かわいくても太らせないで!怖い肥満の影響

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なんで肥満はよくないの?

太り過ぎのチワワ

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

つぶらな瞳でワンちゃんや猫ちゃんにおねだりされると、ついおやつをあげてしまってはいませんか。スタイルを気にして極度のダイエットをされている方も多いのに、ワンちゃんや猫ちゃんに関しては「少しぽっちゃりしているくらいの方がかわいい」と、あまり真剣にダイエットに取り組もうと思われない飼い主様が多いように感じています。

 

肥満はスタイルの良し悪しだけではなく、ワンちゃんや猫ちゃんの健康に良くない影響を与えてしまいます。理想体重を基準に、ワンちゃんの場合は15%以上、猫ちゃんの場合は20%以上の体重になると肥満です。基本的に大型犬を除き、ワンちゃんも猫ちゃんも1歳でほぼ骨格ができあがります。そのため、幼犬・幼猫の頃から病気等の理由で痩せすぎたり太りすぎたりしていなければ、1歳頃の体重がその子の適正体重だと考えて構いません。

 

1歳を超えて増えた体重は、通常そのほとんどが体脂肪です。つまり、適正体重を上回っているワンちゃんや猫ちゃんは、体脂肪率が高い状態です。健康なワンちゃんや猫ちゃんの体脂肪率は15〜24%ですが、25〜34%になると肥満予備軍、35%以上だと肥満です。

 

ご家庭で体脂肪率を測るのは一般的ではないため、5段階評価方式のBCS(ボディコンディションスコア)を利用して体型を評価するのが一般的です。犬と猫とでそれぞれに評価基準が定められていますが、いずれの場合もBCS3が理想体型、BCS4が肥満予備軍、BCS5が肥満と評価されます。

 

なお体重の増減については、比率で考えてください。例えば4kgの猫が4.4kgになった場合、「400g太った」ではなく「10%太った」という把握の仕方をするということです。10%と考えれば、すぐに60kgの成人が6kg太ったことに相当すると換算できるため、「たかが400g」とは考えなくなるからです。

 

肥満により体重が増える事で、体に余計な負担がかかります。また体脂肪の増加は、本来備わっている健康を維持する体の機構の阻害要因となってしまいます。そのため、肥満はさまざまな病気のリスクを高めたり、既にかかっている病気の症状を悪化させたりしてしまいます。そこで今回は、肥満がワンちゃんや猫ちゃんに与える健康影響をご紹介します。

 

肥満が犬に与える健康影響

太り過ぎのダックスフンド

 

人の場合、肥満が原因でかかりやすい病気の筆頭に糖尿病が挙げられます。特に日本人は元々インスリンの分泌能力が低いため、欧米人によく見られる超肥満体ではなくても、2型糖尿病になりやすい傾向があります。犬も糖尿病にかかりますが、そのほとんどは1型糖尿病です。1型糖尿病は肥満とは直接関係しないため、肥満が犬に与える健康影響として、糖尿病は該当しないと考えても良いでしょう。

 

ただし、犬の肥満は尿道括約筋機能不全(USMI)のリスクを高め、気管虚脱を誘発する原因となることが分かっています。前者は尿失禁を引き起こす病気で、後者は呼吸が充分にできなくなる病気です。気管虚脱は喉頭麻痺や短頭種症候群などの症状を悪化させますので、パグなどの短頭種は特に注意が必要です。

 

また犬の場合、体脂肪率が37%以上だとマラセチア性外耳炎や膿皮症のリスクが高いという報告があります。

 

体重が増えると関節に掛かる負担が重くなることは、容易に想像できるでしょう。関節への負担が重くなることで、関節の病気を悪化させたり、前十字靭帯断裂や椎間板の病気の原因となったりします。逆に、股関節炎による跛行は減量により改善することが期待できます。

 

がんは、その症状として体重減少が現れるため、肥満との関係を見極めるのは難しいのですが、複数の研究者から、乳腺腫瘍は肥満と関係しているとする報告が出されています。また犬の肥満は急性膵炎の原因となるという報告もあります。さらには、10年以上をかけて行われた研究により、過食による肥満は寿命を縮めることも報告されています。

 

肥満が猫に与える健康影響

太り過ぎの猫

 

猫の場合も犬と同様に、肥満が気管虚脱の原因となったり関節系の病気を悪化させたり、乳腺腫瘍の原因となったりすることが分かっています。犬との大きな違いとしては、下記のことが挙げられます。

 

猫の糖尿病は、人の2型糖尿病によく似たタイプが多く、肥満の猫では肥満した人と同様のインスリン抵抗性が見られるため、猫の場合は肥満が糖尿病の原因であると考えられています。肥満した人や猫に見られるインスリン抵抗性は、インスリン感受性を維持したり動脈硬化を阻止したりするアディポネクチンの血中濃度が減少するために生じると考えられています。犬は、アディポネクチンによるインスリン感受性の低下を上回るインスリン分泌を増大させる高い代償能を持つため、肥満が糖尿病に影響を与えないのだろうといわれています。

 

肥満は、猫に脂肪肝(特発性肝リピドーシス)を発症させるリスクを高めることが分かっています。肥満した猫を絶食させると、数日で脂肪肝が発症する可能性があります。絶食という極端なケースではなくても、ダイエットのためと考えて極端な食事制限をしてしまうと、脂肪肝になる危険がありますので、十分な注意が必要です。

 

上手に減量するポイント

体重を量る犬

 

肥満になる原因は、消費するよりも多いカロリーを食べさせてしまうためです。しかし、食事制限だけ、もしくは運動だけといった偏った方法による減量は、かえって健康を害したり長続きしなかったりすることが多いです。そのため、ワンちゃんの場合も猫ちゃんの場合も、食事制限と適度な運動の双方により、長期的に適正体重を目指すことが望ましいです。

 

ただし、肥満になってから適正体重に戻すのはとても難しいです。ワンちゃんや猫ちゃん自身も飼い主様も大きな負担を負うことになるため、肥満になってから減量するのではなく、健康なうちから肥満にさせないよう予防することが大切だと考えましょう。

 

また、急激なダイエットは健康を害する原因になります。特に猫ちゃんの場合、先にご説明した通り、急激な食事制限は脂肪肝を発症するリスクが極めて高いため、かかりつけの獣医師と相談しながら、1週間に1〜3%の減量を目安にダイエットさせましょう。

 

ポイント

猫を遊ばせる

 

ポイント

・大型犬を除き、犬も猫も1歳頃の体重がその子の適正体重と考えて問題ありません。

・体脂肪率25〜34%(BCS4)が肥満予備軍、体脂肪率35%以上(BCS5)が肥満です。

・適正体重より15%以上重い犬や20%以上重い猫は太り過ぎ(肥満)です。

・犬や猫の体重変化はgではなく%で考えましょう。

・肥満が犬に与える健康影響は、尿道括約筋機能不全(USMI)、気管虚脱、マラセチア性外耳炎、膿皮症、関節系疾患、乳腺腫瘍、急性膵炎等です。

・肥満が猫に与える健康影響は、気管虚脱、関節系疾患、乳腺腫瘍、糖尿病、脂肪肝等です。

・肥満は、犬や猫の寿命を縮めると考えられています。

・犬も猫も、肥満させないように予防することが大切です。

・肥満になってしまった場合は、食事制限と適度な運動の双方をバランスよく取り入れて、計画的にダイエットをすることが大切です。

・ダイエットの目安は、1週間に1〜3%の減量です。

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