犬や猫の糖尿病は早期発見早期治療で進行を緩やかに

犬猫の病気や症状

糖尿病ってどんな病気なのだろう

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

日本人の場合、生活習慣病としてよく耳にする糖尿病ですが、実は犬や猫もよくかかる病気の1つです。今回は、犬や猫の糖尿病について、症状や治療、予防、ご自宅で看護される時の注意点や食事管理の大切さ等をご説明したいと思います。

 

まずは、糖尿病がどのような病気なのかについて整理しておきましょう。

 

糖尿病という病名は「尿に糖が出ている」ことから名付けられました。私たち人も含めた動物は、食物として炭水化物を摂取し消化して糖の形に変換し、それを体、つまり細胞の中に取り込むことで、活動するためのエネルギーを得ています。

 

消化された糖は、腸から吸収されて血液中に入ります。膵臓のランゲルハンス島β細胞というところから分泌されるインスリンというホルモンが、血液中の糖(血糖)を細胞に取り込む役目を担っています。

 

糖尿病とは、このインスリンが分泌されなくなった、または分泌されているのに何らかの理由で効き目が弱くなったことで、血糖を細胞に取り込めなくなる病気です。そのため、糖尿病になると血液中の糖の濃度(血糖値)が高くなり、尿に排泄されるようになるのです。

 

犬や猫の糖尿病と人の糖尿病の違いと糖尿病の予防

 

人の場合、糖尿病にはⅠ型とⅡ型という2つのタイプがあります。Ⅰ型はβ細胞が破壊されてしまってインスリンが分泌されない、または分泌されても必要量に達していないことが原因となる糖尿病で、比較的若齢時に発症することが多いです。

 

Ⅱ型は、インスリンは分泌されているのですが、インスリンに対して肝臓や筋肉などの細胞の反応が鈍化してしまうことが原因となる糖尿病です。これは、遺伝的に糖尿病になりやすい要素を持っている個体が、肥満や運動不足、ストレスなどをきっかけに中高齢になって発症することが多いです。

 

日本人の糖尿病の95%はⅡ型糖尿病ですが、猫の場合も約8割はⅡ型糖尿病だと言われています。逆に、犬の場合はⅠ型糖尿病によく似ていることが多いのですが、Ⅱ型から発症し、動物病院に来院した時点では病状が進んでしまっているためⅠ型と同じような状態になっているとも考えられます。

 

いずれにしても糖尿病の予防には、愛犬や愛猫に日頃から規則正しい食生活と適度な運動、そしてストレスフリーな生活環境を整えることが有効な策だと言えるでしょう。特に肥満は、インスリンの効き目を鈍らせる大きな要因であると考えられていますので、愛犬や愛猫の適正体重、体型を維持することが大切です。

 

犬や猫の糖尿病の症状

糖尿病になると、下記のような症状が見られます。

 

○多飲多尿

多飲多尿とは、お水をたくさん飲みたくさんの薄い尿を排泄するという症状です。細胞に取り込まれなかった大量の血糖が水分と一緒に尿に排泄されることで水分不足になり、それを補うためにたくさん水を飲むようになります。

 

○白内障

糖尿病が進行すると白内障を引き起こすことが多いです。特に犬に多く見られます。

 

○食欲増加・不振と体重減少

糖が細胞に取り込まれないため、エネルギー不足になります。そのため大抵は食欲が増加し、たくさん食べるようになります。いくら食べても血糖が細胞に取り込まれずエネルギー源にはならないため、体重は減少していきます。病気の進行具合や猫の糖尿病の場合には、食欲不振になる場合もあります。エネルギー不足のため、当然元気もありません。

 

○下痢・嘔吐

体が血糖をエネルギーとして利用できなくなると、代わりに脂肪を利用するようになります。脂肪の分解が進むと、ケトン体という物質が血液中に増加します。それが原因で血液が酸性になると、下痢や嘔吐を引き起こします。このように糖尿病が原因で血液が酸性になった状態を糖尿病性ケトアシドーシスと言い、重度の脱水や電解質異常などを起こして命に関わる重篤な状態になることもあります。

 

犬や猫の糖尿病の治療

検査の結果、次の要素が全て揃った場合に糖尿病と診断します。

・多飲多尿、体重減少といった臨床症状が見られる

・持続的に高い血糖値が続いている

・尿糖陽性である

※犬の場合は180〜220mg/dL、猫の場合は250〜300mg/dLを超えると尿に糖が排泄されるようになり、それを尿糖陽性と言います。

 

