思われる方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし、人間よりもずっと寿命の短いワンちゃんや猫ちゃんのライフステージを、飼い主様が実感を持って把握するためにはとても有効な方法だと思っています。「うちの子は9歳になった」と思うのと、「うちの子、人間で言うと52歳になった」と思うのでは、同じ子に対しても随分と異なる印象になるのではないでしょうか。

 

今回は、現在もっとも一般的だと考えられている、ワンちゃんや猫ちゃんの年齢を人間の年齢に換算する方法と、最近増えてきている彼らの介護への準備について、お話ししたいと思います。

 

計算式と対応表の紹介

犬猫の年齢換算表

 

上の表は、小型犬・中型犬、大型犬、猫の年齢をヒトの年齢に対応させた表です。全ての年齢を網羅すると大きな表になってしまうので、子犬・子猫期、成犬・成猫期、中高年期、高齢期に分けて、その中の代表的な年齢を載せてみました。

 

最近は、老化に伴って進行する遺伝子ゲノムDNAのメチル化に着目した新しい計算方法についても研究が進んでいます。この考え方を用いると、上でご紹介した年齢とはだいぶ異なった年齢になります。しかし、この考え方はまだラブラドールレトリーバーを主として研究されているのみで、小型・中型犬や猫についてはまだ適用できません。

 

そういった点からも、現在最も一般的に使われている犬や猫の年齢を人間の年齢に換算する考え方が、上の表だと考えても良いでしょう。

 

特徴的なのは、最初の1〜2年での成長がとても早いことと、ある年齢に達した後は、成長の速さが一定になることです。そして、小型・中型犬と猫の年のとり方は同じだと考えられていることが分かります。

 

この特徴から、小型犬・中型犬と猫の場合は、2歳を過ぎると下記の計算式で人間年齢に換算することができます。

人間の年齢 = 24 + (犬・猫の年齢 – 2 ) × 4

 

また同じように、大型犬の場合は1歳を過ぎると下記の計算式で人間年齢に換算することができます。

人間の年齢 = 12 + (犬・猫の年齢 – 1 ) × 7

 

犬や猫の長寿化

上から覗く猫

 

公益社団法人日本獣医師会が2011年1月に発行した日本獣医師会雑誌(日獣会誌)の第64巻第1号に掲載されている「家庭動物(犬猫)の高齢化対策」によると、1980年の犬の平均寿命はわずか2.6歳、猫は3歳でした。それが、2009年には犬が15.1歳、猫が12.6歳にまで延びています。

 

さらに、一般社団法人ペットフード協会が行った「令和2年全国犬猫飼育実態調査」では、2020年の犬の平均寿命は14.48歳、猫は15.45歳と、犬は若干落ちていますが、猫はさらに延びていることが分かります。

 

調査母体が異なりますので、上記を全く同じように比較することはできないかもしれませんが、それでもこの40年の間に、犬や猫の平均寿命は5倍以上に延びたと言っても良いようです。

 

これは、飼い主様がワンちゃんや猫ちゃんを家族の一員であると考え室内飼育が一般的になったこと、ペット保険の普及もあり、ワンちゃんや猫ちゃんを動物病院につれてくることが一般的になってきたこと、良質なペットフードが普及してきたこと、獣医療の研究が進んできていることなどが原因だと思われます。

 

一緒に暮らしているワンちゃんや猫ちゃんが長生きしてくれることはとても嬉しいことですが、それと同時に考えなければならないのが、ワンちゃんや猫ちゃんの老化の問題です。平均寿命が延びるということは、そのまま老後の生活期間が延びるということだからです。

 

もちろんワンちゃんや猫ちゃんにも個体差がありますので、必ず介護が必要になるとは限りません。しかし、いずれはやってくるであろう愛しいパートナーの介護について、準備をしておくことが大切なのではないでしょうか。

 

介護への備えが大切

犬の食事

 

ワンちゃんや猫ちゃんの老化のサインとしては、主に下記のようなことが挙げられます。

 

<身体的な変化>

・毛色の濃い子の場合は、白髪が混じるようになる

・被毛の質が低下し、艶がなくなったりパサついたり割れ目ができるようになる

・視覚、嗅覚、聴覚が少しずつ低下してくる

・フードの好みが変わったり食欲がなくなったりする

・消化能力が低下して、下痢や嘔吐などの消化器症状が増えてくる

・筋力が低下し、特に後ろ脚の太腿が細くなってくる

・歩いたり動いたりするのを嫌がるようになる

・猫の場合は、ジャンプをして高い場所に上がれなくなる 等

 

<心理面での変化>

・好奇心が減り、周囲にだんだん無関心になってくる

・寝ている時間が少しずつ増えていく

・以前より甘えん坊になったり攻撃的になったりといった変化が見られる

・ぼうっとしている時間が増えてくる

・飼い主様の呼びかけや指示に従わない(反応しない)ことが増えてくる 等

 

こういった変化は徐々に表れるため、毎日一緒におられる飼い主様には、かえって気付きづらいかもしれません。しかし、気付いたら老化が進んでいて、機敏に反応できずにケガをしてしまったり、お気に入りの場所に上がり下りする際にうまくできずにケガをしてしまったりするかもしれません。

 

愛犬や愛猫が人間年齢で50歳に近づいてきたら、飼い主様は意識的に彼らの行動や様子を観察し、僅かな変化にも気付けるようにしてあげましょう。そして、彼らの老化に合わせて住環境を改善し、少しでも彼らが安全で快適に過ごしやすくなるように、段差をなくす、必要に応じてステップを設置する、床を滑りにくくする、前かがみにならずに食べられるように食器の高さを調節する等の工夫をしてあげてください。

 

ポイント

カートで散歩する犬

 

ポイント

・1歳を過ぎた大型犬の場合:人間の年齢 = 12 + (犬・猫の年齢 – 1 ) × 7

・2歳を過ぎた小型・中型犬・猫の場合:人間の年齢 = 24 + (犬・猫の年齢 – 2 ) × 4

・愛犬・愛猫が人間年齢の50歳に近づいたら、老化のサインに注意しましょう。

・平均寿命が延びるということは、愛犬愛猫の老後の生活が延びるということです。いずれは訪れる愛犬愛猫の介護の準備をしておきましょう。

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