犬や猫に寄生するノミやダニ その種類と予防薬

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

昨年末から新型コロナウイルス感染による新型肺炎が発生し、日本でも感染が広がっています。

特にここ数日の首都圏における感染者数の急増は目を見張るものがあります。

老若男女問わず、しっかりと手洗い、うがい、咳エチケット、むやみに顔を触らない、密閉・密集・密接を避ける(室内の換気をよくする、人が大勢集まる場所には行かない、人と密な距離でのコミュニケーションは避ける)等の感染症対策を実施しながら、ご自身や愛犬・愛猫の健康管理を行ってください。

 

さて今回は、犬や猫のノミ・ダニについてお伝えしたいと思います。

 

 

目黒区にある公益財団法人の目黒寄生虫館という、寄生虫を専門に扱っている研究博物館をご存知でしょうか。

研究博物館ですが、どなたでも無料で入館できる博物館で、広くはありませんが貴重な情報をたくさん目にすることができますので、機会があればぜひ一度訪ねてみると良いと思います。

もっとも、現在は新型コロナウイルス感染対策のために臨時休館中ですが。

 

この博物館には、実際にフィラリアが大量に寄生した犬の心臓の標本などが展示されているため、愛犬や愛猫の内部寄生虫に対する予防の重要性を深く感じる方が多いようです。

しかし、ノミやダニといった外部寄生虫に関しては、「見つけたら殺せば(潰せば)大丈夫」と思ってしまう飼い主様もいらっしゃるようです。

 

しかし、愛犬や愛猫の体にノミやダニが寄生しているのを見つけても、むやみに潰したり無理やり取ろうとしたりするのはやめましょう。

ノミの場合、ノミ取り用のくしにノミが引っかかっていることがありますが、それを爪や指で潰してしまうと、ノミの体内にあった大量の卵が散乱するとか、ノミに寄生していた瓜実条虫が人に感染してしまうなどの危険があります。

ダニの場合も、体についているのを見つけて無理やり取ろうとすると、ダニの体は取れても口の部分だけが犬や猫の体内に残ってしまい、炎症を起こす、ダニの血液が犬や猫の体内に逆流してしまい感染症を起こす等の危険があります。

 

ノミやダニは、犬や猫に食いついて血を吸います。

ノミにくわれると、犬も猫も強烈なかゆみを感じます。

また、くわれたときの唾液にアレルギー反応を起こすことも少なくありません。

それだけではなく、ノミを経由して、犬や猫に瓜実条虫感染症やヘモバルトネラによる貧血を起こす危険もあります。

ダニにくわれた場合も、犬や猫にバベシアが感染して重篤な貧血を起こしたり、ライム病に感染したりする危険があります。

 

また、犬や猫に寄生したノミやダニは、人の血も吸いますし、ノミに寄生された猫にひっかかれたことが原因で、飼い主様が猫ひっかき病を発症する危険もあります。

前述のライム病も、人にも感染する病気です。

 

このように、ノミやダニも、放置してしまうと愛犬や愛猫、さらには飼い主様の健康にも大きな被害を与える危険があるのです。

 

 

具体的にノミやダニの話を始める前に、寄生虫の全般的な基礎知識についてお話をしておきましょう。

 

寄生虫とは、自分以外の他の動物の体内もしくは体表の特定の場所で、その動物から栄養分をとって生活する動物のことです。

 

寄生虫が棲みついている(寄生している)動物のことを宿主、寄生している場所のことを寄生部位と言います。

寄生虫にとって、宿主はどの動物でも良いというわけではなく、寄生虫ごとに宿主として適している動物があります。

 

寄生虫ごとに生活のパターンは異なりますが、それぞれの寄生虫の生活パターンのことを寄生虫の生活環と言い、寄生虫の感染を予防するためにとても重要な情報になります。

なぜならば、寄生虫の感染を予防するためには、その寄生虫の生活環のいずれかの箇所を断ち切ることが大切だからです。

 

寄生虫を分類すると、動物の体内に寄生する内部寄生虫と、体表に寄生する外部寄生虫に分けられます。

内部寄生虫には、コクシジウムなどの原虫類、フィラリアや回虫などの線虫類、壺形吸虫などの吸虫類、瓜実条虫などの条虫類が、外部寄生虫にはノミやシラミなどの昆虫類、ヒゼンダニやマダニなどのダニ類がいます。

