梅雨の時期の犬・猫の体調管理
梅雨時の体調管理の重要性
こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。
いよいよ関東地方も梅雨に入りました。気温の高い日が増え、雨の日が続いて体調を崩しやすい季節です。それは人間だけではなく、一緒に暮らすワンちゃんや猫ちゃんも同じです。
犬の祖先はオオカミ、猫の祖先はリビアヤマネコですが、さらにさかのぼっていくと、共にミアキスという動物に行き着きます。犬と猫の祖先は同じなのです。しかし、そこからそれぞれ異なる進化を辿り、また異なるルートで世界各地に拡散していきました。そのためか、犬は人間よりも暑さに弱く、猫は暑さに強いと言われています。
しかし、実は猫も日本の夏は苦手なのです。それは、日本の夏は高温多湿だから。猫はセルフグルーミングで体中を舐め、唾液の気化熱で体温を下げます。リビアヤマネコが暮らしていたような中東の砂漠地帯であれば、唾液もすぐに蒸発したでしょう。しかし日本の高い湿度では、思うように体温を下げられないのです。
また、高温多湿は細菌や真菌(カビ)などの活動を活発化させます。そのため犬も猫も、梅雨時にはそれぞれに暑さ対策も含めた体調管理が大切になってくるのです。それでは、梅雨時に注意すべきポイントについて見ていきましょう。
犬猫に共通する注意点
まずは、ワンちゃんにも猫ちゃんにも共通して注意していただきたいことをお話します。
<温湿度管理>
犬も猫も、人間のように全身の皮膚から汗を流し、その気化熱で体温を下げることはできません。基本的に汗をかけるのは肉球のみです。代わりに、犬は口呼吸(パンティング)による口内の水分蒸発時の気化熱を、猫はセルフグルーミングで体についた唾液の気化熱を利用して、体温を下げます。
そこで、ご自宅のワンちゃんや猫ちゃんの体温調節を助けるために飼い主様ができることは、適切な温度と湿度を維持してあげることです。下記の数値を目安に、室内の温度と湿度を調節してください。
湿度:60%以下
温度:犬=20℃、猫=27〜28℃
<食中毒>
気温20℃以上、湿度も70%以上になる日が増えてくる梅雨時は、食べ物が腐りやすくなります。そこで、注意していただきたいのが、食中毒です。
ドライフードと比べると、ウェットフードや手作りごはんは特に傷みやすいので、保存方法には十分な注意が必要です。
また猫ちゃんの場合は、置き餌をしている飼い主様も多いと思います。置き場所の環境には注意が必要です。特にウェットフードの場合は、30分〜1時間を目安とし、その時点で残っているご飯は下げてしまうようにしましょう。
食器も毎回きれいに洗い、お水も1日に2回以上はボウルを洗って新鮮なお水に交換するようにしてください。食欲がなくなる、下痢や嘔吐をするといった症状が見られた場合は、動物病院に連れて来てください。
<皮膚疾患>
梅雨時は、ワンちゃんも猫ちゃんも皮膚の病気にかかる子が多くなります。特に注意していただきたいのが、ノミやダニの寄生です。ノミは温度20℃以上・湿度60%以上で、ダニは温度25度程度・湿度70%程度で活発になります。
ノミやダニに噛まれると、アレルギーや感染症を引き起こしてワンちゃんも猫ちゃんも痒くてつらい思いをしますので、家の中でノミヤダニを繁殖させないように気を付けましょう。
また動物病院で処方された駆除薬を使用し、併せてこまめなブラッシングを行いましょう。ワンちゃんには、定期的なシャンプーも必要です。
<外耳炎>
皮膚疾患と同様に、外耳炎にも注意が必要です。特に垂れ耳の犬種は耳の中が蒸れやすいため、注意しましょう。
外耳炎の原因は複数ありますが、梅雨時に多いのはマラセチアや黄色ブドウ球菌、ミミヒゼンダニなどによる感染です。耳垢の量が多い、耳垢の色が黒くて固まっている、非常に臭い、耳介が赤い、頭をしきりに振るといったような症状が見られたら、動物病院に連れて来てください。
