愛犬愛猫にチョコレートを食べさせないで!

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犬や猫にチョコはタブー

チョコを見つめる猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

早いもので、もうすぐバレンタインデーです。恋人やご家族、親しいご友人などに、手作りチョコを贈られる方も多いのではないでしょうか。チョコレートは栄養価も高く、またハイカカオチョコレートは体に良い成分を豊富に含んでいると、近年は注目を浴びています。

 

チョコレートの主原料はカカオです。カカオポリフェノールには、皮膚の老化防止や動脈硬化予防といったアンチエイジング効果が期待されます。またカカオには、腸のぜん動運動を活性化させる食物繊維が豊富なため、便秘対策の効果も期待できます。そして自然界ではカカオにしか含まれていない成分のテオブロミンには、脂肪の蓄積を抑えたり血流を促進したり、眠気を覚ます効果が期待されます。

 

しかし、私たちと一緒に暮らしている犬や猫にとっては、チョコレートは禁忌な食べ物に分類されています。なぜ禁忌な食べ物なのかというと、チョコレートを食べると犬や猫は中毒症状を引き起こしてしまうからです。

 

チョコレートは1年中食べられますが、特にバレンタインデーの前後には「チョコレートを食べてしまったみたいだ!」といって来院されるワンちゃんや猫ちゃんが増えます。そこで今回は、犬や猫のチョコレート中毒についてお話したいと思います。

 

チョコレート中毒の原因

チョコづくり

 

犬や猫に中毒症状を引き起こさせるのは、カカオに含まれているテオブロミン、カフェイン、テオフィリンで、特に多量に含まれるのがテオブロミンです。これらはメチルキサンチン誘導体と言われる化学物質で、体内にあるホスホジエステラーゼという物質の働きを阻害します。

 

ホスホジエステラーゼの働きが阻害されると、平滑筋が弛緩します。この性質を利用して、人間用の喘息や狭心症などの薬としても利用されます。つまり、メチルキサンチン誘導体は、人間にとっては有益な化学物質として活用されているのです。

 

にもかかわらず、メチルキサンチン誘導体が犬や猫にとっては有害な方向に働いてしまう理由は、反応性と代謝能力の違いによります。犬や猫は、メチルキサンチン誘導体に対してとても強く反応し、かつ代謝能力が極めて低いです。そのためメチルキサンチン誘導体をたくさん摂取すればするほど、チョコレート中毒の症状も重篤なものになるということです。

 

チョコレートは、カカオ豆をローストしてすりつぶしたカカオマスに、カカオ豆の脂肪分であるカカオバターや砂糖、ミルクなどを加えて作られます。チョコレートの分類は国によってさまざまで、カカオの代わりに乳製品を使用する場合もあるため一概にはいえませんが、日本の場合、ミルクチョコレート、セミスイートチョコレートチップ(製菓用)、ブラックチョコレート、ハイカカオチョコレート、製菓用無糖チョコレートの順でテオブロミンの量が多くなります。なおホワイトチョコレートにはカカオマスを使わないため、テオブロミンは含まれていません。

 

大雑把に言うと、色が濃くて苦味の強いチョコレートほど、テオブロミン含有量が多くなると考えてください。個体差もありますが、軽度の中毒症状を起こす目安は下記になります。

 

<体重3kgの小型犬>

 製菓用無糖チョコレート:約0.1枚(4.6g)

 ブラックチョコレート :約0.2枚(12g)

 ミルクチョコレート  :約0.6枚(30g)

<体重10kgの中型犬>

 製菓用無糖チョコレート:約0.3枚(15g)

 ブラックチョコレート :約0.8枚(40g)

 ミルクチョコレート  :約2枚(100g)

<体重30kgの大型犬>

 製菓用無糖チョコレート:約0.9枚(46g)

 ブラックチョコレート :約2.4枚(120g)

 ミルクチョコレート  :約6枚(300g)

 

愛犬や愛猫がチョコレートを食べてしまった、または食べてしまったかもしれない場合、すぐに愛犬や愛猫を動物病院に連れて来ていただきたいのですが、その際に「どんな種類のチョコレートをどのくらい食べたのか」が分かると助かります。チョコレートにナッツやレーズンなど、他の中毒を引き出す食材も含まれていることがありますので、パッケージや現物をご持参いただけると役立ちます。

