腸内細菌叢のお話し 犬と猫で違いはある?

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犬や猫にもある腸内細菌叢

挨拶する犬と猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

「腸内細菌叢(腸内フローラ)」という言葉をご存知だと思います。人だけではなく、犬や猫などのあらゆる動物の身体には、多くの細菌がすみついていて、その多くが腸に集まっています。この腸にすみついている多種多様で膨大な数の細菌の集まりが腸内細菌叢です。

 

腸内細菌叢には多くの種類の細菌がいるため、腸に対してさまざまな影響を与えています。それを受けて、腸は複雑な役割を担っていることがわかってきています。これは、ワンちゃんや猫ちゃんにもあてはまります。

 

今回は、ワンちゃんや猫ちゃんの腸内細菌叢についてお話ししたいと思います。

 

腸が果たしている役割

人の腸の構造

 

腸は、食べた食物に含まれている栄養を吸収し、その残りカスを便に変えます。以前は、腸の役割はそれだけだと思われていました。しかし最近の研究で、より多くの、そして全身の健康を維持するために重要な役割も果たしていることがわかってきました。

 

身体は脳からの命令で動きます。しかし十二指腸は、脳とは関係なく独自にホルモンを分泌することで他の臓器に指示を出し、胃液、胆汁、膵液などの消化液の分泌量をコントロールし、体の健康を維持していることがわかってきました。他にも、有害な成分を体内に取り込まないようにする免疫機能、アレルギーの発症や肥満、肌の状態、高血圧症など、腸は全身の健康に関してさまざまに関与しています。

 

こういった腸の機能を支えているのが、腸内細菌叢です。それでは、腸内細菌叢についてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

多様性が大切な腸内細菌叢

腸内細菌と健康の関係

 

どんな動物も、胎児のときは無菌状態です。生まれる際に産道を通りますが、そのときに母親の細菌を受け継ぎ、その後は食事などから細菌を取り込むことで、特有の腸内細菌叢が形成されていきます。

 

腸内細菌叢を構成する細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌に分類されます。健康に有益な影響を与えるのが善玉菌で、その代表がビフィズス菌や乳酸桿菌です。老化やストレス、薬剤などの刺激を受けて病気を発症させるのが悪玉菌で、その代表はブドウ球菌、ウェルシュ菌、緑膿菌などです。そして腸内の環境によって、あるときは有益に働き、あるときは老化などの有害な働きをするのが日和見菌です。

 

腸内細菌叢のすべてが善玉菌なら良いのかというと、そういうわけでもありません。さまざまな菌でバランス良く構成されることが大切なのです。ただし、加齢と共に腸内細菌叢の構成バランスは崩れていきます。一定の年齢を過ぎたら、減少していく菌を補給することでバランスを維持していくことが、健康の維持には大切だと考えられています。

 

有効な方法は、食事の改善です。老化が進むと消化の良い食事に切り替えるのも、腸内細菌叢のバランス維持に効果的です。また、善玉菌が増えるために必要なオリゴ糖などの水溶性食物繊維(プレバイオティクス)や生きた細菌(プロバイオティクス)の摂取も役立ちます。最近では、ワンちゃんや猫ちゃんの腸内細菌叢を改善するためのサプリメントも出てきています。

 

ちなみに、ワンちゃんや猫ちゃんの腸の健康状態を判断する目安となるのが「便秘」です。腸が健康な状態だと、便は無理に出さなくても自然に出てきます。トイレでしばらく力まなければ排便できないようなら、腸の機能が衰えてきているサインだと考えられますので、参考になさってみてください。

 

犬と猫の腸内細菌叢の違い

人と犬と猫

 

基本的には、腸の役割や腸内細菌叢の成り立ちは同じです。しかし、腸内細菌叢を構成する細菌のバランスは異なっています。犬は雑食に近い肉食性、猫は完全な肉食性で、食事の内容が異なっているためです。

 

食事の栄養バランスが悪かったり充分な運動や睡眠がとれなかったり、過度なストレスが続いたり、老化が進んだりといったことが原因で、腸内細菌叢のバランスは崩れ、便秘や感染症を引き起こしたり、老化が益々早まったりしてしまいます。

 

犬の腸内細菌叢での主役は善玉菌の乳酸桿菌です。猫の腸内細菌叢は、善玉菌であるビフィズス菌や乳酸桿菌が極端に少ないというのが特徴的で、主役は日和見菌の腸球菌です。腸球菌は、外来菌の増殖を防止するという有益な働きもしますが、下痢や胃腸炎、感染症などを発症させる病原性も持っている菌です。

 

プロバイオティクスの投与で、犬や猫の消化器症状が改善されるという研究報告があり、犬の消化器症状や便臭の改善策としてビフィズス菌の投与、アトピー性皮膚炎の改善に乳酸桿菌の投与なども行われ始めました。

 

獣医療における腸内細菌叢の研究が進むことで、それぞれの動物の特徴を意識したサプリメントなどが次第に商品化されていくことでしょう。それらを活用して健康管理に役立てていく機会も、増えていくかもしれません。

 

ポイント

仲良しの犬と猫

 

ポイント

・腸の役割は、栄養の吸収と便を作ることだけではありません。

・腸が分泌するホルモンによって、全身の健康がコントロールされています。

・腸の働きは、腸内細菌叢に大きな影響を受けています。

・腸の働きが低下している判断目安の一つが便秘です。

・腸内細菌叢は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌から構成されています。

・犬、猫の腸内細菌叢で主役となる菌は異なります。

・老化が進むと主役となる菌が減少するため、菌ケアが健康維持に役立つでしょう。

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