犬のための注意点
次に、特にワンちゃんに注意していただきたい点についてお話します。
<問題行動>
ワンちゃんは、ストレスから問題行動をするようになることがあります。
梅雨時は雨の日が続くことが多くなり、思うようにお散歩に行けなくなったストレスが溜まり、問題行動へと発展していくケースが多いのです。
無駄吠えをするようになった、これまでできていたことができなくなったなど、思い当たる節のある飼い主様は、次にご紹介する散歩の工夫点を参考にしてみてください。
<散歩の工夫>
雨の日は、ワンちゃんがお散歩を嫌がるかもしれません。その場合は、無理矢理外に連れ出さなくても良いです。その代わり、室内でできることを考え、運動不足にならないようにしてあげましょう。
超小型犬であれば、室内でも十分に運動できるかもしれませんが、そういうスペースがない、またはワンちゃんの体が大きくて室内では十分な運動にならないという場合は、頭と体の双方を使うような遊びをしてみましょう。知育玩具を使ったり、ノーズワークをしたり、何か芸を教えたりといったことをしてみてください。
また、雨の日でもお散歩に出たがる子であれば、レインコートを着せる、お散歩の時間を少し短めで切り上げ、雨で冷えた体を温めてあげる等のケアをしてあげましょう。なるべく濡れないようなお散歩コースに変更したり、室内ドッグランを利用したりするのも良いでしょう。
猫のための注意点
続いては、特に猫ちゃんに注意していただきたい点についてです。
<毛球症>
夏を迎える前の梅雨時は、猫ちゃんの毛が夏毛に生え替わる換毛期です。猫ちゃんは自分でグルーミングをすることで、大量の抜け毛を飲み込んでしまいます。それが胃の中に溜まって大きな毛玉を作ってしまうと、毛球症といってさまざまな消化器症状を引き起こします。
飲み込んだ毛玉を吐き出そうと何度も吐いたり、猫ちゃんによっては吐こうとしてもなかなか吐き出せなかったりする場合もあります。
胃の中の毛玉はやがて腸に移動します。そのまま便と一緒に排出されてしまえばよいのですが、腸管を詰まらせて腸閉塞を起こす場合もあります。腸閉塞は、命に関わることもありますので、馬鹿にはできません。
換毛期はいつも以上にこまめにブラッシングをし、掃除機をかけて、体についた抜け毛や飛散した抜け毛を片付けましょう。猫ちゃんが抜け毛をできるだけ飲み込まずに済むようにしてあげることがポイントです。
<トイレ>
梅雨時は寒暖差が激しいため、トイレに行く回数が増えるかもしれません。しかし猫はきれい好きなため、汚れたトイレを使いたがらずに我慢してしまうことがあります。排泄を我慢することで泌尿器系の病気にかかりやすくなりますので、トイレはこまめに掃除をし、清潔な状態を維持できるようにしましょう。猫砂やペットシーツの交換だけではなく、トイレの本体も定期的に洗いましょう。
大切なのは除湿
梅雨時は、特に湿度管理が大切です。除湿機などを上手に活用して、常に湿度が60%以下になるように注意してください。
湿度が下がることで、ノミやダニ、細菌、カビなどの繁殖を防げます。また湿度を下げることで、ワンちゃんや猫ちゃんが体温調節の際に行うパンティングやセルフグルーミングによる水分蒸発を助けられるため、多少室温が高くても快適に過ごせるようになります。
ポイント
ポイント
・高温多湿は犬にも猫にもつらい環境です
・湿度60%以下、犬は室温20℃、猫は室温27〜28℃が目安です
・食中毒に気を付けましょう
・犬も猫も、梅雨時には皮膚の疾患や外耳炎にかかりやすいです
・雨が続く場合は、散歩の工夫でワンちゃんにストレスを溜めさせないようにしましょう
・換毛期はこまめなブラッシングと掃除で猫ちゃんの毛球症を防ぎましょう
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