犬と猫にはどのような違いがあるの?

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違いも多い犬と猫

挨拶する犬と猫

 

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

皆さんは、犬に対してどのようなイメージをお持ちでしょうか。飼い主様の指示に従い、とても賢い動物。訓練次第では盲導犬、警察犬、麻薬捜査犬など、人のためにさまざまなシーンで役に立ってくれる動物だというイメージがあるかもしれません。

 

一方、猫に対してはどうでしょうか。自由奔放でツンデレな性格が魅力的だという方も多いのではないでしょうか。また、あくまでも飼い主様と対等な関係で、適度な距離感を保った付き合い方が心地よいと感じている飼い主様もおられるかもしれません。

 

私達人間とは古くから一緒に暮らし始めた犬と猫には、似ている面がたくさんあります。しかし体のつくりや習性などには、随分と違う点も多いのです。彼らが余計なストレスを感じることなく人間社会の中で暮らしていけるようにするためには、私達人間が彼らのことをよく理解し、彼らの立場で考えて工夫を重ねていくことが大切です。

 

今回は、飼い主様がワンちゃんや猫ちゃんのことを理解するための手助けとなるように意識しながら、一般的な犬と猫の違いがどこからきているのかについてお話します。

 

違いの源泉は進化の過程

系統樹

 

犬と猫は、約6,200〜3,300万年前頃に北米やヨーロッパにいた小型の肉食動物、ミアキスを共通の祖先としています。ミアキスは、犬よりも猫に近い姿をしていて、森で暮らしていました。

 

そのまま森林での暮らしを続けたものは猫へ、生活の場を平原へと移したものは犬へと進化したのです。そして、森林と平原という生活環境の影響で、犬と猫にはさまざまな違いが生まれました。

 

森林は木の上も含めて容易に身を隠すことができるため、猫は単独で身を隠し、近寄ってきた獲物の小動物に瞬時に飛びかかる、単独行動の待ち伏せ型ハンターへと能力を高めました。身を隠すことのできない平原で暮らす犬は集団を作り、持久力勝負でやや大きめの獲物を追い詰めていく、追跡型ハンターとしての能力を高めました。

 

この単独か集団かという生活スタイルと、待ち伏型か追跡型かといった狩猟スタイルの違いが、猫と犬の大きな違いの源泉になっているのです。

 

体のつくりに見られる違い

野鳥を狙う猫

 

<前足>

平原を長時間走り回る犬達は、とにかく走ることに特化した体のつくりになったため、鎖骨が退化しました。鎖骨がなくなったことで前足を前方に伸ばしやすくなり、その結果、より速く走れるようになったのです。

 

一方、生活空間が地面に限定されず、木に登る必要のある猫には鎖骨があります。鎖骨があることで、前足を左右にも動かせるようになり、木の幹や獲物となる小動物の体を抱え込むような器用な動作ができます。

 

<爪>

待ち伏せ型の猫は、自分の存在を獲物に知られるわけにはいきません。そのため、普段は爪を足の中に隠して足音を立てずに歩けるようになりました。

 

犬の爪は常に外に出た状態のため、爪がスパイクの役割を果たして速く走ることに貢献しています。動物の中で最も早く走れるといわれているチーターも、爪の構造は他のネコ科動物とは異なり、爪を足の中に隠せないようになっています。

 

<筋肉>

犬は獲物が弱るまで追い詰めるために、長時間走れる持久力のある筋肉を発達させました。それに対して、猫は持久力こそありませんが、瞬時に獲物に飛びかかったり高い場所にジャンプしたりするための瞬発力に長けた筋肉を発達させました。

 

そのため、ワンちゃんには毎日のお散歩が欠かせません。犬種によっては、ドッグランなどで自由に走り回らせるといった、相当量の運動が必要な子もいます。一方、持久力のない猫ちゃんには毎日のお散歩は必要ありません。その代わり、狭くても良いので上下運動できる立体的な空間を使って、毎日短時間で良いので狩りごっこをして遊んであげましょう。

