【獣医師が解説】犬のおしっこが出ない!すぐに病院へ行くべき症状と対処法|命に関わる可能性も

犬猫の病気や症状

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

愛犬のおしっこの量や回数、状態を日々観察していますか? うんちと比べると、おしっこはその量や色、頻度をチェックしづらく、異常に気づきにくいものです。しかし、この「見落としやすい」サインが命に関わるトラブルの前兆である可能性もあります。

 

特に寒い冬は要注意の季節で、寒さによる水分摂取量の低下や、活動量の減少が尿のトラブルを引き起こしやすくします。「最近、おしっこの回数が少ない」「なんだか様子がおかしい」と感じたら、早めの対応が大切です。

 

今回は、犬のおしっこが出ない状態について、獣医師の視点から詳しく解説します。緊急時の判断基準から原因の理解、そして日常でできる予防策まで、飼い主様が愛犬を守るために必要な情報を分かりやすくお伝えします。

おしっこが出ないのは危険!緊急受診が必要な症状

愛犬がおしっこを出したがる様子を見せても、実際には出ない、またはほんの少量しか出ないなどの症状は、ただの一時的な体調不良ではなく、命に関わる危険な状態に発展する可能性があります。特に次のような症状が見られる場合は、すぐに動物病院を受診してください。

 

1. 24時間以上おしっこが出ていない
犬の尿は、体内の老廃物や毒素を排出する重要な役割を果たしています。排尿が24時間以上見られない場合、体内に毒素が蓄積し、腎臓や他の臓器に深刻な負担がかかることがあります。この状態は命に関わる可能性があるため、即時の対応が必要です。

 

2. 頻繁にトイレに行くが、少量しか出ない
頻尿で少量のおしっこしか出ない場合、尿道や膀胱に問題がある可能性があります。特に尿路結石や膀胱炎が疑われ、放置すると尿道が完全に詰まり、急性の腎不全を引き起こすリスクがあります。

 

3. おしっこをする際に痛がって鳴く
おしっこをしようとするたびに痛そうに鳴いたり、排尿後に落ち着かない様子を見せたりする場合は、尿路や膀胱の炎症、結石、または腫瘍が原因となっている可能性があります。このような症状が見られる場合、迅速な診断と治療が必要です。

 

4. おしっこに血が混じっている
血尿は、膀胱炎、尿路結石、または腫瘍の初期症状である可能性があります。血尿が続く場合や、排尿の際に血が多く見られる場合は、早めに検査を受けることで、重篤な状態を回避することができます。

 

これらの症状がある場合、体内に毒素が蓄積され、命に関わる危険な状態となる可能性があります。特に、おしっこが出ず嘔吐をしている場合は、尿毒症の可能性が非常に高く、緊急性が極めて高い状態です。

 

〈正常なおしっこの量の目安〉

健康な犬の1日の適正な排尿量は、体重1kgにつき20〜40mlが目安です。
・50ml以上の場合:多尿
・7ml以下の場合:乏尿
・2ml以下の場合:無尿

おしっこが出ない原因と考えられる病気

茶色い斑点模様のある白い犬が、後ろ足で立ち上がって窓の外を眺めている写真。床にはペット用トイレシートと水のボウルが置かれている

犬がおしっこを出せない、または出にくい状態には、さまざまな病気が隠れている可能性があります。ここでは、代表的な原因となる病気について詳しく解説します。

 

尿路結石症
腎臓、尿管、膀胱、尿道のどこかに砂粒から小石程度の大きさの結石ができる病気です。そのまま排出されれば問題はありませんが、結石が尿道の細くなる部分に詰まると排尿困難を引き起こします。特にオス犬は尿道が細長いため詰まりやすく、命に関わる状態になることがあります。
尿路結石についてはこちらをご覧ください

 

膀胱炎
膀胱が細菌感染や他の刺激によって炎症を起こす病気です。膀胱結石や腫瘍が原因で炎症を引き起こす場合もあります。また、炎症により剥がれ落ちた膀胱の内側の細胞や血の塊が尿道を詰まらせ、排尿困難になることがあります。

 

