肥満は万病の元 犬と猫の減量大作戦

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

ちょっとふくよかな丸い体つきの犬や猫は、外見上とても可愛らしいため飼い主様はあまり気にならない方が多いようです。しかし現在、犬や猫の肥満はとても深刻な問題になっています。肥満は寿命を縮めるような深刻な病気をはじめ、さまざまな病気の原因となるからです。

 

そこで今回は、愛犬や愛猫の健康的な減量、ダイエットのために必要な基本的な考え方や注意点についてお話ししたいと思います。

 

 

体重は、骨、内臓、筋肉、体脂肪の重さの合計値です。この内、体脂肪を除いた重さを除脂肪体重と言います。

 

成熟した健康体の場合、基本的には除脂肪体重はほとんど変化しません。しかし、体脂肪は増減します。つまり、栄養バランスが悪いとか病気だという場合を除くと、適正体重を超過した分の体重は、そのほとんどが体脂肪であると考えて間違いありません。

 

実際にX線の画像を見ると、肥満の子達には厚い脂肪の層が写っています。健康的な減量であるダイエットでは、除脂肪体重を落とさずに、増え過ぎた体脂肪のみを落とすことが大切です。

 

犬や猫を肥満のまま放っておくと、寿命を縮めるような病気や、苦痛を伴う慢性の病気にかかりやすくなります。糖尿病や心臓病、肝臓病、関節の病気などです。また、厚い脂肪層は全身麻酔のリスクを高めるので手術が難しくなる場合もあります。

 

しかも、体の重さで動くのが億劫になり、運動不足でさらに太るという負のスパイラルにも入りやすいです。そのため、愛犬や愛猫が肥満の初期段階のうちに減量を開始するのが望ましいことだと考えています。

 

肥満の定義は、一般的には下記だと言われています。

<犬>適正体重を15%以上超えた状態

<猫>適正体重を20%以上超えた状態

 

 

実は、犬にも猫にも「この品種の適正体重は○kg」という公式な定義はありません。個々に体格が異なるからです。雑種の場合は尚更定義できません。そこで、一般的にはその犬や猫が1歳の時の体重が適正体重であるとされています。犬も猫も、1歳の時点で十分に成熟しているからです。ただし、この場合も1歳時点の状態が肥満ではないことが前提です。また、保護犬・猫の場合は、1歳時の体重が不明な場合もあるでしょう。

 

そこで、客観的に犬や猫の体型を評価する指標がボディ・コンディショニング・スコア(BCS)です。5段階評価方式の場合、BCS3が理想的な体型、BCS1が痩せ過ぎ、BCS5が肥満という評価になります。

 

ここで、犬と猫のBCS3の判定基準をご紹介しますので、ご自身の愛犬や愛猫について、チェックしてみてください。

 

<犬のBCS3>

肋骨は薄い脂肪に覆われており、触ることができる。
上から見ると、肋骨の後ろに適度な腰のくびれが見られ、骨格を触ることができる。
横からは腹部の吊り上がりが見られる。

 

<猫のBCS3>

肋骨はわずかな脂肪に覆われているが、容易に触ることができる。
上から見ると、腰に適度なくびれがある。
横から見ると、腹部の吊り上がりと脇腹にひだがある。

 

犬の場合も猫の場合も、肋骨を触れない、腰にくびれがない状態ならば、肥満だと考えられます。猫の場合は脇腹のひだが目立ち、歩くと揺れるようになります。

 

肥満の原因は、食べ過ぎと運動不足です。そして、基本的に犬や猫の肥満の責任は、100%飼い主様にあると考えてください。犬や猫は、飼い主様やその周囲の方達からもらったものしか食べられないからです。

 

大抵のご家庭の場合、飼い主様はご不在の時間が長く、短い在宅時間の中から散歩や遊びの時間を捻出されていると思います。そのため、減量の中心を運動にすることは非現実的でしょう。ましてや、一般的には散歩をしない猫には難しい方法です。

