軽く考えてはいけない犬猫の異物誤飲

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こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

異物の誤飲による来院は、犬、猫、フェレットなどによくみられます。中には、「飲み込んだかどうかはっきりしないのだが飲み込んだかもしれない」と言って連れて来られる飼い主様もいらっしゃれば、「便と一緒に自然に出てくるかと思って様子を見ていたんです」と数日経ってから来られる飼い主様もいらっしゃいます。

 

大事に至らずに済むこともありますが、中には開腹手術で飲み込んだ異物を取り出さなければならない場合もあります。飲み込んだモノの形状や状態によっては、命に関わる場合もあるので、決して軽く考えて良い問題ではありません

 

異物誤飲は、飼い主様が対策することで防ぐことのできる事故です。ぜひ、ご家庭で注意をしていただきたいと思います。その際に、このブログを参考にしていただければ幸いです。

 

 

犬や猫が飲み込んでしまう異物には、色々なモノがあります。誤飲防止策を考える際の、異物の考え方には、下記のような5つの観点があります。

 

(1) 消化管穿孔を起こすリスクが高い

飲み込んでしまったモノが尖っていると、消化管の壁に穴をあけてしまう危険があります。例えば、やきとりなどが刺さっていた竹串、針、画鋲などのようなモノです。

 

(2) 胃や腸管を詰まらせるリスクが高い

糸や毛糸などの紐状のモノや布製品、石や果物の種などは、胃や腸に詰まってしまう可能性があります。

 

(3) 食道を詰まらせるリスクが高い

胃まで到達せずに、食道で詰まってしまうモノもあります。例えば、果物や野菜の種、とうもろこしの芯、ジャーキー、ガム、丸い形状のアクセサリーやおもちゃのようなモノです。

 

(4) 中毒を起こすリスクが高い

犬や猫に中毒を起こさせるモノもたくさんあります。例えば、ヒトの医薬品やサプリメント、タバコ、保冷剤、観葉植物などです。特に猫は、完全肉食性なので植物を消化したり肝臓で解毒したりできません。猫にとっては、猫草等のごく一部を除いて植物全般がよくないと考えた方が良いでしょう。

 

(5) 犬や猫の興味を引くモノ

犬や猫が興味を持ちやすいモノも口にしやすいので危険です。例えば、動きがあるモノや、犬猫にとって良い匂いや味のするモノ、普段飼い主様が口にしているモノなどです。

 

ある動物保険会社が獣医師に行った犬や猫の異物誤飲に関するアンケートの結果で、死亡した症例の多い異物として、「紐」「布製品」「ヒトの医薬品」が上位に挙がっていたのを見たことがあります。やはり、胃や腸を詰まらせやすいモノや中毒を起こさせるモノについては、特に注意をする必要があるでしょう。

 

 

なぜ、犬や猫は異物を飲み込んでしまうのでしょうか。その仕組みは至って単純です。

 

犬や猫の手が届く所にモノがある

 ↓

犬や猫がモノに関心を持つ

 ↓

犬や猫がモノを口に入れる

 ↓

犬や猫がモノを飲み込む

 

ではこの至って単純な流れに沿って、犬や猫の誤飲を防止する対策を考えていきましょう。

 

【飲み込ませたくないモノを置かない】

犬や猫の手が届くところにモノを置かないこと。これが、犬にも猫にも有効な、最も基本的な対策です。これは、しまっておくという意味だけではなく、うっかり落としてしまうとか、食べると危ないモノだと知らずに与えてしまうということも含んでいます。

 

前述の5つの観点で、ご自宅にあるまたはあるかもしれない異物を洗い出し、それぞれをしまう場所や扱い方についてルール化し、ご家族内で徹底するようにしましょう。

 

【関心を持たせない】

犬も猫も、退屈していると必要ではないモノにも関心を持ってしまいます。毎日ストレスを発散させて欲求不満にならないようにしてあげましょう。また、異物の置いてある場所には近寄らせないようにしましょう。犬の場合は、散歩中の拾い食いもありますので、散歩中は常に飼い主様を意識させるようにしましょう。

