真冬でも過ごしやすい愛犬愛猫の環境作り

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それぞれに最適な環境を

雪景色を見る犬と猫

 

明けましておめでとうございます。横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。本年も、飼い主様に分かりやすくて役に立つお話をお届けできるようにしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

また、この度の令和6年能登半島地震で被災された皆様には、謹んでお見舞いを申し上げます。被災地の皆様のご安全と一日も早い復旧を、心よりお祈り申し上げます。

 

さて今回は、ワンちゃんや猫ちゃんが真冬でも過ごしやすい環境を作るためのポイントをお話したいと思います。昔の人たちは、一年を24等分して季節の区切りとしていました。それは二十四節気と言われ、主に立春、春分、秋分、夏至、冬至などが、今でも季節の節目として使われています。

 

2024年は、1月6日が小寒で寒の入りとなり、1月20日の大寒で最も寒くなり、2月4日の立春から徐々に春に向かっていきます。この寒い時期に、どうすればワンちゃんや猫ちゃんが過ごしやすくなるのか、毎年飼い主様は頭を悩まされているのではないでしょうか。

 

二人以上が一緒に暮らしていると、同じ環境にいても「暑い」と感じる人も「寒い」と感じる人も出てきます。ワンちゃんや猫ちゃんも同じで、暑がりだったり寒がりだったりするのです。でも彼らは言葉で説明できません。飼い主様が悩むのは、当然のことなのです。

 

品種、これまでの生活環境、年齢、健康状態によっても、快適な環境は変わってきます。わからないからこそ、ワンちゃんや猫ちゃんの様子をよく観察し、常に思いやりの目線で快適な環境づくりを心がけてあげることが大切です。

 

今回ご紹介したポイントを参考に、それぞれのワンちゃんや猫ちゃんにとって最適な環境を作れるよう、いろいろと工夫してあげてください。

 

温湿度管理が大切な理由

毛布にくるまる犬と猫

 

なぜ冬になると、人も動物たちも病気にかかりやすくなるのでしょうか。それは、日本の冬の特徴である「低温乾燥」の影響です。

 

動物の体に感染する病原体は、低温だと活発になるものが多いです。しかし寒さで体が冷えてしまうと、動物の体はいろいろな機能が低下します。その結果免疫細胞の働きも低下して、体に侵入してきたウイルスや細菌などの病原体に抵抗する力が衰えてしまうのです。

 

しかも、冬の空気はとても乾燥しています。動物の体を覆っている皮膚にはバリア機能と言って、体外からウイルスや細菌などの病原体が侵入してくるのを防ぐ役割を担っています。鼻の穴や口の中、瞳の表面などの粘膜も皮膚の一種で、同じように病原体の侵入を防いでいます。皮膚が乾燥することバリア機能が低下してしまい、病原体が体内に侵入しやすくなってしまうのです。

 

つまり、「低温」と「乾燥」がダブルで起こってしまう冬は、動物たちを病気に感染させる条件を非常に高めてしまうのです。そのため、ワンちゃんや猫ちゃんが寒がらずに過ごせる温度と湿度を整えてあげることが、冬の健康管理にはとても大切になってくるのです。

 

ただし過ごしやすい条件は、品種や年齢、健康状態、これまで暮らしてきた環境など、さまざまな要因によって変わってきます。そこで飼い主様には、その時々の状況によって「いつもより温度を高くしよう」などの判断が求められてくるのです。適切に判断するためには、普段からワンちゃんや猫ちゃんの様子をよく観察しておくことが大切です。

 

当院でも、冬の間の入院室は、大型犬20℃、小型犬23℃、猫ちゃん25℃という目安を決めていますが、その子の状態に合わせて適宜調整しています。ご家庭でも、若齢やシニアの子、体調を崩している子には、少し高めの温度にするなどの調整をしてあげると良いでしょう。

 

ワンちゃんの場合は15℃、猫ちゃんの場合は21℃を下回ると体温の維持が難しくなりますので、その点は十分に気をつけましょう。留守中や就寝時の停電対策が必要な理由の一つでもあります。なお室温は、ワンちゃんや猫ちゃんが普段よくいる場所で計測してください。

 

湿度は、ワンちゃんも猫ちゃんも50〜60%の範囲を維持しましょう。加湿器の他、濡れたタオルを室内に干しておくといったような対策も、効果を期待できます。

 

移動できる場所も用意して

こたつで寝る犬

 

飼い主様に気をつけていただきたいのは、どんなに最適な環境を整えたとしても、そこから別の環境に移動できる手段も用意していただきたいということです。外の影響を受け、飼い主様の外出時は居心地が良くても、途中で暑くなりすぎることもあります。その時にワンちゃんや猫ちゃんが、自分の意思でより良い場所に移動できるようにしてほしいのです。

 