 

そして、感染経路の話です。

寄生虫が宿主にどのような手段で侵入するのかを表したものが、感染経路です。

内部寄生虫の場合は体内に侵入しますので、口から侵入する経口感染が多いです。

他には、フィラリアのように蚊に刺されることで感染するという経路もありますし、妊娠中に胎盤を通して感染する胎盤感染や母乳を通して感染する経乳感染などもあります。

外部寄生虫の場合は、基本的には体表(皮膚)に直接接触することで感染する接触感染になります。

 

 

では、具体的に犬や猫に寄生するノミとダニについてお話ししていきましょう。

犬や猫によく見られるノミやダニは、下記の通りです。

 

<ヒゼンダニ>

寄生部位:表皮および上皮組織

サイズ:♂0.2~0.3mm/♀0.3~0.4mm

主な宿主:犬・猫

 

<ニキビダニ(毛包虫)>

寄生部位:毛包内、皮脂腺内

サイズ:♂0.17mm/♀0.22mm

主な宿主:犬・猫

 

<ミミヒゼンダニ>

寄生部位:外耳道

サイズ:♂0.3 mm/♀0.4mm

主な宿主:犬・猫

 

<ネコノミ>

寄生部位:表皮

サイズ:♂2~2.5mm/♀2~3mm

主な宿主:猫・犬

 

<マダニ>

寄生部位:表皮

サイズ:♂2.5mm/♀2.9mm

主な宿主:犬・猫

 

全体的に、オスよりもメスの方が大きいことがわかります。

また、耳に寄生するものもありますので、体だけではなく耳をかゆがっている場合も寄生虫の可能性があることを知っておいてください。

 

先ほど、寄生虫の感染を予防するためにはその寄生虫の生活環のいずれかの箇所を断ち切ることが大切だというお話をしました。

ここでは、ノミとマダニの生活環をご紹介します。

 

<ノミの生活環>

ノミの生活環は、下記の1)~4)の循環になります。

 

1)メスのノミは、宿主に寄生すると直ぐに宿主の血を吸い、オスと交尾をして産卵します(48時間以内)。卵は1日に3~20個が、宿主の生活環境内に産み落とされ、2~12日で孵化します。卵のサイズは0.5mm、形は楕円形で、乾燥や高温・低温といった環境や殺虫剤などにも抵抗力が強いのが特徴です。

 

2)孵化した幼虫は、成虫の体液成分を含む排泄物や、動物の垢を食べて成長していきます。24~32℃で60~80%の湿度という環境が、発育に適した環境になります。

 

3)幼虫は、2回の脱皮を経て繭となりサナギになります。この間、9~11日掛かりますが、長い場合には200日という場合もあります。また、繭やサナギは周辺にあるゴミなどでカモフラージュすることで、見つかりづらくなっています。

 

4)約1週間(長い場合は1年)で羽化し、成虫になります。成虫となったノミはその場を動かず、宿主を待ち伏せし、二酸化炭素、体温、振動などで動物が近づいてきたことを察知すると、繭から飛び出て飛び移ります。ネコノミの成虫の寿命は、5週間以上といわれています。

 

ノミの生活環を知ると、愛犬や愛猫に寄生しているノミだけではなく、生活環境内に潜んでいる幼虫やサナギの排除がとても重要だということに気づくと思います。

 

<マダニの生活環>

マダニの生活環は、下記の1)~4)の循環になります。

 

1)草むらで産卵されたマダニの卵は、17~30日で孵化し、幼ダニになります。

 

2)幼ダニは宿主の高さに合わせて草や枝を登り、そこで宿主に寄生します。寄生して血を吸い、宿主から離れて脱皮し、若ダニになります。

 

3)若ダニは再び宿主に寄生して血を吸い、また宿主から離れて脱皮します。2度目の脱皮でようやく成ダニになります。

 

4)成ダニは再び宿主に寄生し、お腹いっぱい血を吸います。普段は米粒程度の成ダニは、お腹いっぱい血を吸うことでお腹がパンパンに膨れ、大豆くらいの大きさに膨れ上がります。この状態を、飽血と言います。成ダニは飽血することで卵巣が発達します。宿主の体を離れた成ダニは、3~11日後、草むらで産卵します。