前立腺肥大
精巣から分泌されるホルモンのバランスが乱れることで発症する前立腺の良性腫瘍です。肥大した前立腺が尿道や腸を圧迫し、排尿や排便が困難になることがあります。特に中高齢の未去勢オス犬に多く見られます。

 

慢性腎臓病
高齢犬に多い病気で、腎臓の機能が徐々に低下する病気です。腎臓機能は相当低下するまで症状が現れないため、飼い主様が気づいた時にはすでに重篤化している場合が少なくありません。
慢性腎臓病についてはこちらをご覧ください

動物病院での検査について

まずは問診視診が行われます。飼い主様から症状がいつから始まったのか、どのような状況が見られるのかを詳しく聞き取り、膀胱の状態や痛みの有無を確認します。

 

次に、具体的な診断のために各種検査が行われます。
血液検査では腎臓や肝臓の状態を確認し、尿検査では尿のpHや結晶、細菌の有無などを調べます。これにより、尿路結石や膀胱炎などの病気が特定されることが多いです。また、レントゲン検査で結石の位置やサイズを明確にし、超音波検査を用いることで腎臓や膀胱、前立腺などの内部の詳細な状態を確認します。

 

動物病院での治療について

尿道が詰まっている場合は、まずカテーテルを挿入して尿を排出させる処置が行われます。この際、点滴を併用して腎臓の負担を軽減しながら体内の毒素を排出します。

 

また、膀胱炎の場合は、主に抗生物質を用いた治療が行われ、結石が原因の場合は薬物療法や食事療法で結石を溶かす方法が取られます。

 

結石が大きく、薬や食事での対応が難しい場合は、外科手術や特殊な器具を用いて結石を除去する処置が必要になります。また、前立腺肥大が原因であれば、ホルモン療法や去勢手術が治療の選択肢となります。慢性腎臓病の場合は、進行を遅らせるために点滴や腎臓に配慮した食事療法が行われます。

 

犬のおしっこが出ない症状を防ぐための予防法と日常のケア

茶色と白の模様を持つ犬がサークル内でペット用トイレシートの上に座っている写真。犬は少しこちらを見ている様子

愛犬の尿路の健康を守るためには、日々のケアと予防がとても大切です。

 

1. 水分補給の工夫
常に新鮮な水を用意し、特に冬場には冷たい水を嫌がる犬もいるため、室温やぬるま湯を与える工夫をしましょう。
また、ドライフードを主食としている場合には、水分補給を助けるためにウェットフードを取り入れるのも効果的です。

 

2. 排尿環境の整備
おしっこを我慢することは、膀胱炎や尿路結石の原因となる可能性があります。散歩の時間を確保し自然な排尿を促し、トイレ環境は常に清潔に保つようこまめな掃除を心がけましょう。

 

3. 食事管理
適切な食事管理も、尿路の健康を守るための重要なポイントです。
・栄養バランスの取れたフードを選び、特にミネラル分の過剰摂取を避ける
愛犬の体重を適切に管理し、肥満による尿路疾患のリスクを軽減する。

 

4. 日々の観察
おしっこの回数や量、色、臭いの変化に気づけるよう、普段から愛犬の排尿習慣を把握しておきましょう
例えば、以下のような変化が見られた場合は早めに動物病院を受診してください。

 

・おしっこの色が濃くなった
・臭いが強くなった
・排尿の回数や量が普段と異なる

 

5. 定期的な健康診断
尿路や腎臓の異常は、初期症状が現れにくい場合があります。そのため、年に1~2回、血液検査や尿検査、画像診断を組み合わせた健康診断を受けることが理想的です。
定期的な診断を行うことで、病気の早期発見・早期治療が可能になります。

まとめ

・おしっこには、体内の毒素や老廃物を体外に排出する役割があります。
・おしっこが出ないと、体内に毒素がたまり命に関わる危険な状態になることもあります。
・おしっこが出ず嘔吐をしている場合は、尿毒症の可能性が非常に高いです。
・冬でもいつも通りの飲水料を保つように、積極的に運動をさせることが重要です。
・日頃からおしっこの状態や様子を観察し、僅かな変化も察知できるようにしましょう。

 

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