 

クッキーやケーキ、アイスクリーム、カレーなど、いわゆるチョコレート菓子だけではなく、他の食品やお料理にもチョコレートが使われている場合がありますし、テオブロミンやカフェインは、ココアパウダーやコーヒーなどのチョコレート以外の食べ物にも含まれていますので、注意が必要です。

 

症状と治療

点滴を受ける犬

 

チョコレート中毒の症状は、食べてしまった犬や猫の体格と、体内に取り込んだテオブロミンなどのメチルキサンチン誘導体の量によって異なります。致死量は体重1kgにつきテオブロミン200〜400mgだとされていますが、個体差も大きいですし、食べたチョコレートを嘔吐したために重症化に至らなかったという場合もありますので、一概にはいえません。

 

チョコレート中毒の主な症状としては、落ち着きがなくなる、激しい興奮、頻脈、多飲多尿、嘔吐、下痢、震え、硬直、発熱、不整脈、呼吸困難、けいれん発作などが挙げられます。食べてから発症するまでには1〜4時間程度かかるのが一般的ですが、半日ほど経ってから現れる場合もあります。

 

ワンちゃんや猫ちゃんがチョコレートを食べてしまった、もしくは食べてしまったかもしれないと気付いた場合、たとえ上記のような症状が見られなくても動物病院に連れて来てください。病院で催吐処置をすることで、食べてしまったチョコレートを出すことができるからです。場合によっては、胃洗浄を行うこともあります。

 

既に中毒症状が現れている場合は、既にメチルキサンチン誘導体が体内に吸収されてしまっているということです。その場合、メチルキサンチン誘導体を無害化する薬がないため、代謝排泄を促進させるための点滴を行います。場合によっては現れている症状に応じた対処療法も行います。

 

予防法は食べさせないこと

バレンタインチョコ

 

食中毒の予防法は、中毒を起こす食べ物を食べさせないことです。チョコレートに限らず、人間の食べ物はワンちゃんや猫ちゃんの手が届く範囲に置きっぱなしにしないことが大原則です。

 

猫は高い場所や狭い場所にも難なく入り込めますし、犬は思っている以上に力があるものです。何より、犬も猫も頭が良いです。食べ物をしまっている場所を確実に覚えていたり、嗅ぎつけたりします。「ここは開けられないだろう」と思える場所も、難なく開けられてしまうことがよくあります。

 

チョコレートそのものを積極的に食べたがることはないかもしれませんが、彼らの興味を刺激するようなニオイのする食材と一緒に保管しておくと、間違えて口にしてしまうこともあり得るでしょう。かばんの中にうっかり入れっぱなしにしていて、ニオイで気付かれてしまうこともあるでしょう。保管場所や保管方法には、充分な注意が必要です。

 

2月はワンちゃんや猫ちゃんのチョコレート中毒が増える時期です。バレンタインデーでもらったチョコレートの出しっぱなしはもちろんですが、バレンタイン用にご家庭で手作りのチョコレートを作る場合も、注意が必要です。製菓用の無糖チョコレートは特にテオブロミンの含有量が多く、ほんの少し口にしただけでも重症化してしまう可能性があります。

 

目にしたものは何でも口に入れてみないと気がすまないようなタイプのワンちゃんは、特に注意が必要です。結果として大切なパートナーたちの健康が保たれるのであれば、注意しすぎるということはないでしょう。

 

ポイント

仲の良い犬と猫

 

ポイント

・犬や猫は、チョコレートを食べると中毒症状を起こします。

・チョコレート中毒の原因は、カカオに含まれているテオブロミン、カフェイン、テオフィリンで、メチルキサンチン誘導体といわれる化学物質です。

・色が濃くて苦味の強いチョコレートほど、メチルキサンチン誘導体の含有量が多いです。

・チョコレートを口にしてから中毒症状を発症するまで、一般的には1〜4時間かかります。

・食べた直後であれば、動物病院での催吐処置でチョコレートを出すことができます。

・中毒症状に対する有効な薬はありません。

・予防法は、チョコレートを食べさせないことです。

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