白内障

犬猫の病気や症状

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

前回は、目の病気である、角膜潰瘍についてお伝えしました。
今回は、同じく目の病気である、白内障についてお伝えしたいと思います。
特に犬の場合、他の動物と比べても白内障の発生率が高いので、注意が必要です。

 

白内障と聞くと、人の場合のイメージにより、高齢犬に多い病気だと思われる方も多いかもしれません。
しかし、犬の場合は高齢犬に限った病気というよりも、遺伝的な要因も関係して若齢犬や成犬でもよく発症する病気です。
愛犬が若くても発症リスクが高い病気なので、このブログを参考に目のチェックを日常的に取り入れ、早期発見に役立てて頂ければ幸いです。

 

 

犬の五感の全体を100%とした場合、最も機能しているのは嗅覚で約40%、次が聴覚で約30%と考えられており、視覚は15%程度に過ぎません。
また、感覚器の多くは生まれてから間もなく働き始めますが、視覚は生後3週齢頃からやっと働き始めます。
視覚が働き始めた後も視力は低く、人に例えると近視かつ色盲といった感じの見え方で、猫と比べても半分程度の視力だといわれています。

 

しかし、犬と一緒に暮らしたことのある方はよくご存知の通り、犬は飼い主様のことをよく観察しており、アイコンタクトによって意思を通じあわせています。
このように、犬にとっての視力は、感覚器官の中では鈍い方とはいえ、とても大切なものだということが分かります。

 

上の図は、横から見た、目の構造を描いたイラストです。
簡単に視覚のしくみをご説明しますので、このイラストを見ながらご理解頂ければと思います。

 

目のしくみは、カメラに似ています。
カメラといえばレンズとフィルム(デジカメの場合は撮像素子)が必要ですが、目の構造でレンズに相当するのが水晶体、フィルムに相当するのが網膜です。

 

毛様体が水晶体の厚みを変えることでピントが調節され、虹彩が伸び縮みして瞳孔の大きさが変わることで入ってくる光の量を調節します。

 

これらのしくみを利用して、角膜を通して入ってきた光を水晶体が屈折させ、ピントを合わせた物体の形が網膜の上に像となって結ばれます。
最終的に、網膜に結像された情報が視神経によって脳に伝達されることで、犬は見たものを認識することができるのです。

 

 

白内障は、この水晶体が白く濁った状態になる病気です。
なぜ白く濁るのかというと、水晶体の栄養、タンパク質の代謝、浸透性などが乱れて正常な状態ではなくなるからです。

 

正常な状態でなくなってしまう直接的な原因を挙げると、ゴミや怪我などの外傷、栄養に問題がある、糖尿病などによる代謝の異常、炎症や中毒などさまざまです。

 

特に犬の場合は、遺伝的な要因も関係している場合が多く、コッカー・スパニエル、プードル、ビーグル、アフガン・ハウンド、狆などに多く発生します。
先天性の場合は、誕生時もしくは誕生時近くの時期に発症を認められます。

 

白内障にはいくつかの分類方法がありますが、一般的な分類は進行度合いによるものです。

 

1. 初発白内障
水晶体の変化がまだ初期の状態で、白濁が局所的なため、視力には影響を及ぼさない状態です。

 

2. 未熟白内障
初発白内障よりも水晶体の混濁程度が進行して局所的な白濁の範囲が広がっているため、部分的な視覚障害が出ます。しかし、明るい場所における行動には、大きな変化はみられません。

 

3. 成熟白内障
強い白濁が水晶体全体に広がるため、網膜の反射がなくなり、失明してしまいます。

 

4. 過熟白内障
水晶体の中のタンパク質が分解、吸収されることにより、水晶体の容積が縮小してしまいます。これが原因となって、ぶどう膜炎を誘発することもあります。
ぶどう膜とは、虹彩、毛様体、脈絡膜の総称です。
ぶどう膜炎になると犬は目を痛がりますが、イラストを見て頂ければ分かる通り目の中の炎症なので、すぐに治せる病気ではありません。

 

白内障の初期状態は、水晶体の白濁も局所的で視力の低下にも気付きづらいため、白内障に気付いて来院される時には、成熟白内障に進行してしまっている場合も少なくありません。
しかし、成熟白内障になると失明してしまいますので、早期発見、早期治療がとても大切になってくるのです。

 

 

内科的な治療法として、点眼薬により進行を遅らせるということができますが、この方法では根本的な治療にはなりません。
白内障の根本的な治療は、外科的治療、つまり手術になります。

 

超音波で濁った水晶体を取り除き、人口水晶体を挿入することで視力の回復を図るというものです。
未熟白内障の場合は、成熟および過熟白内障と比べて手術の成功率が非常に高いため、治療の成功率を考えても、早期発見が重要になってきます。

 

ただし、治らない視覚障害のある網膜疾患を併発している場合は手術ができませんので、手術の前には、必ず網膜の検査を行う必要があります。

 

なお、白内障に有効な予防法はありません。
残念ながら愛犬が白内障になってしまったら、室内飼いの場合、部屋の模様替えはもちろん、ちょっとした物の配置も変えないようにしましょう。

 

犬は、視力が落ちても他の感覚器官や記憶力で視力をカバーすることができますので、慣れた環境であれば、視力が落ちたり失明したりしても、ある程度不自由なく過ごすことができるからです。
良かれと思って障害になりそうな物を退けてしまったり、段差のある場所にスロープを設置したりすると、かえって危なくなることもありますので、注意しましょう。

 

また、見えないことで不安を感じて攻撃的になる犬も多いので、白内障の犬に触るときには、必ず声をかけて、安心させてから触るようにすると良いでしょう。

 

 

前述の通り、犬の視覚は他の感覚器官に比べてかなり鈍く、感覚器官全体の15%程度しか担っていません。
そのため、視力が落ちても他の感覚器官や記憶でカバーしてしまい、飼い主様には愛犬の行動から視力の低下を察知しづらいというマイナス面があります。

 

だからこそ、健康管理の中でも、目の状態や歩行時の様子のチェックは欠かせない大切なものになります。
愛犬を失明させず、なるべく良い状態で長く過ごしてもらうためにも、このブログを参考にして、目の健康管理を習慣付け、愛犬の異常には早期に気づけるようにしてください。

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