裏に病気が隠れていることが多い犬や猫の貧血

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犬や猫の貧血には注意が必要です

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

愛犬や愛猫の様子がいつもと何だか違う。元気がないし食欲もない。歯を磨こうとして口を開いたら、歯茎が何だか白っぽい。そんな時は、もしかしたら貧血を起こしているのかもしれません。

 

人の場合、特に女性は鉄分不足で貧血になることがありますが、今時の犬や猫は栄養バランスの整ったフードを食べているケースが多いので、鉄分不足による貧血ということはあまりありません。

 

その代わり、犬や猫が貧血を起こしている場合、その裏に何か病気が隠れていることがほとんどです。今回は、犬や猫の貧血について説明したいと思います。

 

貧血とはどういうものか

犬の歯茎

 

ご存知の方も多いと思いますが、血液は骨髄で作られています。そのため、毎日血液の一部がその新しく作られた血液に置き換わっています。血液成分中の赤血球の中にはヘモグロビンという色素があり、それが酸素と結合することで体中のあらゆる細胞に酸素を運ぶという重要な役割を担っています。このヘモグロビン、つまり赤血球が正常な状態よりも少なくなることを、貧血と言います。

 

ヘモグロビンの量は、血液検査の赤血球数(RBC)やヘモグロビン濃度(Hb)、赤血球容積(PCV)といった数値で把握できます。これらの数値が正常範囲、つまり基準値よりも低い場合に、貧血だと判断できるのです。

※赤血球容積とは、ヘマトクリット値とも言われ、血液中の赤血球成分の容積が全血液に対してどのくらいの比率を占めているかを表した数値です。

 

 

犬の場合はPCVが18%未満、猫の場合は14%未満になると、重度な貧血だといえます。

 

貧血になると、全身の細胞に酸素が行き渡らなくなりますので、さまざまな症状が現れます。主な症状を挙げると下記になります。

・すぐに疲れてしまい、あまり動こうとしなくなる

・元気がない

・食欲がない

・歯茎、舌などが白っぽくなる

 

また、重度な貧血の場合はショックを起こして意識がなくなってしまうことがあり、場合によっては命に関わることもあり得ます。

 

貧血の種類

骨髄で血液が作られるイメージ図

 

貧血と言っても、その原因によって3つに分類することができます。

 

1.失血性貧血

失血性貧血とは、血液が血管の外に漏れ出してしまうことが原因で赤血球が減少するタイプの貧血です。

原因としては、外傷や腫瘍の破裂、血小板の減少などによる止血異常といったことが挙げられます。

 

2.溶血性貧血

先ほど、血液は毎日新しく作られると言いましたが、それはつまり、同程度の血液が破壊され死んでいるということでもあります。その通常のスピードよりも速い速度で赤血球が破壊され、新しく作られる赤血球の数が追いつかなくなってしまうことが原因で起こる貧血が、溶血性貧血です。

原因としては、免疫疾患や中毒などが挙げられます。

 

3.非再生性貧血

非再生性貧血は、骨髄が何らかの原因によって血液を生産できない、またはごく少量しか生産できなくなってしまうことが原因で起こる貧血です。

原因としては、慢性腎不全、内分泌疾患、骨髄疾患、免疫性疾患などさまざまな病気が原因になります。

 

貧血の原因となる主な病気

治療中の猫

 

ここでは、犬や猫が貧血を起こす原因となる主な病気をご紹介します。

 

1.ハインツ小体性貧血

タマネギ、ネギ、ニンニク、ニラなどのネギ類の大量摂取や、アセトアミノフェンなどの薬物投与により、赤血球の寿命が短くなって溶血性貧血を引き起こします。猫の場合は、糖尿病、甲状腺機能亢進症、リンパ腫などの病気でもハインツ小体性貧血を起こします。

治療に際し、貧血が重度の場合は輸血が必要になる場合もあります。

 

2.免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

免疫機構の異常により、自分自身の赤血球を破壊してしまうことで起こる重度の貧血です。特に他の原因がなく、突然免疫異常が発生した場合の原発性と、腫瘍や感染など他の要因により引き起こされた二次性の場合があります。二次性の場合は、免疫を抑える治療と併せて、原因に対する治療も必要となります。

 

3.慢性腎不全

腎臓は尿を作る臓器です。しかしそれだけではありません。体内のバランスを整えたり、血圧を調節したり、ホルモンを分泌したりもしているのです。

腎臓が分泌しているホルモンの中の1つが、エリスロポエチンという造血ホルモンで、これは骨髄に対して赤血球を作るように促すホルモンです。

そのため腎臓の機能が低下してしまうと、赤血球が作られなくなっていき、非再生性貧血を起こす原因となります。

 

他にも、猫免疫不全ウイルス感染症(FIV)、猫白血病ウイルス感染症(FeLV)、腫瘍、慢性炎症、甲状腺機能亢進症や外傷など、さまざまな病気や怪我が貧血の原因となり得ます。貧血が原因で来院された場合でも、正しい治療を行うために、このような裏に隠れている病気を突き止める必要があるため、さまざまな検査を行うことになります。

 

貧血時に行う主な検査等

正常な血液の顕微鏡写真貧血の顕微鏡写真

※上の写真は正常な血液、下の写真は貧血状態の血液を顕微鏡で撮った写真です。

 

1.問診

来院された場合、必ず行うのが問診です。溶血性貧血を引き起こすような食べ物や薬品類の摂取の有無や、遺伝に関する要因、火傷や打撲などの有無や出血を疑わせるような所見の有無などを飼い主様に確認させていただきます。

 

2.触診

これも、来院されたら必ず行います。実際の患者様であるワンちゃんや猫ちゃんの外見を目視で確認し、体に触れて触診します。問診と触診の結果、ある程度疑われる病気を絞り込み、それらを確認するために必要な検査を適宜行います。

 

3.血液検査(血液一般検査、塗抹検査、クームステスト)

一般的な血液検査でRBC、Hb、PCVの数値を確認し、貧血の有無や度合いを確認します。また、塗抹検査を行い、血球の形態や抹消血液中の網状赤血球の状態を確認します。

網状赤血球とは、成熟した赤血球になる前段階の幼若な赤血球ですので、この有無や量により、非再生性貧血か再生性貧血(溶血性貧血、失血性貧血)かを識別することができます。

また、クームステストとは赤血球膜に抗赤血球抗体があるかどうかを調べる検査で、あった場合は免疫によって赤血球が破壊されているという指標になります。

 

4.FIV検査/FeLV検査

猫の場合はFIVやFeLVに感染しているかどうかを確認します。

 

5.画像検査

腫瘍の有無や内臓器の疾患の有無を確認するために、X線検査、超音波検査、CT検査などを行います。

 

6.骨髄穿刺

全身麻酔をかけて骨髄に針を刺して骨髄の細胞を採取し、その状態を調べる検査です。ワンちゃんや猫ちゃんへの負担が大きい検査なので、状態をよく考慮した上で検査の実施可否を判断します。

 

犬や猫の貧血に関するまとめ

眠っているダックスフンド

 

ポイント

・犬や猫の貧血には裏に病気が隠れていることがほとんどです

・貧血の治療を行うためには、裏に隠れている病気を突き止めるために各種検査が必要です

・貧血には失血性貧血、溶血性貧血、非再生性貧血の3種類があります

 

愛犬や愛猫の様子がおかしい、歯茎や舌が白っぽいなどの症状がみられた場合は、なるべく早く動物病院で受診するようにしましょう。

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