狂犬病注射

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

以前、私はここで「狂犬病注射、必要ないと思っていませんか?」というブログを書きました。

そのブログで、世界における狂犬病の発生状況や狂犬病の怖さ、そしてどんなに高齢犬になったとしても、お散歩をして普通にご飯を食べている状態であれば、狂犬病予防注射はぜひ接種して頂きたいということをお話ししました。

 

今年は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための緊急事態宣言が発令され、横須賀を始めとして各地での狂犬病予防集合注射が中止されている状況です。

この現状を考慮して、以前のブログと多少重複する内容もありますが、狂犬病予防注射について、その必要性などを再度お伝えしたいと思います。

 

 

まずは、狂犬病がどういう病気なのかについて、簡単にご説明しておきましょう。

狂犬病は、狂犬病ウイルスが感染することで発症する感染症です。

狂犬病ウイルスの宿主は、犬、猫やコウモリなどの野生動物で、これらの宿主にかまれたり引っかかれたりすることで、その傷口から感染します。

 

狂犬病は、人畜(獣)共通感染症といって、動物に発生した病気が人に感染して重篤な病状を引き起こす病気です。

そして、なんといっても致死率が高く、人畜共通感染症の中でも最も怖い病気の一つで、全世界で見ると毎年55,000人もの方が狂犬病で亡くなっているのです。

そのため、狂犬病は法律によって、診断した医師は直ちに保健所に届け出なければならないと定められており、飼い主様に対しても、飼い犬の登録と飼い犬への年に1回の予防注射の接種が義務付けられています。

 

このような対策により、日本では1957年以降、狂犬病は発生していません。

そのせいでしょうか、日本では畜犬登録された犬の約90%は狂犬病の予防接種を受けているのですが、ペットフード協会の試算した全国における犬の飼養頭数を分母に、ワクチンメーカーの狂犬病ワクチン生産量を分子にして計算すると、実際の狂犬病予防接種率は45%以下になるという結果が出ています。

 

しかし、1970年にはネパールを旅行中に犬にかまれた方が帰国後に発病し死亡したという事例が1件、2006年にはフィリピンを旅行中に犬にかまれた方が帰国後に発病して死亡したという事例が2件発生しています。

 

狂犬病は、日本、イギリス、スカンジナビア半島の国々など、ごく一部の地域を除いて今でも全世界で発生しているのが現状なのです。

そのため、旅行中に犬にかまれるだけではなく、犬をはじめとする哺乳動物の輸入の際に、狂犬病が国内に持ち込まれるというリスクは、決して低くありません。

 

大勢の人が予防接種を受けることで免疫を獲得すると、ウイルスや細菌の感染症が蔓延することを防止でき、これを集団免疫と言います。

狂犬病の予防接種を義務付けているのも、集団免疫による狂犬病の蔓延を予防するためです。

狂犬病の場合、犬を中心として、地域動物の70%に免疫があれば(集団免疫率が70%以上あれば)、狂犬病の感染拡大を予防できると考えられています。

万が一狂犬病が国内に持ち込まれてしまった場合でも、集団免疫率が70%以上であれば、狂犬病の国内での蔓延を防ぐことができるのです。

 

そのため、「今の日本では狂犬病は発生していない」などと安心することなく、必ず毎年狂犬病注射を接種することが必要です。

飼い犬の登録と狂犬病予防接種率を70%以上にすることが、愛犬の命だけではなく、飼い主さんや親しい方々の命を守ることにもつながるのです。

 

 

先ほど、狂犬病はとても致死率の高い怖い病気だとお話ししました。

それは、犬に対しても人に対しても、狂犬病を発症してしまった場合の効果的な治療法がないためです。

そのため、犬も人も、発病してしまうと狂暴化、精神錯乱、全身麻痺といった症状を起こし、その後ほぼ100%死に至ってしまいます。

 

狂犬病発生地域で犬などにかまれ、狂犬病に感染した可能性がある場合は、できるだけ早めにワクチンを接種することで、狂犬病の発症を防ぐことができます。

ワクチン接種は1回だけではなく、所定の複数回の接種が必要になります。

犬やコウモリなどにかまれることを「暴露を受ける」と言うため、この発症予防のためのワクチン摂取を暴露後ワクチン接種と言います。

 

暴露の程度に応じて必要な対策も異なります。

暴露のレベルは次の3つに分けられています。

 