ワンちゃんや猫ちゃんが自由に動ける範囲の中に、暖かい場所と少し涼しい場所を用意してあげましょう。例えば、お留守番中は玄関、廊下、居間を開放してあげるといった感じです。そうすれば、エアコンで快適な温度を維持していた居間が、日中強い日差しで暑くなってしまっても、玄関や廊下で涼むことができるでしょう。

 

では、暖かい場所を作るときの注意ポイントをご紹介します。

 

◯事故のリスクが低い暖房器具選び

火を使わない使い捨てカイロも、長時間体に密着させると低温やけどを負う可能性があります。また袋を食いちぎって中身を誤飲するかもしれません。飼い主様の目が届かないときには、電気、ガス、石油や薬品等を使う製品はできるだけ避けましょう。

ブランケットやタオルケットなどのベッドリネン類の活用は、停電対策にもなり、ワンちゃんや猫ちゃんを安全に暖めることもできるでしょう。

 

◯換気

寒くても、部屋を1日中締め切るのはよくありません。新鮮な空気を取り込めるよう、適宜換気をしましょう。その際に気をつけたいのが、ワンちゃんや猫ちゃんの逸走です。ちょっとした窓の隙間などから外に逃げ出してしまうことがあります。特に猫ちゃんの場合は、高い所にある窓からでも簡単に出ていってしまいます。

 

◯寒暖差

ワンちゃんの場合は、お散歩の際の激しい温度差にも注意が必要です。外気温に合わせて体温を調整しているのは、自律神経です。1日の内に何度も激しい温度変化を体験すると、自律神経が乱れてしまい、体調に変調をきたすことがあります。暖かい室内から急に寒い外に出るのではなく、居間から廊下、玄関と少しずつ時間をかけて寒さに体を慣らしたり、防寒着を着せたりして、できるだけ寒暖差が小さくなるように工夫しましょう。

 

ただし、寒くてもお散歩は必要です。ワンちゃんも猫ちゃんも、それぞれに適度な運動が必要なので、寒くてもお散歩や狩りごっこをしっかり行いましょう。

 

こんなことにもご注意を!

治療中の猫

 

温度や湿度以外にも注意していただきたいポイントを挙げますので、参考にしてください。

 

◯冬に感染しやすい病気

寒い冬にかかりやすい病気としては、泌尿器系、関節系、心臓や循環器系の病気やウイルス感染症などを挙げられます。

 

泌尿器系疾患の予防には、水分補給が大切です。関節系疾患の予防としては、筋肉をほぐして血行をよくさせることを心がけましょう。いきなり激しく運動させるのではなく、準備運動を意識して少しずつ激しくしていきましょう。心臓・循環器系疾患は予防が難しいです。乾燥対策をしながら、すぐに体調変化に気付けるように注意しましょう。

 

また感染症の多くは、ワクチンで予防できるものが多いです。普段の行動範囲やお住いの地域の特性を考慮して、かかりつけの獣医師とよく相談しながら適切なワクチンで予防に努めましょう。

 

冬にかかりやすい病気については、下記のブログもご一読ください。

<冬にかかりやすい病気>へのリンク

 

◯水分補給

感染予防のためにも、水分補給は大切です。しかし、寒いとワンちゃん猫ちゃんもあまりお水を飲もうとしないかもしれません。そんな場合は、普段より水分量の多い食事で上手にコントロールしましょう。例えばいつものお食事の上に肉の茹で汁をかけるとか、ドライフードの代わりに総合栄養食のウェットフードを増やすなどです。

 

また寒い場所には行きたがらないでしょうから、水飲み皿の置き場所も工夫しましょう。

 

◯ノミ・ダニの駆除は通年で考えましょう

暖房で常に暖かい室内では、ノミ・ダニなどの害虫にも注意が必要です。一般的には4月〜11月がノミやダニの活動時期だと言われていますが、12月〜3月も室内ではノミやダニが活発に活動できる環境が維持されてしまいます。ノミは13℃あれば孵化しますし十分に活動します。ダニも15℃あれば活発に活動します。ノミ・ダニの予防期間は通年だと考えましょう。

 

ポイント

仲良く過ごす犬と猫

 

ポイント

・1月〜2月は、一年でも最も寒い時期です

・低温で乾燥する冬は、愛犬愛猫の病原体への感染リスクを高めます

・愛犬愛猫が過ごしやすい温度と湿度を維持できるよう工夫しましょう

・最適な温度は個々の犬や猫により異なるため、飼い主様の適切な判断が大切です

・愛犬愛猫が自由に行動できる範囲内に、暖かい場所と涼しい場所を用意しましょう

・停電対策や低温やけどなどの事故対策も考慮し、ベッドリネン類も活用しましょう

・愛犬のお散歩時は、急激な寒暖差をできるだけ小さくしましょう

・冬にかかりやすい病気を意識した予防策を工夫しましょう

・ノミ・ダニ対策は冬でも継続しましょう

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