 

なお、ダニにとっての快適な生息環境は、温度が20~30℃、湿度が60~80%です。

ダニの生活環を知ると、愛犬や愛猫が散歩等で草むらに入った時に感染リスクが高いということが分かります。

 

 

ノミが寄生した場合は、とにかく「かゆがる」という症状が出ます。

犬も猫も、しきりに体や耳をかゆがる場合には、ノミの寄生を疑えます。

 

ダニが寄生した場合は、犬も猫も、局所的な刺激で精神が不安定な状態になります。

顔や耳に寄生している時は、頭を振ったり耳を掻いたりする仕草をします。

また、犬に多いのは肉球の間への寄生です。

この場合は、寄生された足をかばうように跛行することもあります。

 

上記のような症状が見られた場合は、ノミやダニの寄生が疑われますので、動物病院で診てもらいましょう。

動物病院で処方された駆除薬と一緒に、愛犬・愛猫の生活環境からノミやダニを排除し、徹底的に駆除し、その後の予防に努めてください。

 

また、最も重要なのは予防です。

上記のような症状が見られる前から、予防のための措置を行うことが大切です。

 

最後に、ノミ・ダニの予防についてお話しします。

ノミ・ダニの予防には予防薬を使用します。

一般的には3~12月頃がノミ・ダニの活発な活動期だといわれていますが、最近では室内飼いも増えており、1年中予防を実施するのが望ましいでしょう。

 

予防薬(駆除薬)には、スポットタイプとチュアブルタイプがあります。

スポットタイプは、犬や猫の肩甲骨の間の毛をかき分けて地肌を露出し、そこに液剤を垂らすという方法で投薬する薬です。

薬の成分は、皮膚表面に広がり24時間以内に全身をカバーしますので、シャンプーをしても薬効が落ちることはほとんどありません。

 

チュアブルタイプは、普通の食事のように、口から飲ませるタイプの薬です。通常の薬とは異なり、喜んで食べてくれるような風味をつけ、食べやすくする工夫が施されています。

 

どちらのタイプも、24時間で100%の効果が出、それが1ヶ月持続する点ではほぼ同じですので、愛犬や愛猫に合わせて選択すれば良いでしょう。

スポット薬の場合、足先や耳の先など、ダニが寄生しやすい部位まで広がりにくい面もあるため、当院ではチュアブルタイプの薬を使用することが多いです。

 

予防薬については、特に注意して頂きたいことがあります。

 

1点目は、市販薬ではなく、動物病院で処方された薬を使って欲しいということです。

ノミ・ダニの予防薬は、ペットショップやホームセンター等で購入することができますが、そういった市販薬ではなく、動物病院で処方された予防薬を使用することをおすすめします。

それは、市販されている薬は医薬部外品で、動物病院で処方される薬は医薬品だからです。

医薬品と医薬部外品では、効果・安全性について大きな差があります。

特に効果については、医薬部外品の場合、最大でも70%程度、そして効果が直ぐに落ちてきて、1ヶ月後には30%程度になってしまうと考えて良いでしょう。

つまり市販薬の場合、寄生虫を100%殺すことはできないのです。

例えばノミの場合、1匹が2週間後には50匹に増えてしまいます。

寄生した寄生虫を100%殺さなければ、予防や駆除の薬としては意味がないということが分かると思います。

市販薬の場合、あくまでもノミ除け程度のものだと思ってください。

 

2点目は、中途半端にやめてしまってはいけないということです。

前述の通り、どちらのタイプの薬でも、医薬品の場合は1ヶ月の間100%の効果が続きます。

しかし、そこで投薬をやめてしまうと、ノミ・ダニに寄生されてしまう危険な状態に戻ってしまいます。

現代の生活環境では、1年中ノミやダニが活動していますので、予防薬はしっかりと継続的に使用しなければ意味がないのです。

 

新型コロナウイルス感染対策が叫ばれている中、ウイルスや細菌、内部寄生虫の感染だけではなく、外部寄生虫の感染対策も含めて、今一度見直してみることをおすすめします。

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