犬猫を動物病院に連れて行く?様子を見る?

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受診するか否かの判断

猫を抱きながら飼い主様の話を聞く獣医師

こんにちは、横須賀市にある「つだ動物病院」院長の津田航です。

 

WEBサイト上でペット保険比較や健康チェックなどのサービスを行っている会社が、インターネット上で1,140名に実施したペットに関する意識調査の中で、「動物病院に行くかどうか迷った経験がある」と回答された方が67%もいらっしゃいました。

 

迷った理由としては、「時間が経てば治るかもしれない」が540票、「気のせいかもしれない」が230票と、「いずれ症状が消える、または緩和されるかもしれない」という希望的な気持ちが圧倒的に多いという結果でした。そのため、「もうしばらく様子を見てみよう」という行動を選んでしまわれる飼い主様も多いようです。

 

しかし動物病院で治療にあたっている身としては、最も困るのが「様子がおかしいことには気付いていたが、様子を見ていた」と丸1日、またはそれ以上経過してから来院されるケースです。しかも、そういう場合に限って夜間の緊急でということが多いような気がしています。

 

たしかにワンちゃんも猫ちゃんも、「なんだか熱っぽいの…」などと話してくれることはありませんし、どちらかというと具合が悪いことを隠そうとします。飼い主様としては、様子を見ることにすると手遅れになるかもしれないと心配でしょうし、動物病院に連れて行くべきかどうかの判断基準が欲しいと思われているというのが本音かもしれません。

 

ストレスより受診を

診察を受ける猫

しかし実際には、「こういう症状が見られたらすぐに病院に行くべし」とか「こういう場合は様子を見て大丈夫」という絶対的な基準は存在しません。なぜなら、健康状態や行動、仕草などには個体差が大きく現れるためです。私達人間にとっても、病院に行くべきかどうかを判断する基準というのは、明確に定義されているわけではありませんよね。

 

ただ、ワンちゃんや猫ちゃんと一緒に暮らしている期間が長ければ長くなる程、飼い主様が彼らの異変を察知する能力は増してきます。飼い主様が「おかしい」と感じる直感は、大抵正しいのです。ですから、おかしいと思ったら迷わずに動物病院に連れて行くという判断をしていただきたいと思います。

 

一緒に暮らし始めた頃は、「気のせいかもしれない」「気にし過ぎかもしれない」「病気ではなく、余計なストレスを与えるだけかもしれない」などと考えてしまうかもしれません。しかし、気にし過ぎたことが原因で命に関わることはあまりありませんが、病気を見落として進行させてしまい、重篤化してから来院したために治療が間に合わず、命を落としてしまうことは十分に有り得るのです。

 

ストレスに関しては、後からフォローすることで対処できます。しかし病気に関しては、治療することでしか対処できません。ストレスを気にするよりも、飼い主様の「おかしい」という違和感を信じて受診することを優先していただきたいと思います。

 

迷いやすい症状の判断目安

診察を受ける犬

そうはいっても、ワンちゃんや猫ちゃんに違和感を感じた場合に動物病院へ連れて行くべきか否かについての、ある程度の判断目安は欲しいところでしょう。ここでは、飼い主様が最も迷われやすい症状に関する判断の目安をお話します。違和感を察知する感度を高めるためには、普段からワンちゃんや猫ちゃんの様子をよく観察しておくことがとても重要になります。

 

<嘔吐>

特に猫の場合、よく吐く動物だと思われているため、吐いていてもあまり気にされない飼い主様もいらっしゃいます。たしかに、ネコ科動物は獲物を丸呑みにするため、消化できない獲物の皮やグルーミングで飲み込んだ毛玉をよく吐き出します。ただし、嘔吐の頻度が高い場合は病気の可能性が高いと判断してください。

具体的には、「1日に何回も吐く」「何日も続けて吐く」「水を飲んでも吐く」などです。また、吐いた後にケロッと元気になり、食欲がある場合はあまり心配する必要がないでしょう。逆に吐いた後にぐったりして元気がない場合は、病気の可能性が高いと判断してください。

 

<食欲低下>

食べ方や好みなどは、それぞれに個性があるため病気なのかどうかを判断するのは難しいです。食欲に関しては、体重で判断することをおすすめします。

ワンちゃんも猫ちゃんも、最低でも月に1回は自宅で体重を量ってください。飼い主様が抱いて一緒に体重計に乗り、後からご自身の体重を引けば良いのです。

いつもの体重より10%以上減っている場合はすぐに病院へ、5%以上減少でも病気の可能性が高いためできるだけ早く病院へ行く判断をしましょう。

 

<下痢>

食べ過ぎによる一過性の下痢もあるため、基本的に食欲があって元気もある場合は、緊急度が低いと判断しても大丈夫でしょう。

ただし、3日以上続く下痢や、子犬・子猫・老犬・老猫の水溶性便の場合は、病気の可能性が高いと判断してすぐに動物病院に連れて行くようにしてください。

 

<排泄>

いつもより長くトイレで苦労している場合は、膀胱炎や便秘の可能性が高いと判断できます。何度もトイレに行って排尿のポーズを繰り返している場合は、尿路結石等で排尿できていない可能性が高く、命に危険を及ぼす可能性も高いので、すぐに動物病院に連れて行きましょう。

また、尿の状態(色、ニオイ、量など)がいつもと違う場合も、病院へ行く判断を下してください。

さらにワンちゃんも猫ちゃんも、高齢になると便秘になりやすいです。ご飯を食べているにも関わらず、3日以上排便がなければ、病院へ連れて行く判断が必要でしょう。

 

その他の症状

耳を診察される犬

他にも、下記のような症状については病気の可能性が高いと判断し、動物病院に連れて来てください。

 

<皮膚症状の判断目安>

・色:赤い、黒ずみがある

・状態:ベトベトしている、カサカサしている、フケが多い、ぶつぶつがある

・被毛の状態:脱毛している、艶が悪い

・行動:しきりになめている、しきりに掻いている など

 

<歩き方>

・特定の脚だけを引きずっている

・特定の脚だけを地面につけない

・足の運び方がいつもと異なる

・脚の上げ方がいつもと異なる など

※スマホ等で歩いている様子を録画してから病院へ来ていただくと助かります。病院では緊張してしまって歩いてくれなかったり、院内では正常に歩いたりしてしまうことも多いからです。

 

<眼>

・充血している

・開かない(開いてもしょぼしょぼしてしっかり開けない)

・目ヤニが多い など

 

<耳>

・臭い

・耳垢が多い、黒い

・耳の付け根や後ろ側をしきりに掻く

・しきりに頭を振る など

 

<呼吸>

・呼吸をする時にゼェゼェなどのおかしな音を出す

・くしゃみ

・咳

・苦しそうな息遣い など

 

ポイント

動物家族

ポイント

・飼い主様が感じる愛犬・愛猫への「違和感」は正しいことが多いです。

・飼い主様の違和感を信じて、できるだけ早く動物病院に連れて行くようにしてください。

・動物病院で受けたストレスは、後からフォローすることで対処できます。

・病気が進行してしまうと、治療が間に合わなくなるケースもあります。

・頻度の高い嘔吐、数日間続く下痢、5%以上の体重減少、排泄の変化は受診の目安です。

・皮膚、歩き方、眼、耳、呼吸の状態もよく観察し、変化を察知しましょう。

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