猫の慢性腎不全<概要編>

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

中〜高齢の猫にとても多い病気の代表格として挙げられるのが、慢性腎不全です。

猫の慢性腎不全の発症率は、8歳前後で約8%、10歳前後で約10%、12歳前後で約24%、15歳前後で約30%という報告もあります。

そこで、今回から3回に渡り、猫の慢性腎不全についてお伝えしていこうと思います。

 

 

腎不全とは一つの病気ではありません。

腎臓そのもの、または他の臓器の障害によって腎機能が低下したために、体内の水や電解質のバランスなどが崩れてしまう病態のことを腎不全と言うのです。

「腎機能の低下」を具体的に説明すると、正常時の腎臓の働きの30%以下の働きしかできなくなると腎不全です。

 

また腎不全は、数日から数週間で腎機能を喪失してしまう急性腎不全と、数ヶ月から数年をかけて徐々に低下していく慢性腎不全とに分けることができます。

今回は、後者の慢性腎不全のお話になります。

 

なお、まだ腎不全の状態にはなっていない場合でも、3ヶ月以上腎機能にダメージのある状態が継続している病態を慢性腎臓病(CKD)と言い、猫全体では10%、高齢猫では35%がCKDに罹っているとか、15歳以上の猫では81%がCKDだと言う報告もあります。

今回は、このCKDも含めて慢性腎不全としてお話を進めていきます。

 

前述の通り、慢性腎不全とは一つの病気ではありません。

慢性腎不全を引き起こす病気には下記のようなものがあります。

・慢性間質性腎炎(病状が進行するにつれて腎臓が萎縮していく病気)

・腎臓腫瘍、腎リンパ腫

・多発性嚢胞腎

・腎結石

・水腎症

・腎盂腎炎

・糸球体腎炎

・アミロイドーシス(アミロイドという不溶性の異常タンパク質が臓器や神経に沈着し機能障害を起こす病気)

・腎毒性物質の摂取による中毒

 

また、急性腎不全を治癒させる機能を持つAIMという血液中のタンパク質があるのですが、猫のAIMは急性腎不全になっても機能せず慢性腎不全に進行してしまうので、猫に腎不全が多いのだという報告もあります。

 

 

腎臓の具体的な働きとその機能が低下したことによる影響は、下記の通りです。

1. 老廃物を排出する

老廃物を排出できなくなりさまざまな症状を発生させる(尿毒症)

 

2. 水分の再吸収を行う

腎臓での水分再吸収が行われず、体内の水分が減少してさまざまな症状を発生させる(脱水症)

 

3. ミネラルの調節を行う

血液中のリン濃度が上昇することで、さらに腎臓がダメージを受けるという悪循環になる

 

4. ホルモンを分泌する

・血圧調整ホルモンが過剰に分泌されて高血圧になる

・増血ホルモンの分泌が抑制されて貧血になる

 

これらの影響を受けた結果、慢性腎不全になった猫に現れる、目に見える主な症状をまとめると下記のようになります。

・多飲多尿(腎臓での水分再吸収が減ることで多飲となり、匂いの少ない薄い尿がたくさん出るようになる)

・元気消失(脱水により、だるくなり活力が落ちる)

・食欲不振、嘔吐(老廃物を排出できずに尿毒症が現れる)

・削痩(異常なほど痩せる)

・流涎(よだれを垂らす)

・歯茎や耳の内側の色が白くなる(増血ホルモンの分泌抑制による貧血)

・昏睡

・けいれん

・死

 

腎臓の機能が正常時の働きの33%程度しか機能しなくなった時に、初めて目に見える症状が現れます。

そのため、上記のような症状が現れた時は、すでに腎不全の状態になっていると言えるのです。

 

大事なポイントは、腎機能が33%程度になった状態でようやく現れる目に見える最初の症状が「多飲多尿」だということです。

つまり、多飲多尿の症状が出始めた時には、まだ元気も食欲もあり、病気だとは気づきづらい状態なのです。

 

中〜高齢となった猫と一緒に暮らしている飼い主様は、日々の愛猫の飲水量と排尿量を観察する習慣をつけると良いでしょう。

そして、まだ元気に見える場合でも「今までよりもたくさん水を飲みたくさんおしっこをするようになった」と感じたら、動物病院で診てもらうようにしましょう。

 

