飼い主様がペットについて学ぶ機会について
犬や猫について勉強したい
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
ワンちゃんや猫ちゃんと一緒に暮らしている飼い主様の中には、「もっと犬や猫について勉強したいけれども、時間もお金も余裕がないし、どうすればいいだろう」と思っている方もおられるのではないでしょうか。
どんなに犬や猫が好きで、できるだけ多くの時間を彼らのために費やしていても、それだけでは難しいのが動物の家族たちとの暮らしです。人の祖先と犬や猫の祖先が一緒に暮らし始めてかなり長い年月が経ちました。その間に、犬や猫と人の間には、独特な意思疎通の手段が確立されてきました。
しかしそれだけでは、一緒に暮らしているワンちゃんや猫ちゃんが実際にどう感じているのか、本当に彼らのためになっているのか、心地よく暮らせているのか、わからないことが多すぎるのが現実なのです。
犬と人、猫と人といった異なる種の動物同士が一緒に暮らすのですから、ある意味それは当たり前のことだといえるでしょう。目に見えている景色や聞こえている音、嗅ぎ分けられるニオイなど、同じ空間で暮らしていても、それぞれが感じている世界にはかなり差があり、思考の仕方も異なる部分が多いのですから。
ワンちゃんや猫ちゃんと飼い主様ご家族が今以上に快適で幸せに暮らしていくため、もっと犬や猫について積極的に勉強したいと考えている飼い主様のために、犬や猫について勉強できる、身近な学べる機会にどのようなものがあるのかをご紹介したいと思います。
通信教育
犬や猫の飼い主様が知っておきたいことを全般的に学びたい、健康管理や習性・行動、しつけ方などの特定分野を深く掘り下げたいなど、飼い主様によって学びたい内容はさまざまでしょう。教育内容がご希望に沿っていることはもちろんですが、学びたい内容を体系的にしっかりと学びたいのであれば、ある程度の期間と受講料を必要とする教育を受けるという選択があります。
もちろん、動物に関する専門学校に通うという選択肢もありますが、将来そういった職業につきたいというケースでなければ、通信教育を選択する方が、時間的にも費用的にも現実的でしょう。
通信教育にも、テキストやDVDなどが送られてくるタイプや、eラーニング、オンライン受講などのタイプがあり、自習した上で課題を郵送し、テスト結果によって修了認定や、その団体が制定した資格を取得できるといったものが多いようです。
いずれの場合も、専門家が作成したテキストや動画などを利用して、学びたいテーマを体系的に学べるという点では、通学受講と同程度の知識を得ることが期待できます。欠点は実習ができないことですが、中には短期間のスクーリングが用意されていて、その中で実習が用意されているような講座もあります。
まずは学びたい内容を絞り込み、複数の会社に資料を請求してご自身に最もふさわしい内容、期間、形態、料金の講座を選ぶと良いでしょう。
セミナー
通信教育のように体系的に学ぶことは難しいですが、単発で開催されるセミナーを利用するという方法も、受講のしやすさといった点ではおすすめです。飼い主様向けのセミナーは、ケアサロンやショップ、自治体、獣医療関連団体など、さまざまなところが主催しています。
WEB上でも、gaccoやudemyなどの無料や有料でさまざまなオンライン講座を受講できるサイトで、犬や猫の関連講座が開講されることがあります。開講予定情報をまめにチェックしておくと良いかもしれません。以前は朝日新聞が「まなびばsippo」で、セミアー動画やライブ配信による飼い主様向けの有料講座を開講していました。現在は終了してしまったようですが、今でも「sippo」で、飼い主様向けの犬や猫に関するさまざまな情報を記事という形で提供しています。
また、健康管理や人と動物の絆に関する飼い主様向けのセミナーを毎年開催しているのが、日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)という一般社団法人です。毎年9月に開催している年次大会では、獣医師向けや動物看護師向けのセミナーと共に、飼い主様向けのセミナーも用意されています。ここ数年は新型コロナ感染症対策のためにオンライン開催でしたが、今年は久しぶりに対面式で開催されます。例年よりも規模が縮小され、飼い主様向けのセミナーは2023.9.24(日)の1日のみですが、ホテルニューオータニで、08:50から18:00まで、「主治医とセカンドオピニオン」や「人と犬との絆形成メカニズム」「犬と猫の代表的な心臓病の診断法・治療法」など5つの講座と、1つのスペシャルシンポジウムが用意されています。日程が迫っていますが9.15(金)まで申し込めますので、ご興味があればJBVP年次大会2023のサイト<https://jbvp.hisync.online/>にアクセスしてみてください。市民の参加料金は2,000円です。
書籍
もっとも身近で学習期間の制約もない学習方法が、専門誌も含めた書籍による勉強です。大型書店であれば、犬や猫に関連した書籍が数多く並んでいます。その内容も、「飼い方」や「犬種・猫種図鑑」といった一般的な内容から「犬・猫の腫瘍」のような専門書までさまざまです。また動物行動学を一般的に解説したものや、動物行動学をベースに犬や猫へのしつけについて解説したものなども出版されています。
紙の書籍はもちろんですが、電子書籍化されているものもありますので、いつでもどこでも生活スタイルに合わせて読む時間を捻出できること、必要に応じて読み直すことで何度も確認できることなど、書籍による学習は融通も利き便利な学習法だと思います。
書籍に限りませんが、肝心なのは内容の正しさ、新しさです。必ず初版時期や目次、執筆者を確認しましょう。動物に関する研究は日進月歩で、数年前までの常識が、今では完全に否定されているといった例も決して少なくありません。出版当時は最新の内容でも、すでに古くなってしまった内容であると、間違った説を学習してしまうかもしれません。
できるだけ最近のもので、執筆者の経歴や目次内容から、最新の研究内容を反映していると思えるものを選ぶように心がけてください。通信教育の監修者やセミナーの講演者についても同じことがいえるでしょう。通信教育でもセミナーでも書籍による独学でも、犬や猫に関する勉強を継続していれば、だんだんと新しい研究内容の見つけ方や古い学説のキーワードなどが分かってくるようになると思います。研究機関などがWEB上で発信している情報も上手に活用しながら、最新のスタンダードとされている正しい情報を見つけるノウハウを身につけましょう。
ポイント
ポイント
・犬や猫と共に幸せに暮らすために、飼い主様は犬や猫のことを勉強する必要があります
・犬や猫のことは、通信教育、セミナー、書籍といった方法で学ぶことができます
・教材の監修者や講演者、書籍の執筆者や発行時期を確認することも大切です
・犬や猫の研究は日進月歩なので、常に今現在のスタンダードを知ることが大切です