糖尿病と診断されたら、治療を始めます。犬に多いⅠ型似の糖尿病は、インスリンの投与と食事療法を行います。猫に多いⅡ型糖尿病は、食事療法と血糖値を下げる薬の投与を行い、必要に応じてインスリンの投与を行います。

 

インスリンには何種類かあり、ワンちゃんや猫ちゃんによって適切な種類や用量、投与する頻度などが異なるため、最適な方法を見つけるために時間がかかることがあります。

 

また、インスリン注射は毎日決められた時間に行う必要があるため、ご自宅で飼い主様が注射を打つことが必要になります。規則正しく注射を打てないと、それが原因で血糖値コントロールがうまくいかなくなることもあるため、飼い主様にとっても厳しい治療となります。

 

インスリン投与による血糖値コントロールで特に気をつけなければならないのは、低血糖です。また、猫の場合は病院で血糖値を計測するとストレスのために高い数値が出てしまうこともあります。そのため、ご自宅で定期的に血糖値を測定することが大切になってきます。当院では、ご自宅で簡便に血糖値を測定できる機器の貸し出しも行なっています。

 

また糖尿病は、裏に膵炎や副腎皮質機能更新症等の別の病気が隠れていて、それがインスリンの効果を弱めている場合があります。隠れている病気を発見し、合わせて治療していくことも大切です。

 

犬や猫の糖尿病で大切な食事管理

どのタイプの糖尿病の場合にも行われる食事療法(食事管理)ですが、その目的は、食事(フード)により血糖値の変動をなるべく抑えることで血糖値のコントロールをしやすくすることです。そして、適切な体重管理を行いながら、必要な栄養成分がきちんと摂れ、糖尿病の合併症を予防できることも必要です。

 

インスリン投与を行う場合、食後の急激な血糖値上昇を抑えられれば、投与量を減らすことができます。Ⅱ型糖尿病の場合も、適切な食事と体重管理でインスリン投与治療を不要にすることができる場合も多いです。

 

つまり、どちらのタイプの場合も、糖尿病の治療にとって食事管理はとても大きな意味を持つということを知っておいてください。

 

糖尿病用療法食は、炭水化物と脂質を控え、食物繊維が増量されているのが一般的です。そうすることで、糖の吸収を緩やかにし、血糖値の急激な上昇を防いでいるのです。ただし、腎疾患や膵炎などの別の病気も併発している場合は、その病気に適した食事が必要になります。療法食も、担当獣医師とよく相談した上で決めるようにしてください。

 

せっかく療法食を与えても、安定して食べてくれないと血糖コントロールが難しくなります。病院で勧められたフードをあげても食べない場合などは、遠慮なく相談してください。その子にとって最適なフードを一緒に見つけていきましょう。

 

ご自宅で糖尿病の犬や猫を看護する時の注意点

糖尿病の看護は、飼い主様にとってもとても辛いものだと思います。しかし、愛犬、愛猫の血糖値をうまくコントロールできれば、愛犬、愛猫の生活の質を高く維持することができます。そのためにも、日々の愛犬、愛猫の様子を記録しておくことをおすすめします。

 

記録することで、小さな変化に気づけたり、病院でも自信を持ってご説明していただけるようになったりします。日々の記録を残すのは手間かもしれませんが、要点を簡単にメモするだけで構いませんので、普段お忙しい方にこそぜひともおすすめいたします。

 

下記のようなことを中心に、飼い主様が気づかれたこと、気になったことなどを記録してください。

・食事関連:時間やフードの種類、食べた量等

・飲水関連:1日に飲んだ水の量

・排尿関連:回数、量、色等

・体重

・インスリン注射関連:時間、投与量等

・血糖測定値:時間、血糖値

 

犬や猫の糖尿病について押さえておいて欲しい事

ポイント

・糖尿病は多飲多尿、食欲があるのに体重が減ることで見つけられます

・適正体重、体型の維持が糖尿病予防に有効です

・糖尿病のタイプにより治療法が異なります

・どちらのタイプの糖尿病でも血糖値コントロールが大切です

・血糖値コントロールのためには食事管理が重要な鍵を握ります

・インスリン投与は飼い主様がご自宅で毎日決まった時間に注射する必要があります

・気になること、心配なことがあればすぐに動物病院に相談しましょう

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