 

つまり、犬や猫の減量の基本は「カロリーコントロール」だと考えてください。そして、飼い主様やその周囲のご家族の方々が、余計なご飯やおやつをあげなければ良いのだと認識してください。どんなに催促されても、決められた量のご飯やおやつしか食べさせない。このことを徹底しましょう。

 

では愛犬、愛猫の1日の摂取総カロリーは、どのように決めれば良いのでしょうか。多くの飼い主様は、フードの袋や缶に記載されている給餌量を目安に給餌していると思います。その際、現在の愛犬、愛猫の体重を元に計算してはいないでしょうか。肥満の犬や猫の体重を維持するために必要な量を給餌していることになりますので、それでは減量できるわけがありませんよね。

 

そこで、減量の第一歩として愛犬、愛猫の目標体重を決めましょう。できれば、目標体重はかかりつけの獣医師に相談して決めることをおすすめします。というのは、前述の通り適正体重を数字で設定するのは難しいからです。

 

適正体重を決めたら、その体重をベースに1日の給餌量を算出します。その際に、現状の量とあまりに差がある場合は、現在のフードを減量用の療法食に切り替えることも検討してください。減量用のフードは、同じ量でも通常のフードよりカロリーが低いため、犬や猫が摂取するカロリーが減っても、食べる量としてはあまり激減したように感じないというメリットがあります。また療法食の場合、カロリーは少なくても犬や猫に必要な栄養は減らずにしっかりと補給できるというメリットもあります。これは、冒頭でお話しした除脂肪体重の部分を減らすことなく減量することにつながります。

 

さらに、個々の犬や猫に必要な総カロリー数は、彼らの運動量などにも左右されます。1回算出した給餌量で固定してしまわず、実際の体重の減り方を見ながら調節しましょう。その際に大切なのは、体重の変化を「○kg」ではなく、「○%」で評価するということです。過度な減り方はかえって健康を損ねます。1週間で0.5〜2%減というペースを目安にしましょう。

 

もちろん、犬の場合は食事管理だけではなく、散歩も大切です。1回20〜30分程度の散歩を1日に2回行うのが目安です。

 

 

犬にとっては「食べられる時に食べられるだけ食べる」というのが常識です。そのため、よく食べる愛犬を見て「足りないのかな」と思い少しずつご飯を足していくと、愛犬は足した分だけペロリと食べてしまいます。減量中は「空腹そうでかわいそう」という気持ちは閉じ込めておきましょう。

 

犬の場合は太りやすい犬種というのがあります。柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、フレンチ・ブルドッグ、ダックスフンド、ビーグル、パグ、スコティッシュ・テリア、ラブラドール/ゴールデン・レトリバー、ウエストハイランド・ホワイトテリア、ミニチュア・シュナウザー、キャバリア、ウェルシュ・コーギーなどです。

 

避妊・去勢後の猫は特に太りやすくなります。猫は散歩をしませんが、ひどい肥満になってしまう前に、積極的に遊ぶ時間を増やすことも検討してください。

 

また、猫の多頭飼いの場合は、飼い主様の目を盗んで他の子のご飯を食べている場合が多いようです。離れた場所で食べさせる、個体により食べる時間を変える、食事中は飼い主様がずっと監視して横取りを防ぐ等の工夫をしてください。

 

 

勝手に「肥満だ」と判断してしまうのも危険です。太っているように見える原因が、腫瘍や覆水が溜まっているなどの、病気の場合もあるからです。

 

愛犬、愛猫の健康のための減量でも、無理な方法だとかえって危険な場合もあります。原因の見極め、目標体重、給餌量の減らし方など、要となる部分は逐次かかりつけの動物病院と連携して、安全に完遂されるようにしてください。

 

私たち動物病院の獣医師や看護師も、精一杯お手伝いいたします。

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