〈カテゴリーⅠ〉

動物に触れる、餌をやる、無傷の皮膚をなめられる

 

〈カテゴリーⅡ〉

出血のない小さな傷や擦り傷、むき出しの皮膚をかじられる(暴露)

 

〈カテゴリーⅢ〉

皮膚を貫通するかみ傷や引っかき傷、粘膜や傷のある皮膚をなめられることによる動物の唾液との接触、コウモリとの直接的な接触による暴露(深刻な暴露)

 

この内、ワクチン接種の必要がないのはカテゴリーⅠのみです。

カテゴリーⅡは、傷口の洗浄と迅速なワクチンの接種が、カテゴリーⅢはそれに加えて免疫グロブリンの投与が必要に応じて行われます。

 

海外旅行をされる方は、万が一のことを考えて、上記のカテゴリーを意識して犬などの動物と接するように心がけると良いでしょう。

 

 

さて、狂犬病予防注射のお話しです。

狂犬病予防法という法律で、犬の飼い主様は「毎年1回、4月1日から6月30日の間」に、飼い犬に狂犬病予防注射を受けさせなければならないと定められています。

 

そこで各自治体は、登録された犬の飼い主様宛にハガキで案内を通知し、この期間中に集合注射を実施しています。

横須賀市の場合も、保健所から飼い主様宛に案内のハガキが出され、会場ごとに日付と時間が決められて、集合注射を実施しています。

 

当然、今年も例年通りに予定を組んでいました。

会場は、行政センターや公園、プール、コミュニティセンターなどさまざまです。

費用は1頭につき、注射手数料が3,100円、注射済み票交付手数料が550円で、合計3,650円です。

 

ところが冒頭で述べたように、今年は新型コロナウイルスの爆発的な感染を抑止しなければならない状況になり、狂犬病の集合注射が中止になってしまいました。

この状況は横須賀に限ったことではなく、全国的に同じような状況のはずです。

毎年集合注射を利用してこられた飼い主様の中には、困っていらっしゃる方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、狂犬病注射は動物病院でも接種できます。

病院ですので診察料(当院、つだ動物病院の場合は再診料500円)が余計に掛かりますが、注射を打つ前にごく基本的な健康状態のチェック(検温、聴診、触診、問診等)を行う費用だとお考え頂ければと思います。

 

狂犬病の怖さは前述の通りです。

決して今の日本での狂犬病リスクがゼロになったわけではないことを考え、集合注射の中止を狂犬病注射そのものの中止としないようにしてください。

 

 

最後に、1つご提案です。

人間ドックと同様に、犬にも定期的な健康診断が必要です。

犬の成長速度は人よりも早いため、一般的に中齢犬までは1回/年の健康診断が、高齢犬にはそれ以上(1回/3か月等)の健康診断が必要だと考えられています。

 

そこで、もしもまだ愛犬の健康診断が未実施の場合は、動物病院で狂犬病予防注射を受ける際に、一緒に健康診断も受診されてはいかがでしょうか。

通常の検温、聴診、触診、問診に加えて、血液検査、尿検査、糞便検査、画像検査などを行うのが健康診断です。

 

健康診断は費用もかかりますので、愛犬の年齢や健康状態に応じて、検査の内容は飼い主様とご相談の上、必要最小限なものにアレンジできます。

一度このタイミングで健康診断を受診しておけば、来年以降も集合注射の案内を受け取ると、「健康診断の時期だな」と忘れることがなくなり、愛犬の総合的な健康管理のサイクルを確立できると考えます。

 

新型コロナウイルスにより、非日常的な生活を強いられている今この時期だからこそ、愛犬の健康管理への注意も怠らずに、人と愛犬が共に健康で楽しく幸せに暮らしていけるような工夫をしてみる良いチャンスなのではないでしょうか。

 

なお健康診断については、以前ここで書いた「動物病院との付き合い方」や「犬の健康診断」というブログでもお話ししていますので、もしお時間がある方は、改めてお読み頂ければと思います。

 

人との接触を削減するため、不要不急の外出を自粛する日々が続き、精神的にもダメージを受けておられる飼い主様も多いかもしれません。

ぜひ、愛犬とのコミュニケーションを通して、愛犬と共に健やかな日々をお過ごし頂きたいと思っております。

そのためにできることは、当院でもお手伝いをさせて頂きますので、ぜひお気軽にお声がけください。

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