犬に多い外耳炎

犬猫の病気や症状

犬に多い外耳炎

耳を診察される犬

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

アニコム損保さんが2012年に発表した保険金請求理由のランキングでは、犬の1位が外耳炎、猫も3位に外耳炎がランクインされていました。今年発表されたアイペット損保さんによるランキングでは、犬の2位が外耳炎でしたが、猫の外耳炎は10位以内にランクインされていませんでした。

 

最近は、猫の飼育方法も完全室内飼育が一般化してきています。そのため、猫の場合は外でミミヒゼンダニに寄生されたり花粉などの異物が混入したりするといった、外耳炎の発症リスクが低下したためかもしれません。

 

いずれにしろ、犬の外耳炎は相変わらず多い状態です。しかし治療薬も進化し、良いお薬も開発されてきています。以前もこのブログで外耳炎のお話を取り上げましたが、最近のお薬の紹介なども含めて、改めて外耳炎についてお話したいと思います。

「湿度の高い夏は外耳炎に注意!」へのリンク

 

こんな症状には要注意!

痒がる犬

 

頭から飛び出している、いわゆる耳の部分を耳介といいます。耳介には穴があります。耳の穴です。この穴の入り口から鼓膜までの間を外耳道といい、この外耳道に炎症が起きる疾患が外耳炎です。

 

人間の場合、外耳道はほぼ水平にまっすぐと伸びていますが、犬や猫の外耳道は、一旦垂直に下がり、そこからL字型に曲がって水平に鼓膜へと続きます。そのため、耳の奥の方までを目視で確認することはできません。

 

しかし外耳炎の痒みや痛みに伴うしぐさや目に見える耳介の様子で、外耳炎を察知することができます。

 

ワンちゃんや猫ちゃんに下記のような症状が見られた場合は、外耳炎の可能性が高いので、かかりつけの動物病院に診てもらってください。

 

・しきりに耳を掻く

・耳を地面や家具などにこすりつける

・しきりに頭を振る

・特定の耳(痛みや痒みを感じている耳)を下に傾ける

・耳介や穴の周辺に耳垢が溜まっている

・耳から悪臭がする

・耳に脱毛が見られる

・耳の穴の中や周りが赤く腫れている

 

原因を見極めた治療が大切

顕微鏡を覗く医師

 

もともと、動物の体には自然治癒力が備わっています。耳も同じで、耳の中を自浄化する力が備わっているのですが、さまざまな原因によりその機能が阻害されることで、耳の中の環境が悪化し、炎症が起こります。そしてその結果、耳の中に細菌や真菌(カビの一種)が増えることもあるのです。

 

自然治癒力を阻害する大きな原因だと考えられるのが、アレルギーです。アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを持っている犬の8割以上が外耳炎を併発しているといわれています。

 

他にも、耳の中に入ってしまった草の実などの異物やミミヒゼンダニなどの寄生虫の感染や、外耳道にある耳垢腺という分泌腺の疾患、免疫の問題、耳にできた腫瘍、綿棒等による誤った耳のケアなど、さまざまなことが外耳炎を発症させる原因になり得ます。

 

犬の場合も猫の場合も、外耳炎の場合はその原因を追求することでその後の治療方法が変わってきます。そのために、動物病院ではさまざまな検査を行います。耳鏡という器具を使って外耳道や鼓膜の状態を確認したり、耳垢にミミヒゼンダニなどの寄生虫がいないか、また細菌や真菌が増殖していないかなどを顕微鏡で確認したりします。

 

そして耳洗浄や、原因・症状に適した薬の投与による治療を開始します。犬の場合は専用の洗浄液等を使った耳洗浄が治療として有効です。当院でも、飼い主様がご自宅でワンちゃんをシャンプーされる際には、一緒に耳も洗うことを推奨しています。

 

また、外耳炎の場合は痛みを伴っていることが多く、普段は飼い主様に耳を触らせてくれるワンちゃんや猫ちゃんも、痛みのために耳を触らせてくれない場合も多いです。そのため、ご自宅でしっかりとお薬を点耳することはかなり難しいことも多いです。そこで当院では、しっかりとお薬の効果を発揮できるように、定期的に病院で処置することをおすすめしています。

 

逆に言うと、処方通りにお薬を投与できなかったり、ワンちゃんや猫ちゃんの様子を見て良くなったと飼い主様がご判断されてお薬をやめてしまったりすることで、外耳炎が再発を繰り返し、なかなか治らない難治性外耳炎になってしまうこともあり得るのです。

 

最近の犬用外耳炎薬

オスルニア

 

では、最近の犬用外耳炎のお薬をご紹介します。以前は、外耳炎になると飼い主様がご自宅で1日1回、複数日間欠かさずお薬を連続投与する必要がありました。しかし最近は、1回の投与で持続する効果が複数日間に及ぶため、通院時に動物病院で獣医師が投薬すれば、飼い主様がご自宅でワンちゃんに投薬する必要がないお薬が出てきています。

 

1つ目のお薬は、DSファーマアニマルヘルス社のオスルニアです。このお薬は1回の投与でお薬の効果が7日間続きます。病院で耳洗浄・乾燥した後、獣医師が初回の点耳を行います。7日後に再診を行い、2回目の投与を行います。このように病院での点耳とお薬の効果を確認していきます。外耳炎の原因となる基礎疾患を持っているワンちゃんの場合は、合わせてその治療も行います。

 

ネプトラ

 

2つ目のお薬は、エランコアニマルヘルス社のネプトラです。このお薬は1回の投与で効果が28日間持続するため、動物病院で1回投与するだけで治療が完了できる可能性があります。ネプトラの場合は、1回目の投与後、28日目に再診を受け、お薬の効果の確認を行います。もちろん基礎疾患を持っている場合は、合わせてその治療も行います。

 

オスルニアもネプトラも、すべての外耳炎に効果があるという訳ではありません。しかし、なかなかご自宅でワンちゃんにお薬を点耳するのが難しい場合には、飼い主様にとってもワンちゃんにとっても、とてもストレスが少なく確実に効果を挙げられるお薬だと思っています。

 

犬猫の外耳炎のポイント

仲良く眠る犬と猫

 

ポイント

・ワンちゃんは、日頃のシャンプー時でのお耳の洗浄が効果的です

・外耳炎は、原因を見極めて適切な治療を行うことが大切です

・処方されたお薬は、処方に従ってきちんと点耳することが大切です

・最近は、動物病院で獣医師が点耳する、長期間効果が持続するお薬が出てきています

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