 

<武器>

犬の武器は犬歯です。追い詰めて弱らせた獲物の首に鋭い犬歯でとどめを刺すのです。

 

猫も最終的には犬歯で首にとどめを刺します。しかし猫の獲物は元気で逃げる力が残っているため、その前に鋭い爪で相手を傷つけ、体を抱え込んでからとどめを刺します。そのため、猫は犬歯と鋭い爪という2つの武器を持っているといえるでしょう。

 

猫の爪は複数の層になっていて、常に下の層には新しい鋭い爪が作られています。猫は爪とぎをして外側にある古くなった爪を剥がすことで、新しい鋭い爪を使えるようにしているのです。

 

習性に見られる違い

アジリティ

 

<協調性>

犬は集団で狩りをするため、コミュニケーションを取りながら共同作業をすることが欠かせませんでした。そのため、相手に認められることに喜びを感じます。自分の意志を出すよりも、他者との協調性を大切にする点では、私達人間と共通する部分が多いと言えそうです。

 

一方単独で生活する猫は、何でも自分で判断し、自分で身を守るしかありませんでした。自分の経験に基づいた瞬時の判断が大切で、他者の指示に従う必要がありませんでした。そのため、飼い主様の指示に従おうという気もありません。

 

<セルフグルーミング>

待ち伏せ型の狩りをする猫は、待ち伏せしていることを感づかれないように常にセルフグルーミングをして体を清潔な状態に保ち、自分の体臭を消す習慣が身につきました。

 

集団の中で個体識別情報として体臭を活用している犬には、体臭を消す必要がありません。そのため、猫ほどセルフグルーミングをすることがありません。そのため、ワンちゃんには定期的なシャンプーが必要になります。

 

<トイレトレーニング>

猫ちゃんのトイレトレーニングは、ワンちゃんと比べると簡単にできるといわれています。猫は敵や獲物に自分の存在を知られないために、縄張り内の決めた場所をトイレとし、排泄物に砂をかけてニオイを消す習性があります。猫のトイレはその習性を利用しているからだといわれています。

 

<食べ方>

犬は集団で狩りをするため比較的大きな獲物を得ていましたが、常に成功するわけではないため「食べられる時に食べるぞ!」という食べ方をします。そのため、一度にたくさんの食事を与えると、全て食べてしまい肥満を招きます。

 

猫は獲物が小さいため、一度の食事量が少ないのが普通でした。そのため一度にたくさんの食事を与えても、自分で食べる量を調節しながら食べる傾向があります。ただし新鮮な食事を好み、古いものは口にしないことが多いです。

 

 

犬と猫の代表的な特徴を比較してきましたが、もちろん犬にも猫にも個体差があります。そのため、飼い主様は犬や猫の特性や習性を理解した上で、そこにワンちゃんや猫ちゃんの性格などを考慮して、ストレスフリーで安心できる生活環境を整えてあげてください。

 

ポイント

犬と猫

 

ポイント

・犬の特性は、持久力を活かした平原での集団追跡型狩猟スタイルに由来しています。

・猫の特性は、瞬発力を活かした森林での単独待ち伏せ型狩猟スタイルに由来しています。

・犬は走ることに特化した足を、猫は器用な前足を持っています。

・犬には爪とぎは必要ありませんが、猫には爪とぎが必要です。

・犬には毎日の散歩が、猫には短時間の狩りごっこ遊びが必要です。

・犬には平面のスペースが、猫には狭くても良いので立体的なスペースが必要です。

・猫はセルフグルーミングを行うためシャンプーは不要ですが、犬には必要です。

・犬は共同作業を行い、相手から認められることに喜びを感じます。

・猫は何でも自分で判断し、他者の指示を聞く気がありません。

・犬は食べ物があればあるだけ食べますが、猫は自分で食べる量を調節します。

・犬も猫も種の特性や習性を理解した上で、個々の性格を考慮する必要があります。

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