 

【口にしても騒がない】

犬や猫が異物を咥えているのをみつけても、決して騒がないようにしましょう。驚いて飲み込んでしまうことがあります。また、犬に多いのは「取ろうと思ったら飲み込んでしまった」ということです。犬は自分の物を守ろうとします。また、飼い主様との奪い合いゲームが大好きです。そのため、飼い主様が咥えているモノを取ろうとすると、取られまいとして積極的に飲み込んでしまうことがあるのです。

 

【咥えているモノを離させるトレーニング】

これは、犬に対して有効な対策です。普段のトレーニングの中に、「オフ」や「貸して」という号令で口にしている物を離すとご褒美をあげるという遊びを取り込んでみてください。飼い主様に物を貸してあげるとご褒美がもらえるということを学習し、いざという時に役立つでしょう。

 

 

犬や猫が異物を誤飲する事故はよくありますが、こういった事故を何度も繰り返す場合は、何らかの病気と関係があるかもしれません。心当たりのある飼い主様は、異物誤飲と関連する病気についても意識した方が良いでしょう。

 

病気や薬、不適切なダイエットが原因で食欲が増えて食べ物に執着する場合があります。また、メンタル系の病気が原因で異物を食べてしまう場合もあります。それぞれ、もう少し詳しく見ていきましょう。

 

【異物誤飲と関連する病気】

(1) 食欲を増やす原因となる病気

・内分泌系の病気(クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、糖尿病等)

水を飲む量が増えたりおしっこの量が増えたりする特徴があります。

 

・膵外分泌不全、炎症性腸炎、消化管内寄生虫症、リンパ管拡張症

これらの病気には下痢を伴うという特徴があります。

 

(2) 食欲を増やす原因となる薬

・ステロイド、抗ヒスタミン薬、抗けいれん薬など

これらの薬の投薬中は、特に異物誤飲対策に気をつけましょう。

 

(3) 不適切なダイエット

現代の飼い犬や飼い猫の多くが肥満の傾向にあります。飼い主様が自己流でダイエットするのではなく、動物病院で定期的に診てもらい、獣医師のアドバイスの下で適切なダイエットを行うことが、愛犬や愛猫のためにもなるということを知ってください。

 

 

【異物誤飲と関連するメンタル系の病気(問題行動)】

メンタル系の病気は、何か不安を抱えている、普段の生活の中での刺激が少なすぎる、ストレスなどが原因で起こる病気で、問題行動という形で現れます。動物病院で診てもらい、適切な行動療法と環境改善を行いましょう。

 

(1) 異嗜症

犬や猫の中には、石や砂、芝などを繰り返し食べてしまう子たちがいます。このような、飼い主様も「こんなモノを」と驚くようなモノを食べてしまう病気を異嗜症といいます。誤って食べるのではなく、積極的に食べてしまうので、何度も繰り返すことになります。

 

(2) 分離不安症

犬や猫が飼い主様に強く依存してしまうと、飼い主様がいないことに対して異常ともいえる強い不安を感じて様々な問題行動を起こします。この病気を分離不安症といいます。特徴は、飼い主様が側にいるときには問題ないのに、不在時だと問題行動を起こすということです。飼い主様の留守中に何度も異物誤飲をするようであれば、この病気が関係しているかもしれません。

 

 

異物誤飲は、全く症状を示さず、そのまま自然に排泄されてしまうこともありますので、そのうちに出るだろうと軽く考えてしまう飼い主様もいらっしゃいます。しかし、場合によっては命を落とすことにもつながります。

 

特に、紐状のモノは腸に絡まってしまって腸管を壊死させてしまう場合もあるので、細長いから詰まることはないだろうと考えるのは大きな間違いです。

 

異物誤飲は、飼い主様の注意や日頃の対策で防ぐことができる事故です。どうか軽く考えずに、普段から気をつけることを習慣づけてください。また、心配だったらすぐに動物病院に連れてきてください。

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