 

前述の通り、慢性腎不全の場合に目に見える症状として「多飲多尿」が現れた段階で、すでに腎機能は33%しか残っていません。

さらに、血液検査でCRE(クレアチニン)の上昇として異常が現れた段階で残っている腎機能は25%程度です。

猫の体調が著しく悪くなり、誰にでも「おかしい」と気づかれるような状態になった時は、残っている腎機能が10%程度という状態です。

 

このように、慢性腎不全はなかなか早期発見が難しいのが特徴です。

しかも、急性腎不全の場合は腎機能を回復することができますが、慢性腎不全になってしまうと、腎機能を回復させることはできません。

進行を遅らせ、猫の生活の質(QOL)をできるだけ保った状態で寿命を伸ばしていくための治療しかできないのです。

 

それだけ、慢性腎不全は「いかに早期発見するか」が重要なポイントになると理解してください。

慢性腎不全を「多飲多尿」の症状が出るよりも前に発見するためには、定期的に下記の検査を行うことが有効です。

 

1. 血液学的検査

赤血球の数や状態などを調べ、貧血の状態や赤血球の形態等を確認します。

 

2. 血液化学検査

血液中のタンパク、酵素、ミネラルなどの成分を分析します。

BUN(尿素窒素)、CRE(クレアチニン)、Ca(カルシウム)、IP(無機リン)、TP(総タンパク)などの値から腎機能の低下を診断します。

 

3. 画像検査

X線検査だけではなく、超音波検査による腎結石や水腎症、腎腫瘍の有無なども確認する必要があります。

また慢性腎不全の場合、一般的には腎臓の萎縮が起こるため、腎臓の大きさの確認も重要になります。

 

4. 尿検査

尿比重の低下や尿中タンパクとクレアチニンの比率などの値から診断します。

血液化学検査の結果(CRE上昇等)に異常が現れる前に察知するためにも、尿検査はとても重要です。

 

5. 組織学的検査(画像診断の結果により必要となる)

画像診断の結果、腎臓が腫大している場合は腎臓腫瘍やリンパ腫の有無を確認します。

 

 

今までご説明してきたことのまとめとなりますが、猫にとって避けて通れないと言っても過言ではない程多く発症する慢性腎不全は、早期に発見することが何よりも大切です。

そのためには、猫と一緒に暮らしている飼い主様には、下記の点に注意をして頂き、愛猫がまだ元気のあるうちに発見して頂けることが理想的です。

 

1. 年に1回の健康診断を受けましょう

血液検査だけではなく、尿検査、画像検査も含めた総合的な健康診断を定期的に受診し、腎機能の状態変化を継続して確認していくことが大切です。

また愛猫が高齢になった場合は、年に2回以上の受診が望ましいです。

我々人も、年に1回は人間ドックや健康診断を受診していると思います。

それと比べて、年に2回の受診は多過ぎると感じる飼い主様も多いと思います。

しかし、猫にとっての1年は、人にとっての4年に相当することを考えると、年に2回の受診は決して多過ぎないと言えるのではないでしょうか。

 

2. 愛猫の日々の飲水量と排尿量を記録しておきましょう

水入れに水を入れる時に量を測っておき、お水を取り替える際に残っている水の量を測れば、飲水量(容量でも重量でも可)をきちんと数値として記録しておくことができます。

同様に、トイレにセットする前のペットシーツの重さを測っておき、排尿後のペットシーツの重さを測れば、排尿量(重さ)を数値として記録しておくことができます。

飲水量も排尿量も、1日分をまとめた形で構いませんので記録しておくと、変化の様子をいち早く察知することができます。

動物病院に来院された際、記録した内容を見せて頂ければ、診断する際の参考にもなりますので、愛猫と一緒にご持参頂けると助かります。

 

健康診断も飲水量や排尿量の記録も、おおよその日にちや時間を決めてしまえば忘れることなく、習慣化されていきます。

中〜高齢の猫と一緒に暮らしていらっしゃる飼い主様は、ぜひ試されることをおすすめ致します。

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